2026年1月21日
非鉄新経営 厳しさ増す市場に対応/住友金属鉱山社長/松本 伸弘氏/新規鉱山開発に意欲/銅二次原料、内外で集荷拡大
住友金属鉱山は、2027年度を最終年とする中期経営計画「中計27」をスタートさせた。3年間で1500億円の成長投資を予定する。足元は銅買鉱条件の著しい悪化やニッケル相場低迷、電池材料の需要先である電気自動車(EV)市場の成長減速などアゲインストの風も吹くが、いかに収益基盤を強化していくのか。松本伸弘社長に聞いた。
――今年度の事業環境を。
「資源は銅、金価格の上昇が追い風だ。一方、ケブラダ・ブランカ銅鉱山(QB)では尾鉱堆積場の堤体の建設工事遅延により生産量が十分確保できてない。尾鉱を粗粒と微粒に分けるサイクロン分級機を新しいタイプに更新し、対応策は手を打った」
「製錬は銅精鉱の買鉱条件、TC(溶錬費)/RC(精錬費)が低迷し、ニッケル価格も需給バランスの関係で低迷している。26年のTC/RCについて色々なところで交渉されているが、我々のビジネスパートナーも含め、鉱山側には従来のベンチマークシステム方式と違う買鉱条件で契約を結ぶことを表明している会社もある。現在はそういった会社と当社も交渉をしている。26年の銅プレミアム(割増金)は、TC/RCの影響もあり過去にないレベルに上昇している。当社も利益につなげるよう取り組んでいきたい。ニッケルは、現中計期間の価格上昇は厳しいと見込む。ただ最近はインドネシアで新しいプロジェクトの認可を限定したり、稼働中の鉱山の採鉱量を制限したりする動きも出ており、いずれどこかで需給バランスも改善するのではないかと感じる」
――銅買鉱条件でベンチマーク方式と違う契約は増えるか。
「鉱山会社も精鉱の処理先である製錬メーカーが倒れたら困るため、その辺りは真剣に考えている。中国製錬だけ相手するような鉱山会社もあるが、そうでない会社も結構ある」
――材料事業は。
「電池材料は、中国系のLFP(リン酸鉄系)が急成長しているが、国・地域によってハイニッケルの需要もまだまだある。今後はLFPとハイニッケルの正極材の住み分けができてくるのではないか。当社はニッケル系正極材の戦略的な取り組みを引き続き進めたい。機能性材料は、全般的には生成AIを中心とした高度情報通信分野が急成長を続けている。懸念は半導体の不足。また、当社は通信用デバイスの一つのファラデーローテータの原料にレアアースを使っており、その原料調達リスクはあるかと考えている。在庫の確保や新たなサプライヤーの認定に向け動いている」
――新中計での各事業の戦略を。
「資源は、既存鉱山は比較的順調に操業できている。モレンシー銅鉱山は一時的に重機の作業員が少なくなり減産したが、もう回復している。QBは堤体工事が遅れたが、少しでも前倒しするように協議している。QBの拡張は、まずは現状の生産設備の安定化を優先するためほぼ進んでない。コテ金鉱山は操業がほぼ100%に近いところまできており、今年度はほぼ予算計画通りの生産量になっている。ボトルネックの一つに鉱石の粉砕工程があり、そこでトラブルが発生すると生産量が下がるため、ミルを1基増設して立ち上げの調整をしている。コテの拡張は近隣のゴセリン鉱区で順調にボーリング調査を進めている」
――新規鉱山は。
「ウィヌ銅・金鉱山はFS(事業性評価)を実施しており、計画通り次期中計のどこかで意思決定したい。カナダのバプティスト・ニッケルプロジェクトはサンプルを入手し、製錬プロセスも含め検討している。同プロジェクトのアワルワ鉱は鉄とニッケルの合金に近い状態で、これを溶かして分離するより、フェロニッケルのように乾式系の原料にする方が効率良いと思われる。日向製錬所向の乾式技術を活用する方向で動いている。それ以外に金のプロジェクトなども検討している。北米、オーストラリアなどが中心になる」
――国内で菱刈鉱山以外の金鉱山開発を行う可能性は。
「すでに調べ尽くされており、菱刈からロケーション的に離れたところではほとんどないと思う。それよりも菱刈を中心に鉱体を広げていく」
――製錬の戦略を。
「豪カルグーリー・ニッケルプロジェクトのグーンガリー・ハブ鉱床開発は予定通り検討が進む。外部機関を利用して鉱石を試験的に処理し、プロセスはおおむね確立してきた。現在はCAPEXを出すため、設備の仕様を詰めている。CAPEX、OPEXが出次第、プロジェクトの採算性を計算していくことになる。(投資決定は)今中計のどこかだと思うが、ニッケル価格が低迷しているため、ビジネスパートナーの意向なども十分配慮しながら検討する。当社がフィリピンで行うHPALプロジェクトの経験から言うと、意思決定してから生産開始まで大体5年位かかる」
――日向ではフェロニッケルから、ニッケル工場で原料に使うマットを造るため転炉を入れる。
「予定通り進んでおり、建設エリアにあった不要な設備の撤去は全て完了。許認可の申請を進めている。プロセスは確立しているため、設備の仕様を決めて順次発注する」
――27年に完成するが、市況影響は。
「最初からフルで動かすかは、市況にもよると思う。ただ、今中計中に操業停止するコーラルベイニッケル(フィリピン)で生産しているマットの代替になるため、その分は絶対に必要になる」
――銅製錬は。
「競争力強化に向けDX活用に取り組む。例えば銅精鉱の調合の自動化や、様々な工程での画像解析の導入などにより省力化や技術伝承を図る。銅製錬は精鉱、アノード、スラグなどいずれも物量が多いため、工場内の横持ちを徹底的になくすなど物流効率の改善策も推進している」
――銅製錬の二次原料使用拡大も進める。
「現在の10万トンから14万トンまで増やす。主体の銅のスクラップは国内中心に取引先と協議する。海外銅製錬所から貴金属や銅が含まれた難処理のスラッジ輸入を増やすための協議もしている。Eスクラップは大口電子で熱処理してから銅製錬に使用しており、その増強をするのかはいま議論している」
――電池材料の戦略を。
「EV向けのほか、データセンターでサーバーごとに電源をバックアップするBBU向けの正極材開発にも取り組む。BBUは高出力が必要で設置スペースの制約もあり、どちらかと言えばニッケル系電池が使われるのではないかと言われる。固相法による次世代LFP開発も進める。LFPのターゲットは自動車向け。ニッケルが少ない製品や、ハイブリッド車向けなど様々な正極材開発を推進する。電池研究所の第2開発棟に導入するパイロットプラントを使い開発速度を加速させたい」
――正極材はニッケル酸リチウム(NCA)からハイニッケル三元系(NMC)に全面転換する予定だが、BBU用はどちらか。
「どちらになるかを含めバッテリーメーカーと協議している。正極材は、量的に言えばEV向けが圧倒的で、NMCに切り替える基本路線は進める」
――NMCへの転換で不足する晶析工程の対応は。
「磯原工場と播磨事業所のNCAの連続晶析設備を、NMC用のバッチ方式に順次切り替えていく。NMCの連続晶析技術開発にも取り組んでおり、将来的に連続設備に戻せるようにしておく」
――NMCシフトで一時的に生産が落ちると3拠点ある焼成工程は能力過多になる。
「基本的に、外部委託している分は内製するのが前提。新居浜工場は2系列立ち上がるとそれなりのキャパがあり、最新鋭の設備を使いながらNMCと開発中の正極材の焼成を行うのが良いかと思っている。基本的には3拠点体制を維持すべく、どう活用するかを議論している」
――新中計の成長投資の主な案件を。
「リチウムイオン電池(LiB)リサイクル、日向の転炉導入、グーンガリー・ハブ、正極材転換などの関連が主なものになる。LiBリサイクルは工事が計画通り進み、東予工場の乾式工程、ニッケル工場の湿式工程の建屋はほぼできあがり、設備を設置している段階だ。一方で、原料のブラックマスがなかなか集まらないリスクが顕在化しつつある。国内からの集荷だけでは不十分になりそうで、海外からLiBスクラップ由来のブラックマスなどの調達も検討する。北米や欧州が中心で、海外リサイクラーとも協議を始めている。サンプルを入手し、当社のプロセスで処理できるかどうか確認する」
(田島 義史)
――今年度の事業環境を。
「資源は銅、金価格の上昇が追い風だ。一方、ケブラダ・ブランカ銅鉱山(QB)では尾鉱堆積場の堤体の建設工事遅延により生産量が十分確保できてない。尾鉱を粗粒と微粒に分けるサイクロン分級機を新しいタイプに更新し、対応策は手を打った」
「製錬は銅精鉱の買鉱条件、TC(溶錬費)/RC(精錬費)が低迷し、ニッケル価格も需給バランスの関係で低迷している。26年のTC/RCについて色々なところで交渉されているが、我々のビジネスパートナーも含め、鉱山側には従来のベンチマークシステム方式と違う買鉱条件で契約を結ぶことを表明している会社もある。現在はそういった会社と当社も交渉をしている。26年の銅プレミアム(割増金)は、TC/RCの影響もあり過去にないレベルに上昇している。当社も利益につなげるよう取り組んでいきたい。ニッケルは、現中計期間の価格上昇は厳しいと見込む。ただ最近はインドネシアで新しいプロジェクトの認可を限定したり、稼働中の鉱山の採鉱量を制限したりする動きも出ており、いずれどこかで需給バランスも改善するのではないかと感じる」
――銅買鉱条件でベンチマーク方式と違う契約は増えるか。
「鉱山会社も精鉱の処理先である製錬メーカーが倒れたら困るため、その辺りは真剣に考えている。中国製錬だけ相手するような鉱山会社もあるが、そうでない会社も結構ある」
――材料事業は。
「電池材料は、中国系のLFP(リン酸鉄系)が急成長しているが、国・地域によってハイニッケルの需要もまだまだある。今後はLFPとハイニッケルの正極材の住み分けができてくるのではないか。当社はニッケル系正極材の戦略的な取り組みを引き続き進めたい。機能性材料は、全般的には生成AIを中心とした高度情報通信分野が急成長を続けている。懸念は半導体の不足。また、当社は通信用デバイスの一つのファラデーローテータの原料にレアアースを使っており、その原料調達リスクはあるかと考えている。在庫の確保や新たなサプライヤーの認定に向け動いている」
――新中計での各事業の戦略を。「資源は、既存鉱山は比較的順調に操業できている。モレンシー銅鉱山は一時的に重機の作業員が少なくなり減産したが、もう回復している。QBは堤体工事が遅れたが、少しでも前倒しするように協議している。QBの拡張は、まずは現状の生産設備の安定化を優先するためほぼ進んでない。コテ金鉱山は操業がほぼ100%に近いところまできており、今年度はほぼ予算計画通りの生産量になっている。ボトルネックの一つに鉱石の粉砕工程があり、そこでトラブルが発生すると生産量が下がるため、ミルを1基増設して立ち上げの調整をしている。コテの拡張は近隣のゴセリン鉱区で順調にボーリング調査を進めている」
――新規鉱山は。
「ウィヌ銅・金鉱山はFS(事業性評価)を実施しており、計画通り次期中計のどこかで意思決定したい。カナダのバプティスト・ニッケルプロジェクトはサンプルを入手し、製錬プロセスも含め検討している。同プロジェクトのアワルワ鉱は鉄とニッケルの合金に近い状態で、これを溶かして分離するより、フェロニッケルのように乾式系の原料にする方が効率良いと思われる。日向製錬所向の乾式技術を活用する方向で動いている。それ以外に金のプロジェクトなども検討している。北米、オーストラリアなどが中心になる」
――国内で菱刈鉱山以外の金鉱山開発を行う可能性は。
「すでに調べ尽くされており、菱刈からロケーション的に離れたところではほとんどないと思う。それよりも菱刈を中心に鉱体を広げていく」
――製錬の戦略を。
「豪カルグーリー・ニッケルプロジェクトのグーンガリー・ハブ鉱床開発は予定通り検討が進む。外部機関を利用して鉱石を試験的に処理し、プロセスはおおむね確立してきた。現在はCAPEXを出すため、設備の仕様を詰めている。CAPEX、OPEXが出次第、プロジェクトの採算性を計算していくことになる。(投資決定は)今中計のどこかだと思うが、ニッケル価格が低迷しているため、ビジネスパートナーの意向なども十分配慮しながら検討する。当社がフィリピンで行うHPALプロジェクトの経験から言うと、意思決定してから生産開始まで大体5年位かかる」
――日向ではフェロニッケルから、ニッケル工場で原料に使うマットを造るため転炉を入れる。
「予定通り進んでおり、建設エリアにあった不要な設備の撤去は全て完了。許認可の申請を進めている。プロセスは確立しているため、設備の仕様を決めて順次発注する」
――27年に完成するが、市況影響は。
「最初からフルで動かすかは、市況にもよると思う。ただ、今中計中に操業停止するコーラルベイニッケル(フィリピン)で生産しているマットの代替になるため、その分は絶対に必要になる」
――銅製錬は。
「競争力強化に向けDX活用に取り組む。例えば銅精鉱の調合の自動化や、様々な工程での画像解析の導入などにより省力化や技術伝承を図る。銅製錬は精鉱、アノード、スラグなどいずれも物量が多いため、工場内の横持ちを徹底的になくすなど物流効率の改善策も推進している」
――銅製錬の二次原料使用拡大も進める。
「現在の10万トンから14万トンまで増やす。主体の銅のスクラップは国内中心に取引先と協議する。海外銅製錬所から貴金属や銅が含まれた難処理のスラッジ輸入を増やすための協議もしている。Eスクラップは大口電子で熱処理してから銅製錬に使用しており、その増強をするのかはいま議論している」
――電池材料の戦略を。「EV向けのほか、データセンターでサーバーごとに電源をバックアップするBBU向けの正極材開発にも取り組む。BBUは高出力が必要で設置スペースの制約もあり、どちらかと言えばニッケル系電池が使われるのではないかと言われる。固相法による次世代LFP開発も進める。LFPのターゲットは自動車向け。ニッケルが少ない製品や、ハイブリッド車向けなど様々な正極材開発を推進する。電池研究所の第2開発棟に導入するパイロットプラントを使い開発速度を加速させたい」
――正極材はニッケル酸リチウム(NCA)からハイニッケル三元系(NMC)に全面転換する予定だが、BBU用はどちらか。
「どちらになるかを含めバッテリーメーカーと協議している。正極材は、量的に言えばEV向けが圧倒的で、NMCに切り替える基本路線は進める」
――NMCへの転換で不足する晶析工程の対応は。
「磯原工場と播磨事業所のNCAの連続晶析設備を、NMC用のバッチ方式に順次切り替えていく。NMCの連続晶析技術開発にも取り組んでおり、将来的に連続設備に戻せるようにしておく」
――NMCシフトで一時的に生産が落ちると3拠点ある焼成工程は能力過多になる。
「基本的に、外部委託している分は内製するのが前提。新居浜工場は2系列立ち上がるとそれなりのキャパがあり、最新鋭の設備を使いながらNMCと開発中の正極材の焼成を行うのが良いかと思っている。基本的には3拠点体制を維持すべく、どう活用するかを議論している」
――新中計の成長投資の主な案件を。
「リチウムイオン電池(LiB)リサイクル、日向の転炉導入、グーンガリー・ハブ、正極材転換などの関連が主なものになる。LiBリサイクルは工事が計画通り進み、東予工場の乾式工程、ニッケル工場の湿式工程の建屋はほぼできあがり、設備を設置している段階だ。一方で、原料のブラックマスがなかなか集まらないリスクが顕在化しつつある。国内からの集荷だけでは不十分になりそうで、海外からLiBスクラップ由来のブラックマスなどの調達も検討する。北米や欧州が中心で、海外リサイクラーとも協議を始めている。サンプルを入手し、当社のプロセスで処理できるかどうか確認する」
(田島 義史)














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