「全体として3事業ともに物価高、人手不足の影響を大きく受けている。米国関税措置の影響は直接的にはないが、間接的には当社のエンドユーザーが受けていることもあり、動きが鈍化してきた事業も出ている。素形材事業は活況を呈している。全社売上高の1割強を占める半導体関連向けが好調で、2025年後半から半導体製造装置に使われる特殊ポンプ用部品の受注が増えており、さらなる増産要請が来ている。自動車向け、工作機械向けの需要も回復基調にある。当社のメインである土木建築機材事業は橋梁向けを主体とする免制震装置を手掛けており、近年は建築物向けへのアプローチも進めているが、建設現場の人手不足で工事の進捗に時間を要しており、また各種資機材価格の高騰で建築計画の見直し・延期・中止が相次ぐなど逆風が強い。産業機械事業は免制震用油圧ダンパーや大型建設機械向けシリンダー部品、自動車防振向けをはじめとするゴム、プラスチック用射出成形機などを製造・販売しているが、前年並みにとどまっている。医療やプラントなど建機、自動車以外の分野向けは徐々に受注が回復している」
――前期決算(26年3月期)を振り返って。
「24年3月期、25年3月期は好決算となり、ともに最高益を更新したが、26年3月期は前期比減収減益となった。土木建築機材の急激な需要減少による収益悪化が主な要因。素形材はほぼ前期並み、産業機械は減収減益となったが、落ち込みは小幅にとどまった」
――今期(27年3月期)の見通しはどうか。
「前年に引き続き、土木建築機材の出足は良くない。新設案件だけでなく、既設橋梁の維持・補修需要も一服感が出ており、全社収益は保守的に考えざるを得ず、前期比で減収減益を予想している。中東情勢の悪化で資材購入価格が上昇しており、顧客の理解を得ながら、当社グループ全体で販売価格への反映を進める。また、日本製鉄北日本製鉄所室蘭地区の事故で前期は半製品・ビレットの入手が困難になり、これを素材に使う川口金属加工兵庫工場の異形形鋼生産が不安定化したものの、日鉄・室蘭の復旧によって今期は安定生産が見込まれる。半導体関連向けが好調な素形材や、産業機械の業績が回復した場合、全社収益が計画を上振れする可能性がある」
――半導体関連向けの需要増にどう対応するか。
「半導体製造装置向け特殊ポンプ用部品を生産している特殊メタルは引き合い・受注が増えており、操業体制を現行の1直から2直、もしくは3直のフル稼働にシフトする。川口金属加工の異形形鋼は大手直動案内機器メーカー向けが好調で、生産効率化を進めて増産体制整備を検討する」
――第5次中期経営計画の進捗状況を。
「今期が最終年度である現行の第5次中期経営計画は『KX(川金トランスフォーメーション)』の実行が主軸になる。KXは当社グループの考え方や在り方をトランスフォーム(変容)させるのが大きなテーマ。当社グループはものづくり企業の集団だが、単に指定スペックどおりに製品を生産・出荷するだけではなく、需要家にメリットが出るように素材や形状などを当社から積極的に提案するような意識改革を行い、これを実行できる技術力・提案力を備えた体制に切り替えていく。DX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)の活用も進める」
「またアフターサービスなどサポートビジネスを展開する。土木建築機材についてはメンテナンス分野に力を注ぎ、これまで当社が納入してきた製品の維持・補修を実行するべく活動を強化する。この一環として、24年11月に橋梁工事や建築工事、補修工事の施工および管理を行う共成建設を川金コアテックが完全子会社化し、橋梁部材のメンテナンスや更新に係る技術力を高めるなど体制を整えてきている」
――素形材はどうか。「川口金属工業や特殊メタルでは温度変化に対する膨張率が低い素材や複雑形状を可能とする鋳造製品を、また川金ダイカスト工業ではアルミのナノキャスト製法を活用した高付加価値製品を手掛けている。顧客への提案営業をより活発化して、採用実績を増やしていきたい」
――設備投資計画、M&A案件はあるか。
「素形材はグループ企業で増産体制を敷く一方、老朽化設備の更新を行うため、工事期間中の納期管理を徹底しながら、顧客に高品質製品を安定供給するための体制を整える。土木建築機材は建築物向けを主体に国内販売・輸出を促進するため、川金コアテックの茨城工場で免制震装置の製造ラインを増設する。すでに建屋の基礎工事に着手しており、27年末をめどに稼働を開始する計画だ。産業機械は建機用シリンダーや免制震用ダンパー以外、例えば防衛関連や防災・減災分野などをターゲットに新規マーケット開拓に注力する」
「近年は土木建築機材で共成建設、また素形材では磯部鉄工をグループ化している。磯部鉄工は耐熱鋳鋼を製造しており、鋳造製品におけるグループ全体の対応力が高まっている。次のM&Aで検討に入りたい案件はあるものの、時間を要する。ターゲットは素形材、土木建築機材が主体になり、現行事業の周辺になる解析や設計、メンテナンスや現場工事などに照準を合わせる。当社のポートフォリオにマッチする企業であればグループ化していきたい」
――海外展開を。
「土木建築機材や産業機械で考えていく。土木建築機材は地震国への免制震装置の輸出を強化する。米国ではネバダに免震装置の製造・販売拠点であるダイナミック・アイソレーション・システムズを設置しており、米国や中南米向けで免制震装置の新規市場を開拓する。トルコの営業所ではトルコ国内とともに、欧州諸国の地震国にもアプローチする。アジアはベトナムの川金コアテックベトナムから東南アジア諸国に積極的に展開する。産業機械はインドで製造パートナーを見付けて提携して標準品の生産を委託し、日本の拠点では製造難度が高く付加価値のある製品に製造をシフトしていきたい」
――カーボンニュートラルへの動きが加速している。どのような影響があると考えるか。「素形材の主原料は鉄スクラップだが、高炉の電炉化によって鋳造業に与える影響を懸念している。鉄スクラップ調達が難しくなるだけでなく、購入価格も上昇する可能性があり、その際にはコスト増分を製品販売価格に反映する必要がある。鋳造製品が高額になれば鍛造製品に置き換わるなども想定されるため、経営に打撃を与えることも踏まえ、対策を講じる必要がある」
――働きやすい職場環境の創出にも取り組んでいる。
「生産年齢人口の減少で人手不足が深刻化しており、新規採用が難しくなっていることから、近年は賃金アップなど待遇改善に取り組んでいる。業界や他産業と比較しても見劣りしないレベルを維持したい。一方、グループ全体を対象にしたエンゲージメント調査を行い、働きやすい職場への改善を重ね、また運動会やBBQなど各種イベントを催すなど、従業員の満足度を高めるよう努力している。ただ人手不足は日本の構造的課題でもあり、採用を促進する一方で、設備投資を行って現場の自動化や省人化にも注力していかなければならない」
――来期から次期中期経営計画が始動する。
「KXを継続しながら、大幅かつ急激に変化する経営環境に対応できる柔軟な組織、企業を作り上げる。また土木建築機材と素形材、産業機械に続く第4の事業柱を構築する。これには広い意味でのサービスビジネス、例えばメンテナンスや解析・設計、エンジニアリングソリューション分野を視野に入れる」
――日本鋳造との業務提携の進捗は。
「鋳造製品分野や橋梁用支承分野で部会を設けて、提携深化に向けて実務レベルで協議している。当社が顧客に納入してきた鋳造製品について、日本鋳造が試作を行って品質調査を実施しており、製造コスト試算など、お互いにメリットが出るよう詳細を詰めていく。橋梁用支承はそれぞれの得意分野を活かして、共同開発や品質向上に向けての協業を推進していきたいと考えている。」(濱坂浩司)


























