新社長に聞く/DOWAHD 福田 健作社長/ブランド施策で認知高める

新社長に聞く/DOWAHD 福田 健作社長/ブランド施策で認知高める
DOWAホールディングスは、2026年度第1四半期(4―6月)の営業利益と経常利益が前年同期比3・8倍に増加した。金属価格上昇や円安の追い風だけでなく、5事業で進めてきた投資効果も着実に表れている。6月に就任した福田健作社長に足元の事業環境や、2年目に入った中期経営計画「中期計画2027」の進捗を聞いた。

――社長就任の抱負を。

「入社以来、製錬事業の製造現場で多くの時間を過ごしてきた。その他の事業部門は手探りの部分もあるが、各事業の営業、開発、製造の最前線にいる社員は優秀な人が多い。その人たちの意見に耳を傾け、現場ファーストで運営していきたいと考えている」

――中期計画の各事業の取り組みと直近の事業環境を聞きたい。まず環境・リサイクル部門を。

「国内の難処理廃棄物処理とリサイクルの受注は堅調で、低濃度PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物処理の減少分を十分にオフセットできる体制が整っている。東南アジアでも廃棄物処理の受注は増加傾向で、投資回収フェーズに移りつつある。新規事業のリチウムイオン電池(LiB)や太陽光パネルリサイクルは、パイロットプラントで実証試験を進めながら技術検証を行っているが、当初想定より市場の立ち上がりが遅れそうだ」

――LiBリサイクルは中間原料のブラックマス製造に加え、リサイクル実証プラントも立ち上げた。

「ブラックマスの技術的な検証はほぼ完了している。そこから電池材料までのリサイクル実証も進めるが、実際にそこまでやるとなると、処理量をかなり増やさないと投資回収が難しい。技術を磨きながら、ある程度の量が確保できる見込みが立ってからどこまでやるのかを検討することになると思う。我々だけではできない部分は他社との協業も視野に入れる必要がある」

――秋田地区と岡山地区で環境・リサイクル子会社の再編を発表した。

「環境・リサイクル事業会社のDOWAエコシステムは事業部が3つある。両地区でそれぞれの事業を担ってきた会社を一緒にすることで、事業部をまたいだ様々なサービスやソリューションを顧客に提供できるようにするのが狙いだ。事務的な無駄の改善効果も見込める」

――製錬部門の取り組みを。

「金属価格高止まりや円安で、事業環境は追い風が吹いている。追い風を享受するためにも、安定操業や実収率向上に継続して取り組む必要がある。その一環として製錬・リサイクル複合コンビナートの再構築プロジェクトを打ち出している。具体的な投資検討などを進めるため、DOWAメタルマイン社長をトップとする新たな組織を立ち上げた」

――コンビナート再構築に向け30年度までに1000億円規模の投資を想定する。最終的に目指す姿は。

「亜鉛製錬事業は秋田製錬に周辺の関連会社を統合したが、設備体制はそのままで、近隣の工場に運ぶ非効率性が残っている。小坂製錬はリサイクル原料処理に適したTSL炉に転換して以降も、それ以外は昔の設備を使用しており、やはり非効率さがある。秋田、小坂でいかに効率良いものの流れをつくるか。また両工場が立地する秋田県は少子高齢化が進んでおり、圧倒的な省力化なども含めて最適化を考えるプロジェクトだと思っている。利益が出せる新原料の探求や多様化も進める必要があり、環境・リサイクル部門も含めて検討していく」

――小坂では新たにルテニウムのリサイクルを始めた。今後、希土類(レアアース)リサイクルを行う考えはあるか。

「当社はかつて、中国から鉱石を買ってきて希土類を製錬していたが、中国とのコスト競争に勝てず撤退した。今後、環境技術研究所を中心に希土類回収の技術を開発していくことはあるかもしれない※。日本軽金属との金属リサイクルに関する戦略的パートナーシップでも、モーターからの希土類回収は検討項目の一つ。ただ、ある程度数量が集まらないとリサイクル事業は難しく、投資後に中国が安値で出すようなことがあると厳しい」

――世界的に希土類の価格保証やリサイクル材使用などの制度が進むかもしれない。

「そういった体制が国も含めて整い、まとまった原料を確保できる見通しが立てば、検討する余地はある」

――亜鉛鉱山開発も進める方針だ。

「現在はメキシコの2鉱山で銀価格の高止まりが利益増につながっているが、当社の鉱山開発は、まず秋田製錬の操業安定に資する鉱石を調達するというのが基本的な考え方。数量確保だけでなく、不純物や有価物の含有量など様々な要件がある。製錬事業全体の安定操業につながる原料を産出できる鉱山を、ティサパ鉱山が稼働しているうちに見つけたい」

――電子材料部門はどうか。銀粉事業の業績が復調しているが。

「銀粉は中国の太陽光パネル向けの競争激化で販売が減り、今後の見通しも非常に不透明なため戦略を見直した。銀粉の生産はやめないが、従来のように大量に造り中国で売る事には注力しないという事だ。前期までは中国の銀価格が国際価格より安かったため中国製銀粉との価格差が著しく、受注が減った。今期に入り中国相場が国際相場を上回ったため当社への注文が増えたが、不透明な見通しには変わりない。ただ、インドでパネル市場が立ち上がれば当社の銀粉が使われる可能性もある」

――LEDや燃料電池材料は堅調だ。

「ウェアラブル機器向けの近赤外LED・PD(受光素子)は販売が伸び、燃料電池材料も受注が増えてきた。燃料電池材料の需要はAIサーバー向けで急速に拡大し、追加投資も検討している。AI関連需要はしばらく続くのではないか」

――伸銅品やめっきを手掛ける金属加工部門はどうか。

「金属加工もAIサーバー向けの受注がかなり増え、情報通信関連の高付加価値品の販売が伸びている。金属価格上昇もあり、業績は極めて好調だ。これまでの設備投資でうまく時流に乗れた。受注残が高止まりしている状況で、さらなる投資検討のフェーズにあると思う」

――最後に熱処理部門を。

「低環境負荷の新型熱処理炉は、自動車分野で非常に評価いただいている。最近は半導体メーカーなどでも評価の機会が増え、販売拡大につなげたい。ベースの自動車向けはしっかりしているが、さらなる発展には他分野向けにも取り組む必要がある」

――26年度の業績見通しが中期計画の目標値を超えている。

「中計の財務目標は前倒しで達成できる見通しだ。ただ数値目標だけが目的ではなく、重要なのは循環のクオリティーを追求すること、そして顧客や社会の役に立つこと。その実現に向けて各事業会社が施策を着実に実行していく。数値目標の変更は、現時点では考えていない」

――前期は相場が急騰する中でヘッジがマイナスに効いた。今期は銀価格下落でプラス効果も出ているが、ヘッジは続けるのか。

「当社は基本的にフルヘッジしている。事業リスクを極力回避する事業運営をしてきており、これを簡単に変えるつもりない。これだけ金属価格が高くなり、かつ変動すると、事業に大きく影響を与えるリスクとして想定される」

――中東問題に関連したエネルギーや資材への影響はあるか。

「電力代がじわじわ上がりそうで、ボディーブローのように効いている。ただ、いまのところは相場高で打ち消せるレベルだ。資材関係も総じて価格は上がっているが、操業に影響を与えるものではない」

――亜鉛の買鉱条件が再び悪化し、スポットはマイナス圏だ。

「当社はメキシコの自山鉱が利益と鉱石の安定供給に貢献している。スポットでの調達はほぼなく、スポットTC(溶錬費)がマイナスでも現状はほぼ影響ない。ただし、スポット条件が沈むとベンチマークTCも下がる傾向にあるので、来年以降の契約に対してはリスクになる」

――買鉱条件悪化に対し、亜鉛地金の販売プレミアム引き上げはどうか。

「買鉱条件を理由にプレミアムの引き上げはできないと思う。だが製造や輸送にかかるコストが総じて高くなっており、そこに関してはお客様に理解してもらいプレミアムの値上げが必要になるかもしれない。国内需給も引き締まっている。硫黄の国際的な価格上昇を反映し、製錬副産物の硫酸の値上げも行っている」

――脱炭素やDXに関する取り組みを。

「製錬の脱炭素については、小坂のTSL炉で使う石炭をバイオマスに変える試験を継続して行っている。廃棄物処理での炭素排出や電力由来の排出については当社だけで対応できることに限界があるため、引き続きの課題だと認識している」

――廃棄物処理ではカーボンフットプリント(CFP)サービスを6月に開始した。

「CO2削減に寄与する製品・サービス『DOWAグリーンアクション』を拡充しているが、実際の効果を数値として見える化しないと伝わりにくい部分がある。それをはっきりさせていく。リサイクル製品など特定のものに限らず、広い意味で我々の事業を理解してもらえるよう、資源循環に向けた取り組みをブランドとして認識してもらうための施策を考えている」

(田島 義史)

▽福田健作(ふくだ・けんさく)氏=1992年金沢大工卒、同和鉱業(現DOWAホールディングス)入社、19年DOWAメタルマイン取締役、22年秋田製錬社長、24年執行役員、DOWAメタルマイン社長。小学生で始めた剣道は大学まで続けた。趣味はゴルフ。66年8月4日生まれ、秋田県出身。



※DOWAエコシステムは環境省の実証事業で、使用済みモーターからの希土類磁石の回収には取り組んでいる。



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