2023年11月15日

鉄鋼業界で働く/ 女性エンジニア編/インタビュー/見て聞いて感じる素材

鉄鋼業界で女性の総合職採用が増えるとともに、各現場で活躍する人材も増加している。日本製鉄関西製鉄所の製鋼技術室鋳造・分塊技術課、主査の片山弥優(みゆう)さんもその1人。エンジニアとして操業・設備の管理や改善などに携わっている。就職活動や業務内容、ライフイベント、今後の目標などを聞いた。

――入社までを。

「大阪大学大学院の基礎工学研究科に在籍し、太陽光で進行する化学反応プロセスの開発研究をしていました。地球環境の保護に少しでも寄与できるのではと思って学んでいましたね」

――就職活動は。

「いろんな企業のOBの方が大学院に来てくださり話を聞く機会がありました。日本製鉄からは入社5年目の製鉄所勤務のOBがいらっしゃって。自信を持って会社のすごさと将来性について教えてくださり、『会社に対して熱い方だなぁ』と興味を持ちました。当時は業界に対し漠然と壮大なイメージしかなかったです」

――製鉄所見学に。

「就職活動中に瀬戸内製鉄所へ伺いました。構内に線路や信号が沢山あってびっくりしましたね(笑)。製造工程は熱い!というのが第一印象。同時に、作り込まれていく様を体感できるメーカーって意外と少ないんじゃないかと思いました。鉄は見えるし聞こえるし感じることができる。面白いと感じました」

――決め手を。

「人事室長の面接を受けた際、言葉にできない私の思いをうまくひも解き引き出してくださって。一学生に時間を割いてくれることに感動し、ここならしっかり教育してもらえそう、私の社会人生活40年を預けてもいいと思い入社を決めました」

――配属は。

「2017年に入社し、製鋼技術室に配属されました。関西製鉄所で技術系の同期は和歌山で28人、うち女性は3人でしたね。全国規模だと技術系は232人、女性は33人だったと思います。最初は下工程を希望していました。化学系出身で鉄を学んでいなかったため、上工程は興味があるけど無理かなと思っていて。そんな時、人事部門で配属を担当している室長が『上工程はどうなの? 希望してみては』と背中を押してくださったんです。挑戦できるものならしたいと思い希望。無事に配属されました」

――業務内容を。

「同室が担当する工場が4つあり、現在は後輩2人とともに2工場を受け持ち操業管理をしています。作りこみの仕方を決め、品質不良や操業トラブルがあった際に対策方案を提示して検証、コストが掛かっている製品についてコストダウン方法を考え試験を行う――といった感じです。より良い製品を作るための設備導入にも関わっていますね」

――やりがいは。

「自分のアイデアによって困っていた操業・品質課題が解決した時、達成感があります。以前、鋳片の端面に割れが発生したことがありました。対策として鋳片を引き抜くときに温度上昇が一定以下になるよう鋳片の冷却水量を調節し、割れが全く生じなくなりました。これについては昨年特許を取得しています」

――大変なことを。

「どんな業務もやりがいを持って取り組んでいますが、試験を行っている中で工場を止めるトラブルを起こしてしまったことがありました。浅はかだった、もう一歩先を考えれば良かった……悔しさや後悔でいっぱいになりました。また品質不良に関して、表面ではなく内部の場合、原因が分かるまでに時間を要します。半年、年単位で判明することもあり、仕事のリズムとして難しい部分があります」

――ギャップは。

「大企業で伝統ある企業なので、役所みたいな堅苦しい感じかな、風通しもあまり良くないのかなと不安に思っていました。でも入社してみるとそんなことなくて。年齢や年次を問わず議論を交わすことができ、伝えたいことが言える雰囲気で良かったです(笑)」

――女性が少ない。

「同室で女性は私が1人目です。入社後4年間は片道5分かかる工場の女子トイレを使用していました。幸い困ることはありませんでしたが、会議の休憩時間は行き来が難しい時も……。その後事務所に新設され解決しました。また入社にあたり、上司が女性社員の部下を持つための教育を受けていたそうです。配属後、最初は距離感の取り方に戸惑っていたみたいでした」

――製鉄所で働く魅力を。

「先ほどと共通する部分になりますが、作っているところを見る、聞く、感じるのがやりがいにつながっていますね。自分の工程に限らず他工場を見学する機会があり、前工程や後工程を知ることも醍醐味です。全体感を見られていいですね」

――業界にどう変わってほしいか。

「3K職場のイメージを払拭しないといけないですね。一部に残っている3Kな部分は、今働いている私たちが改善する必要があります。実力を上げていきたいですね」

――女性に増えてほしいか。

「この業界に向いている女性は必ずいると思います。女性が男性社会や3K職場といった印象で尻込みしないよう、業界全体で努力を続けていく必要があると思います」

――今後の目標を。

「将来的にマネジャーとしての力量が求められるようになると思います。マネジャーとは何かといったところから考え、能力を身に付けていきたいです」(芦田 彩)





鉄鋼業界で活躍する女性をはじめとした多様な人材、未来を担う人材を、随時紹介していきます。

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