2022年12月12日

商社のグローバル展開 海外戦略/阪和興業 中川洋一社長/東南ア、資源でも存在感/中国拡充、アフリカは将来性注目

――持続的成長の鍵を握る海外戦略について、最重点エリアと位置付ける東南アジアから。

「日本国内の需要がいずれ縮小するとの見通しを前提に10年以上前から『東南アジアに第二の阪和を』というキャッチフレーズを掲げて投資を続け、戦略的パートナーとの協業やアライアンスを強化している。ASEAN域内の現地法人はシンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイの5カ所。コイルセンターはタイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアの4拠点。シンガポールのコスモスチール、ベトナムのSMCトレーディングなど現地の大手鋼材流通などに出資。鉄鋼事業において、日本国内の『そこか(即納・小口・加工)』戦略などの成功モデルを移植し、域内の地産地消ビジネスを拡充している」

――インドネシアでは、製造業への直接出資が新たな展開を導いている。

「世界最大のステンレスメーカーとなった中国の青山実業グループがスラウェシ島で展開するニッケル銑鉄、ステンレス精練・圧延プロジェクトに参画し、原料調達から製品販売まで関与している。また中国の徳龍鋼鉄がスラウェシ島に新設した高炉一貫製鉄会社、徳信鋼鉄に出資し、合金鉄類の供給の他、製品の販売を進めている。徳信鋼鉄は2023年には高炉3基体制で、年産600万トン規模の普通鋼半製品・鋼材の生産を予定しており、スラブ・ビレット、条鋼類の国内外への販売を通じて当社は『鉄鋼メーカー』の顔を併せ持ったことで、東南アジア市場における存在感が高まる好循環を生み出している」

――商社としての重要な役割のひとつ、資源の確保を目指す『特徴ある資源投資』戦略においても東南アジアは重要な機能を担う。

「青山実業グループ、世界最大の車載用二次電池メーカーのCATL、同じ中国のリサイクル最大手GEMとの4社合弁のQMBニューエナジーマテリアルをスラウェシ島に設立し、二次電池原料となる高純度ニッケル・コバルト化合物の鉱石からの一貫生産を開始した。マレーシアで合金鉄工場を運営している豪州の上場企業で合金鉄サプライヤーのOMホールディングスに出資し、水力発電を活用したクリーンでコスト競争力があるフェロシリコン、マンガン系合金鉄を鉄鋼メーカーに安定供給している。銅やアルミなど非鉄スクラップの集荷、選別、加工ビジネスが軌道に乗り、木質ペレットやPKSなどバイオマスエネルギーの供給拠点にもなっている。食品事業においては水産物の加工拠点であるが、伸びる現地需要を新たなターゲットに位置付けている」

――中国では鉄鋼事業を幅広く展開している。

「現地法人は阪和(上海)、阪和(香港)など5社。上海、大連、天津、青島、福州、武漢、重慶、広州、中山、香港に展開。事業会社や出資先は18社ある。コイルセンターは東莞、蘇州など華南・華東の3拠点にあり、自動車関連需要が伸びる武漢では現地企業と合弁で取り組んでいる。宝武集団とのステンレス冷延合弁、寧波宝新不銹鋼は自動車向けの高付加価値品を供給しており、日鴻不銹鋼(上海)はコイルセンター機能を担っている。広州の鈴木住電鋼線製品に出資し、ステンレスワイヤを国内外に販売しており、特殊鋼分野では江蘇省の暁達金属製品製造にも出資している。鋼板流通加工最大手の大明集団と浙江大明阪和金属科技を設立し、鋼板加工、鈑金、製缶事業に参入し、大明集団への直接出資を経て大明の国内10拠点との取引も拡大。宝武集団、青山実業、徳龍鋼鉄、大明集団、さらにはCATL、GEMなど世界の最先端を走る中国企業との事業展開を広げてきている。東アジアでは台湾阪和興業が台北と高雄、韓国はソウルと釜山に営業拠点を構えている」

――欧州、中東、アフリカについて。

「欧州はロンドン、アムステルダム、ウィーンに加えて、ドイツ、フランスに次ぐユーロ圏第3の経済大国であるイタリアのミラノに現地法人を新設した。伝統的に欧州は木材や食品の仕入れ先であるが、日本の鉄鋼などの輸出が増えている。中東はイスタンブール、クウェート、ダンマン、ドバイ、アフリカは南アフリカのヨハネスブルグに駐在員を配置している。南アフリカでは、世界最大のフェロクロムメーカーであるサマンコールに出資し、日本などへの輸出機能を担っている。日本のJOGMECなどと共同出資するウォーターバーグ・プロジェクトは、白金・ニッケル・銅などの金属材料の生産を26年に開始する。アフリカは当面、資源調達がメーンとなるが、将来のビジネスフィールドとしても注目している」

――米州は。

「現地法人は阪和アメリカン、阪和カナダなど4社で、ニューヨーク、ロサンゼルス、バンクーバー、メキシコシティ、サンティアゴ、ボコダに営業拠点を構えている。阪和アメリカンは、ベトナム、タイ、台湾、韓国からの輸入が中心。コイルセンターは米国西海岸のサンディエゴ・ビスタ、メキシコ中部のハンワ・スチール・サービス・メヒカーナの2社。水産物加工・販売のシアトル・シュリンプ・シーフードは、阪和カナダ、阪和チリとも連携し、カニ、サケ、ロブスターなどの域内販売を拡大している」

――メキシコはリチウム産出国でもある。

「バカノラ・リチウムがソノラで進める資源プロジェクトに関与している。リチウムイオン電池向けの高純度炭酸リチウムを年間1万トン規模で生産する計画で、23年に稼働予定」

――海外の体制を。

「商社現地法人は22法人38カ所、支店が2カ所、事務所が2カ所の計42拠点で、ナショナルスタッフを含めた社員は約800人、うち駐在員は約100人。海外の事業会社は19社あり、ナショナルスタッフを含めた社員が約1,500人で、約40人が駐在している」

――22年4-9月期は連結売上高が前年同期比37%増の1兆3389億円、経常利益は73%増の529億円で、いずれも半期として過去最高となった。

「資源高を背景に鋼材や非鉄金属、原油などの商品価格が高水準で推移し、海外販売子会社も好調、戦略的投資先からの配当収入も増加した。セグメント別は、鉄鋼が1%減の179億円、プライマリーメタルが3・5倍の125億円、リサイクルメタルは68%増の54億円、エネルギー・生活資材が2・2倍の66億円、海外販売子会社も2・2倍の54億円で、食品は前年同期の16億円の黒字から2億円の赤字に後退した」

――鉄鋼は堅調に推移した。

「国内は建設分野を中心に取扱数量が堅調に推移し、鋼材価格の上昇もあって売上高は前年同期比36%増の6108億円となった。仕入れ価格が上昇したため利幅が縮小し、海外の持分利益の減少もあって、経常利益は微減となった」

――海外販売子会社の業績も好調だった。

「インドネシア、シンガポールを中心に徳信鋼鉄の鋼材の取り扱いが増加し、米国事業の採算改善も寄与した」

――鉄鋼のグローバル取扱量は。

「前年同期比6%増の747万トン。阪和単体は横ばいの502万トン。そのうち、国内が5%増の413万トン、国内子会社は横ばいの39万トン、海外子会社が23%増の205万トンだった」

――プライマリーメタル、エネルギー・生活資材は好調だった。

「ステンレス母材等の取り扱いが堅調で、ニッケル、シリコン系合金鉄価格が高止まりし、資源系投資先からの配当収入やサマンコールの持分利益拡大も寄与した。エネルギーは、ウクライナ危機によって、原油・石油製品価格が上昇し、バンカーオイルを中心に収益が拡大し、PKSや木質ペレットの価格が上昇して需要も旺盛だった」

――23年度にスタートする第10次中期経営計画について。

「2030年度に向けて連結経常利益を500億円に引き上げる目標を掲げていたが、21年度実績が627億円の過去最高益を記録し。収益面では長期ビジョンも超過達成した。次期中計は策定中だが、『特徴ある資源投資』の収益化が本格化するのはこれからであり、経営基盤の強化と経常利益1000億円を目標として持続的成長を実現する経営戦略を組み立てていきたい」

――配当政策を改めて。

「ロシアのウクライナ侵攻後のロンドン金属取引所のニッケル相場急騰の影響などで21年度末の負債が前年度末比1・3倍の1兆4700億円に増加し、うち有利子負債が7200億円に増えてネットDEレシオも2・4倍まで悪化した。22年9月末時点で負債は1兆600億円、有利子負債が6100億円に縮小し、ネットDEレシオも1・6倍まで改善したが、財務面の課題は残っている。長期保有株主を重視する経営方針に沿って、サマンコール関連で350億円の減損を計上した19年度は赤字決算だったものの年間100円の配当を実施した。20年度にスタートした今中計では、内部留保の蓄積による財務基盤強化を優先する方針を打ち出して、年間60円配当を基本水準に設定したが、21年度は100円配当を実施し、本年度も100円配当を継続する予定。利益が拡大しているため配当性向は見劣りするが、長期ビジョンの利益目標もクリアしていることから、新たな配当政策を打ち出したい」(谷藤  真澄)
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