2022年8月24日

鉄鋼業界で働く/女性営業職編/インタビュー/女性活躍の場広がれば

あえて女性の少ない社会で仕事に挑戦しようと、鉄鋼業界に飛び込んだ女性がいる。JFE商事大阪支社の自動車鋼材本部西部自動車鋼材部大阪自動車鋼材室で主任を務める前田二葉さんだ。バリバリ働くキャリアウーマンに憧れ商社を志望。同社として、東京以外でキャリアを歩みだした女性営業職第1号という経歴を持つ。後輩社員から「何でも話しやすい」と慕われる一面もある前田さんに、入社の経緯やこれまでの業務内容、今後の思いなどについて聞いた。

――入社の経緯を。

「もともと商社で働くことに憧れていました。商品を自社で作らず、自分自身の力でモノを売るという点がいいなと思っていたんです。誰から買うかが重視される、自分がどう提案するかで売買が決まるって魅力的だなと」

――鉄鋼業界を選んだきっかけは。

「さまざまな会社説明会に参加する中で鉄鋼業界を知りました。工場や現場などは女性が敬遠しがちな印象ですが、私は逆にかっこいいなと思いましたね。製造の様子も映像で見て、ダイナミックで引かれました。女性が少なくて働きにくい環境だろうと感じつつも、あえてその中に飛び込んでみたいと思いました。不安はなく、『自分が入ることで何か業界が変わるきっかけになれば』と考えていましたね」

――入社後は。

「名古屋支社の名古屋自動車鋼材部第一自動車鋼材室に配属されました。これまで営業の女性総合職は全て初任地が本社だったのですが、それを知った上で、初任地で東京以外に行きたいと面接で伝えていました。初めての試みをたくさん経験できるのでは、と期待していましたね。トヨタ自動車関連や部品メーカーを担当していました」

――大変だったことは。

「お客さまに信用していただけるまで時間がかかりました。当初は自分が女性だからだろうかと悩んでいましたが、今思えば、名古屋のお客さまは営業担当者の仕事ぶりをしっかり見ておられたんだと感じています。新入社員で仕事を理解できていない状態だったので、当然だったと。机上で学ぶだけではなく、コイルセンターの加工の仕組みなど、現場に通い、現物を見て学ぶ。1度聞いたことは2度聞かぬようしっかり覚える。そう心掛けるようになりました」

――良かったことを。

「お客さまの設備が動かなくなり、2週間毎日通ってサポートさせていただく機会がありました。該当する設備を使わなくても生産できるよういろんな会社と連携して解決し、自分の底力がついたように思います。また、新車の立ち上げに関わる機会もあり、私たちはもちろんお客さまにも夜遅くまで対応していただきました。その新車を街で見かけると思わずうれしくなりますね。これまでに仕事で関わった車種は数十種類にのぼります。見える部分でも見えない部分でも、関わった自動車が走っているのはうれしいですし、売れてほしいと思います」

――現在の業務は。

「自動車メーカーや部品メーカーの担当をしています。また、2年目の後輩社員の教育担当も行っています。自主的に仕事をしてもらって、何かあれば私がフォローアップするという形を取りながら、分担して仕事をしていますね。後輩の良い部分を伸ばすよう心掛けています。会社を良くするためには若い人材に育ってもらわないといけないので、戦力になるよう引っ張っていかなきゃ、と思っています」

――後輩が増えてくる世代となりました。

「総合職の女性営業職で、東京以外の初任地1号となった時は、自ら希望したとはいえプレッシャーがありました。もし私がだめだったら、下に女性が新たに入ってくることがないでしょうから……。現在は名古屋・大阪合わせて10人ほど、女性営業職がいます。認めてもらえたようでうれしいですね」

――女性が働くことについて。

「体力的に重量物を運ぶことなどは難しいので、助けてもらわないといけません。ただ、女性は絶対数が少ないため、1回で覚えてもらえるのでラッキーだと思います。名古屋では同業他社に女性がほぼいなかったので、『頑張っているね』『男の人ばかりで大変じゃない?』と温かいお声がけをお客さまからいただきました。珍しい名前だからか、下の名前で呼んでくださる方もいらっしゃるんですよ」

――業界に女性が増えてほしいか。

「女性はもちろん、多様な人材に入ってきていただければ、より魅力的な会社・業界づくりができるのではと思いますね。特に自動車はカーボンニュートラルや電動化など変革期にあります。新しいことを提案しないといけないので、活躍できる場がたくさんあると思いますね。私も新たな知識をどんどん吸収し、時代を先取りしないとです!」

――鉄鋼業界にどう変わってほしいか。

「JFE商事では女性の新入社員が毎年増えているので、さらに女性の活躍の場が広がる仕組みづくりが必要だと思います。成果をしっかり認めてもらい、女性が管理職としてもさらに活躍できる風土が業界全体で整うと良いですね」

――今後の目標を。

「お客さまに貢献できるよう、名古屋で培った経験から生かせるものを取り入れつつ、東京・大阪の良い部分を学び、ハイブリッドで風通しの良い部署にしていきたいです。少し早い話ではありますが、時代が大きく変わっているので、これまでの意見を尊重しながら若い社員の思いも大事にでき、今後の道を示していける管理職になれたらと思っています」

(芦田 彩)



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