2022年7月22日

鉄鋼業界で働く/女性営業職編/インタビュー(上)/女性活躍への疑問が転換点

世界に関わる仕事に憧れ、事務と営業の双方でキャリアを積む女性がいる。岩谷産業のマテリアル本部金属部大阪ステンレス課で働く吉田幸代さんだ。一般職で事務として勤務したのち、総合職に転換。2021年春に営業の一歩を踏み出した。就職活動や入社した経緯、これまでの業務内容などについて聞いた。

――入社までの経緯を。

「もともと海外に興味があり、高校時代は国際文化科で学んでいました。大学では文学部英文学科に所属し、Women Studies(女性学)を専攻。世界中の女性の性的格差や就業、就学などについて調査・研究していました。米国でインターンシップも経験し、英語を使って世界に関わる仕事がしたいと思うようになり、商社を志望しました。当時は、映画『プラダを着た悪魔』のような働く女性への憧れも強かったです」

――一般職で内定を。

「総合職に絞って就職活動を進めていたのですが、なかなか良い結果が出なくて。熟考するうち、10年後などに海外赴任となった際、結婚や子育て、介護などのライフイベントと重なったらどうしようと悩むようにもなりました。ただ、世界と関わる仕事に進みたいという気持ちは変わりませんでしたね。両親がともに商社で働いていたのですが、母親が一般職だったのを思い出し、働いていた頃の話を聞いてみました。もしかしたら自分に合っているかも、と思い一般職で新たに商社を受けていたら、順調に面接が進むように。内定をいただいた中から、岩谷産業に入社を決めました。選考時などに社員の方とすれ違った際、『頑張ってね』とお声がけいただいたりして、皆さんの人柄が印象的でした」

――他にも決め手が。

「岩谷産業といえば、金属よりかは水素やカセットコンロのイメージが強いと思います。95年の阪神大震災で被災しており、自宅の倒壊は免れたものの、ガスや水道が止まって大変な状態でした。岩谷産業の選考が進む中で会社について調べていた時、見覚えのあるカセットコンロを発見。『あの時お世話になった。これに助けてもらった』と偶然思い出したんです。それも、もしかしたら入りたい気持ちが強くなった理由の一つかも知れませんね」

――入社後は。

「一般職の事務コースとして、マテリアル本部金属部特殊鋼課(現・大阪ステンレス課)に配属されました。デリバリーや売買計上、貿易業務のアシスタント、お客さまの電話対応などさまざまな業務を経験しました。海外取引などのイメージが強い中で入社したので、電話で『まいど!』とあいさつされるお客さまがいらしてびっくりしたのを覚えています。3―4年経つと、数字ばかり並んだ品番を計上書類で見て、これは一体何だろうと興味を持つようになりました。何の商品なのか積極的に質問するようになりましたね」

――営業に移ったきっかけは。

「事務自体は性に合っていましたが、商品がどんなものなのか、誰が使うのか、どんどん興味がわいてきたんです。当時から労働組合の執行部にも所属し、社内の制度改革に取り組んでいました。ダイバーシティや女性活躍推進が叫ばれる世の中となり、私もいろいろと発案し、会社と協議をしていました。が、ふと『女性活躍ってそもそも何?』と思い、女性が輝く会社に本当になれるのかと疑問を持つようになったんです。岩谷産業では、女性活躍推進に関する優良企業の認定制度『えるぼし』(2つ星)などを取得しているのですが、本当に女性も働きやすいのか?と。『何事もやってみないと分からない。自分が実験台になればいいのでは』と思い、総合職へ転換。9年間担当していた事務から営業へと新たなスタートを切りました」

――新たなキャリアを歩み始めた。

「21年4月から営業として働いています。女性総合職は全国で80人いますが、同期社員では私を含めて2人。金属部では大阪が私のみ、東京が1人の計2人です。事務時代はお客さまと接するのは電話ばかりで、まれにごあいさつする程度でした。なので、お客さまのもとへご訪問しても何を話したらいいか分からない、行ってはみたものの…といった状態でした。営業となると現場にも足を運ぶようになります。実際に私たちが仕入れたものを使って現場で製造するのは、その道一筋の職人さんたち。その存在に改めて気付きました。職人さんのものづくりへの思いをきっちりくみ取らなければ、と思うようにもなりましたね」

――大変なことは。

「電話以外でお客さまと関わることがなかったので、現場については知識が全くない状態でした。例えば納期変更をお願いする際、電話ならパッと連絡したら楽に済ませられます。でも現場では、板の位置を移動させたり加工の順序を変えたり、大変な作業が生じます。このことを現場に行って知り、もっと早く気付くべきだと反省しました。電話対応でお客さまと接する事務の仲間にもこのことを知ってもらいたく、彼女たちを連れて行って見てもらう機会を作りました」

(芦田 彩)

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