――社長就任後、日軽金グループをどのような会社にしていく考えか。
「社内では『幸せで、誇りあるチームにしていこう』と呼び掛けている。具体的な目標が長期ビジョンで掲げる『循環型価値創造のグローバル・リーディング・カンパニー』だ。社員一人ひとりが仕事に誇りを持ち、グループが一体となって社会へ新たな価値を提供できる会社を目指したい。26中計では新しい価値づくりとプロセス変革を進め、成長と効率化を両立させていく」
――中東情勢による原料調達への影響をどう見ているか。
「現時点(取材時の7月10日時点)では、情勢が悪化した当初に比べると、調達の逼迫感は和らいできた。ビレットでは、以前は1カ月先までしか見通せなかったものが、現在は年内の調達にもめどが立ちつつある。一部の特殊材や副資材では影響が残るものの、事業全体を止めるような状況ではない」
――調達戦略をどのように見直す考えか。
「当社は従来から特定の地域だけに依存しない調達を進めてきたが、今後も複数購買を進める。低炭素アルミを含め、調達地域や供給元を多様化していく。一方、海外のグリーンアルミ地金の権益確保への直接投資は現時点では考えていない。既存取引先との関係を深めながら、安定調達と環境負荷低減を両立し、グリーンアルミの調達比率を高めていきたい」
――半導体関連の需要動向はどうか。
「半導体市場の回復は明確になっている。半導体製造装置向け厚板に加え、半導体用途セラミック向けアルミナや、放熱材に用いられる窒化アルミなど、グループ内の幅広い事業に追い風が出ている。半導体関連は製造装置、材料、周辺設備では市場や収益構造が異なる。分野ごとの売上高や利益を把握し、半導体分野としての情報発信や投資判断につなげたい」
――自動車関連事業の状況はどうか。
「世界的なEV計画の見直しなどで、特に北米は厳しい状況が続いている。一方、生産プロセスの改善で利益率は向上している。新規商材を確保し、黒字化への道筋をつけることが課題だ。国内ではブレーキ、熱関連、足回り部品を重点分野とし、他社には製造が難しい高付加価値製品の拡販を進める。EVの伸びが鈍化しても、ハイブリッド車やエンジン車を含め、軽量化や放熱への需要は続くとみている」
――中国事業をどのように運営する考えか。
「中国では日系自動車メーカーの販売低迷に伴い、当社の自動車関連事業も厳しさを増している。足元の稼働率は低くないが、収益面に課題がある。日系顧客だけでなく現地系顧客や高付加価値品の開拓も含め、市場や顧客構成の変化に合わせて事業の在り方を検討していく」
――新たな成長分野として航空・宇宙を挙げている。
「これまで培ってきた加工、接合、押出などの技術を生かせる市場だ。認証取得や品質保証など課題はあるものの、成長が見込まれる市場のため挑戦したい。産業機器や自動車で蓄積した技術を展開し、半導体と並ぶ軽圧事業の成長の柱に育てたい。まずは既存技術を生かせる製品や用途を見極め、顧客評価や事業化につなげていく」
――東洋アルミニウムへの期待を。
「箔、パウダー・ペースト、日用品などで独自性の高い技術を持っている。特に自動車や半導体向けの放熱材料は今後の成長が期待できる。日軽金グループとの間では材料供給やリサイクルに加え、研究所間の技術交流や人材交流も進めている。互いの技術や知見を組み合わせ、新しい製品や事業の創出につなげたい」
――神戸製鋼所との押出事業統合で、どのような相乗効果を見込むか。
「神戸製鋼所の高強度合金の開発力や鋳造技術と、当社の押出、加工、接合技術を組み合わせ、新商品を創出したい。市場面では神戸製鋼所は自動車関連、当社は産業機器、鉄道、トラック架装などに強みがあり、顧客や用途の重複が比較的少ない。営業、技術、生産の各面で両社の強みを生かし、幅広い市場をカバーできる体制を構築する。まずは国内事業の統合を着実に進め、その先の展開は成果を見ながら検討したい」
――低炭素アルミブランドの検討状況はどうか。
「ブランド名の選定も含め、検討は最終段階に入っている。今期中の公表を目指し、進めていく」
――循環型サプライチェーンをどう構築する考えか。
「スクラップを高値で買い集めるだけでは価格競争になる。回収、選別、再資源化、製品化、廃棄物処理までを一体で考え、スクラップを価値ある資源に変えることが重要だ。新幹線車両やトラック架装材で進めてきた水平リサイクルの知見を他の用途にも広げたい。DOWAホールディングスとの連携も、単純な調達強化ではなく、循環全体を構築するための取り組みだ。自前主義にこだわらず、必要な技術や機能を持つ企業とは積極的に協業していく」
――成長投資の重点分野はどこか。
「放熱部材、半導体、自動車部品が中心になる。化成品、軽圧、自動車部品、箔の各事業グループで、それぞれ数十億円規模の投資を3年間で検討している。新規部品では専用設備や自動化ラインが必要になる場合もある。国内を中心に開発や新商品投資を進める一方、将来の他社との協業やM&Aにも対応できる体制を整える。脱自前主義で、他社との共創・連携を進める投資に関しては、『循環』のキーワードで生まれた価値そのもの自体の経済合理性を評価していく」
――AIをどのように活用する考えか。
「検査、経理、監査、文書比較など、既に各部門で活用が始まっている。画像検査などを実用化している事例もあるが、グループ全体として取り組みや経済効果を十分に集約できていない。単純作業の置き換えだけでなく、人手では負担の大きい専門業務を効率化することが重要だ。各拠点の成果を可視化し、効果の高い事例を他の事業所にも横展開していきたい」
(増岡 武秀)
























