2026年5月8日
日本製鋼所の素形材エンジ戦略/執行役員室蘭製作所担当 素形材エンジニアリング事業部長/上田 奏氏/M&E合併 シナジー追求/電力エネルギー分野 受注旺盛
日本製鋼所は、素形材・エンジニアリング事業を手がける日本製鋼所M&Eを4月1日付で吸収合併した。経営資源を最大限活用し、経営資源の機動的な配分や人材確保による素形材事業の持続的成長、防衛関連機器や次世代通信・パワー半導体に使用される窒化ガリウム(GaN)結晶などの事業への貢献拡大を図る。上田奏・執行役員室蘭製作所担当、素形材エンジニアリング事業部長に、抱負や取り組み、今後の展望を聞いた。
――新体制としての抱負から。
「世界的な電力需要増加と低炭素社会への貢献で、エネルギー分野の素形材製品は開発ニーズが高まっている。設備投資の意思決定迅速化をはじめ、人や設備、技術などあらゆる経営資源を機動的に配分するなど、一体化によるシナジーを追い求めていきたい。鍛鋼品は広島製作所のプラスチック製造・加工機械をはじめ、他の事業部やグループ向けの部品を製造しており、部門をまたいだ連携が進む。室蘭製作所の祖業である防衛分野については、引き続き、各拠点とともに取り組む」
――合併の経緯を。
「2020年4月に、日本製鋼所の素形材・エネルギー事業の分社化と同時に、風力発電機器の保守サービス部門、室蘭地区のグループ会社4社を統合して日本製鋼所M&Eが発足。『オール室蘭』として一体となって、事業や人員配置の見直しなどパフォーマンスを上げるような改革を進めてきた。取り組みが実を結び、分社化時の組織再編の目的だった、安定した黒字体制を実現した。黒字化は需要環境の好転も大きい」
――素形材事業は26年3月期の売上高見通しが445億円と、期初の予想を上回る増収の見通しとなった。
「売り上げの主体となっているのは、ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)など火力発電用ローターシャフトと、原子力発電所で用いる圧力容器、使用済み燃料棒輸送貯蔵容器部材といった電力・エネルギー分野だ。現中期経営計画(24―28年度)策定時の想定を上回る旺盛な受注で、鍛鋼品の売り上げ増に大きく貢献している。電力分野は25年4―9月期の時点で生産能力を現行の1・5倍とすることを決めたが、さらに上積みできるとみている。一方で自動車関連や、再生可能エネルギーは盛り上がりに欠ける。好調な今のうちに、幅広い分野へ対応できるよう競争力を高め、持続的な経営を目指す」
――防衛関連の売上高を28年度に会社全体で800億円とすることを目指している。拡大に向けた取り組みを。
「防衛関連機器を手がける特機事業部と連携しながら、増産体制を構築し火砲など従来製品の供給拡大に貢献していきたい。開発中のレールガンは、性能向上に貢献する素形材で、技術的にサポートするなどの関係にある」
――現中計の鍛鋼事業に関する設備投資の状況を。
「基幹生産設備などのリフレッシュ投資と能力増強を進めている。基幹設備は2008年から12年にかけて導入したものが多く、更新により生産効率の改善、省エネ対応など安定生産につながる。25年から鍛鋼品の製造能力強化に着手しており、26年から生産能力が改善に向かい、28年度までに生産能力を1・5倍とすることで収益力の向上を目指す。例えば新設したマニプレーターは、4月から稼働を開始。大型のプレス機2台に対し、マニプレーターが2台体制となった。大型品の需要を捕捉するため、大型旋盤の新設も計画通り進める。現状の台数では今後の受注量に追いつかないため、複数台の増強を予定する」
――28年3月期にはESR(エレクトロスラグ再溶解)二次溶解装置を更新する。
「電力向けで、二次溶解を必要とする受注が増えたことから、リプレースを決めた。当社は二次溶解設備として、150トンの大型ESR炉、5トンの小型ESR炉がある。受注に対応するために、小型炉を5トンから14トン炉に増強更新する。航空宇宙分野などで使用されるVAR(真空アーク再溶解)炉の導入は現時点で考えていない」
――室蘭製作所の稼働状況について。
「フル操業が続くがこれは旺盛な需要に加えて、製作所内で設備更新工事を並行して進めていることも背景にある。設備の据え付け工事や試運転で、周辺の設備が一時的に休止することもある。生産を最大化しながら、設備更新工事を遂行していく」
――採用の強化などを目的に、室蘭製作所で新社宅を建設する。
「需要増や人手不足に対し、若手の採用を進めたいこと、社宅が老朽化していたことを踏まえ建て替えることとした。福利厚生の改善や人材確保につなげたい」
――GaN結晶に関する取り組みは。
「GaNを製造する設備には、高温高圧に耐える材料が必要だ。エネルギー分野で培ってきた高温対応のタービンローターや圧力容器などのノウハウを組み合わせて設計、製造している」
――半導体・光学デバイス向け材料のフォトニクス事業室との連携は。
「フォトニクス事業は結晶製造用の反応容器を作るなどの、素形材事業部の製品や設計も関わっている。現在は結晶を試作してお客様にサンプルを出しているところだ」
――クラッド鋼板について。
「既存顧客への対応を続けているものの取り巻く環境は厳しく、用途拡大に向けて検討を重ねている。素形材事業は鍛鋼品だけでなく、クラッド鋼板も重要だ。事業全体の底上げにつながるような施策を検討していく」
――コストが上昇している。
「中東情勢など不透明な要素も多いが、今後の状況次第では値上げも検討したい。なお、当社は原材料だけでなく、上昇する労務費を含めた価格転嫁をお客さまにお願いしている」
――現中計の進捗と達成に向けての施策。
「好調な市場環境に支えられ、当初のプランをおおむね達成した。現中計策定時から生産、売上、利益面で上振れする見通しだ。中計のアップデートの際には、売り上げをエネルギーと防衛の二本柱を中心に、さらに高い目標を定める。軸足となっている電力関連のお客さまの要求に応えながら、将来の種まきも行うなど変化に強い事業部にしていきたい」(北村康平)
――新体制としての抱負から。
「世界的な電力需要増加と低炭素社会への貢献で、エネルギー分野の素形材製品は開発ニーズが高まっている。設備投資の意思決定迅速化をはじめ、人や設備、技術などあらゆる経営資源を機動的に配分するなど、一体化によるシナジーを追い求めていきたい。鍛鋼品は広島製作所のプラスチック製造・加工機械をはじめ、他の事業部やグループ向けの部品を製造しており、部門をまたいだ連携が進む。室蘭製作所の祖業である防衛分野については、引き続き、各拠点とともに取り組む」
――合併の経緯を。
「2020年4月に、日本製鋼所の素形材・エネルギー事業の分社化と同時に、風力発電機器の保守サービス部門、室蘭地区のグループ会社4社を統合して日本製鋼所M&Eが発足。『オール室蘭』として一体となって、事業や人員配置の見直しなどパフォーマンスを上げるような改革を進めてきた。取り組みが実を結び、分社化時の組織再編の目的だった、安定した黒字体制を実現した。黒字化は需要環境の好転も大きい」
――素形材事業は26年3月期の売上高見通しが445億円と、期初の予想を上回る増収の見通しとなった。「売り上げの主体となっているのは、ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)など火力発電用ローターシャフトと、原子力発電所で用いる圧力容器、使用済み燃料棒輸送貯蔵容器部材といった電力・エネルギー分野だ。現中期経営計画(24―28年度)策定時の想定を上回る旺盛な受注で、鍛鋼品の売り上げ増に大きく貢献している。電力分野は25年4―9月期の時点で生産能力を現行の1・5倍とすることを決めたが、さらに上積みできるとみている。一方で自動車関連や、再生可能エネルギーは盛り上がりに欠ける。好調な今のうちに、幅広い分野へ対応できるよう競争力を高め、持続的な経営を目指す」
――防衛関連の売上高を28年度に会社全体で800億円とすることを目指している。拡大に向けた取り組みを。
「防衛関連機器を手がける特機事業部と連携しながら、増産体制を構築し火砲など従来製品の供給拡大に貢献していきたい。開発中のレールガンは、性能向上に貢献する素形材で、技術的にサポートするなどの関係にある」
――現中計の鍛鋼事業に関する設備投資の状況を。
「基幹生産設備などのリフレッシュ投資と能力増強を進めている。基幹設備は2008年から12年にかけて導入したものが多く、更新により生産効率の改善、省エネ対応など安定生産につながる。25年から鍛鋼品の製造能力強化に着手しており、26年から生産能力が改善に向かい、28年度までに生産能力を1・5倍とすることで収益力の向上を目指す。例えば新設したマニプレーターは、4月から稼働を開始。大型のプレス機2台に対し、マニプレーターが2台体制となった。大型品の需要を捕捉するため、大型旋盤の新設も計画通り進める。現状の台数では今後の受注量に追いつかないため、複数台の増強を予定する」
――28年3月期にはESR(エレクトロスラグ再溶解)二次溶解装置を更新する。
「電力向けで、二次溶解を必要とする受注が増えたことから、リプレースを決めた。当社は二次溶解設備として、150トンの大型ESR炉、5トンの小型ESR炉がある。受注に対応するために、小型炉を5トンから14トン炉に増強更新する。航空宇宙分野などで使用されるVAR(真空アーク再溶解)炉の導入は現時点で考えていない」
――室蘭製作所の稼働状況について。
「フル操業が続くがこれは旺盛な需要に加えて、製作所内で設備更新工事を並行して進めていることも背景にある。設備の据え付け工事や試運転で、周辺の設備が一時的に休止することもある。生産を最大化しながら、設備更新工事を遂行していく」
――採用の強化などを目的に、室蘭製作所で新社宅を建設する。「需要増や人手不足に対し、若手の採用を進めたいこと、社宅が老朽化していたことを踏まえ建て替えることとした。福利厚生の改善や人材確保につなげたい」
――GaN結晶に関する取り組みは。
「GaNを製造する設備には、高温高圧に耐える材料が必要だ。エネルギー分野で培ってきた高温対応のタービンローターや圧力容器などのノウハウを組み合わせて設計、製造している」
――半導体・光学デバイス向け材料のフォトニクス事業室との連携は。
「フォトニクス事業は結晶製造用の反応容器を作るなどの、素形材事業部の製品や設計も関わっている。現在は結晶を試作してお客様にサンプルを出しているところだ」
――クラッド鋼板について。
「既存顧客への対応を続けているものの取り巻く環境は厳しく、用途拡大に向けて検討を重ねている。素形材事業は鍛鋼品だけでなく、クラッド鋼板も重要だ。事業全体の底上げにつながるような施策を検討していく」
――コストが上昇している。
「中東情勢など不透明な要素も多いが、今後の状況次第では値上げも検討したい。なお、当社は原材料だけでなく、上昇する労務費を含めた価格転嫁をお客さまにお願いしている」
――現中計の進捗と達成に向けての施策。
「好調な市場環境に支えられ、当初のプランをおおむね達成した。現中計策定時から生産、売上、利益面で上振れする見通しだ。中計のアップデートの際には、売り上げをエネルギーと防衛の二本柱を中心に、さらに高い目標を定める。軸足となっている電力関連のお客さまの要求に応えながら、将来の種まきも行うなど変化に強い事業部にしていきたい」(北村康平)














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