安全衛生大会・札幌開催に向けて/竹越徹・中災防理事長に聞く/食支える産業の対策重点/熱中症防止製品が一堂集結

安全衛生大会・札幌開催に向けて/竹越徹・中災防理事長に聞く/食支える産業の対策重点/熱中症防止製品が一堂集結
中央労働災害防止協会は第85回全国産業安全衛生大会札幌大会と緑十字展2026を9月16―18日に札幌市で開催する。大会のテーマは「大地にみなぎる 安全・健康 決意の力」。札幌での開催は18年ぶりとなり、農作業事故の防止や北海道ならではの講演内容など新規の取り組みも盛り込んでいる。大会のポイントや期待など竹越徹理事長に聞いた。

――今回のテーマ・プログラム内容の見どころを。

「大きく3つあり、まず1つめは、大会初日の総合集会で行う、地元北海道のリーディングカンパニー、セコマの丸谷智保取締役会長による特別講演。セコマは北海道を中心に原材料の生産・調達から食品製造、物流、小売りまで自社で一括管理する、いわゆる『垂直統合型』の独自のサプライチェーンを構築し、地域産品を積極的に活用した商品活用や道内外への流通チャネルの拡大により、企業の成長と地域経済の活性化を両立させてきた。『人口減少、高齢化と向き合う経営』と題した今回の講演では、なぜセコマが地域にこだわるのか、どうして地域と共生しながら社会的な課題解決に取り組むことがブランド化と価値創造につながるのかを、具体的な事例とともにお話しいただく」

「2つめは『食を支える産業の安全を考える分科会』の新設。北海道の基幹産業である農業、畜産業、食料品製造業などにおける労働災害防止に資することを目的に今年初めて設置したもので、食料品製造業や農業などにおける安全衛生上の課題や最新情報を共有し、今後の展望を考える。狙いについて端的に言えば、『農作業事故防止』への貢献。近年、『農作業事故』の増加が課題になっており、農水省発表の農作業死亡事故調査によると、24年の農作業事故による死亡者数は287人となっている。労働者が被災したものではないものも含まれているため単純比較はできないが、24年の労働災害による死亡者数が746人、うち建設業における死亡者数が232人であることからすると、農作業事故の防止対策は喫緊の課題といえる。さらに農作業死亡事故の状況を受け、現行では労災保険が任意適用となっている5人未満の農業事業者にも労災保険を強制適用することなどを内容とする労働者災害補償保険法の改正案が今国会に提出されている。農業政策におけるパラダイムシフトが今年新たに農業を一つの分科会テーマに据えた理由だ。北海道らしさという点では、『食を支える産業の安全を考える分科会』にその要素が詰まっている。具体的なプログラムとしては、午前に主に事業場による研究発表や特別報告を実施し、午後はシンポジウム『未来へつなぐ農業と農作業安全』を開催する。シンポジウムでは、農林水産省農政局による基調講演『農作業安全の推進に関する取り組みについて』に加え、農業ジャーナリストの小谷あゆみ氏を座長にパネルディスカッションを行い、パネリストとして、JAオホーツク網走青年部、国研の農業・食品産業技術総合研究機構、Kalm角山(江別市)の各代表など地元の農業関係者が登壇し、農業現場が抱える課題や解決策、農作業安全の取組事例などを紹介する。さらに、北海道大学大学院農学研究院准教授の楊亮亮氏による『スマート農業と食料安全生産の実現に向けた研究紹介』と題した講演や北海道農業機械工業会専務理事の竹中秀行氏、おおやファーム(千歳市)取締役総務部長の村上英恵氏による特別報告なども行う。9月17日の1日のみの開催だが、札幌コンベンションセンターを舞台に多彩な事例発表、シンポジウム、講演、特別報告を通じて、多発する農作業事故を防ぐための知見、最新情報などを提供する」

「3つめは、地元企業などによるプログラム、最新のトピックスをテーマにしたプログラムの充実。今回は北海道の事業場から26本の研究発表を予定しているほか、化学物質の自律的管理における個人ばく露測定の実施、改訂版ISO45001への円滑な移行方法、若者のメンタルヘルスケアなど、安全衛生で関心の高い分野を題材に多数のパネルディスカッションを開催する。時宜に適ったテーマや開催地・北海道にちなんだ事例発表などを数多く盛り込むなど、全国から参加される皆様にご満足いただける充実したプログラムになっており、ぜひ期待してほしい。2日間にわたる分科会全体で、有識者による専門的な講演やパネルディスカッションを約40本、職場の労働災害防止や健康づくりなどに取り組む企業・団体・教育機関による研究発表を約190本予定している。地元関係者による北海道ならではのプログラムが凝縮された分科会となっている。北海道らしいプログラムとしては、旭川市旭山動物園統括園長の坂東元氏による『伝えるのは命 繋ぐのは命』や大林組専務執行役員大阪本店長兼大阪本店建築事業部長の竹中秀文氏による『北海道ボールパーク建設の安全管理』などもあり、いろいろと注目していただきたい」

――緑十字展は出展規模が増えている。

「出展規模は208社・団体、752小間と、18年前(91社・団体、420小間)に札幌で開催したときの2倍近くになっている。『安全衛生の最後の砦』といわれる安全衛生保護具をはじめ、労働災害防止に役立つ様々な機器、技術、サービスが多数出展される予定だが、近年はAI、IoT、ロボティクスなどのデジタル技術を駆使した新たな価値を提供する製品が増えている。中でも、人の侵入や転倒を検知するAI画像認識システムやヒヤリハットやKYシートを自動作成する文書生成AIなどは多くのメーカーが競って開発に取り組む注目のソリューションで、来場される安全衛生担当者も熱視線を送っている。一方、最新のテクノロジー製品と並んで近年出展が増えているのが熱中症対策用の製品。ファン付き作業服や冷却グッズはじめ、ウェアラブルデバイス、飲料水、工場扇など種類は様々だが、今回は特別企画展として熱中症対策用の製品を一堂に集めたコーナーを設けるとともに、そうした製品などを活用して熱中症対策を実践している地元企業の取り組み事例をパネルで紹介することにしている。地球温暖化の影響は北海道も例外ではなく、近年は道内でも熱中症警戒アラートが発表されるなど熱中症の発症リスクが高まっている。ぜひご来場いただき、多くの最新情報を持ち帰って職場の熱中症対策に生かしていただければと思う。また、熱中症で被災する労働者を一人でも多く減らすために、中災防として、熱中症対策に積極的に取り組む企業が求める正しい最新情報や、具体的な事例や関連サービスなどに容易にアクセスできる環境づくりを目指し、企業や熱中症対策の専門家、関係機関間の情報共有のためのコミュニティを立ち上げることとしている」

――集客、若手の来場者増加への方策は。

「北海道の産業の特徴は全国と比べて農林水産業や建設業、保健衛生・社会事業の割合が大きい一方、製造業や情報通信業などの割合が小さくなっている。製造業をみると、工業出荷額では食料品製造業が製造業全体の3分の1以上、全国の4倍以上の割合となっており、道内製造業の大部分を占めている。今年の目玉である『食を支える産業の安全を考える分科会』の新設はこうしたデータに裏打ちされたものであり、私どもとして今回、農業、畜産業、食料品製造業など北海道の基幹産業に従事される多くの方々にご参加いただきたいと考えている。一方で北海道は近年、国際競争力ある産業の創出・育成にも力を入れている。次世代半導体製造拠点の立地を契機にデジタル基盤を強化し、地方創生や社会課題の解決に貢献するため、産学官が連携して半導体人材の育成・確保や関連産業の取引活性化を推進している。データセンターの立地・集積や宇宙関連産業、バイオ産業などの振興にも取り組んでいるが、新たな分野における安全衛生意識の向上、労働災害防止は当協会にとって今後見据えるべきテーマの一つとなる。道内に所在する関連企業はもとより、広く東北地方の企業も含めて全国大会への参加を呼びかけていく。当協会では若い世代に安全衛生への関心を持ってもらい、学びの機会として役立ててもらうために大学など教育機関との連携を進めているが、昨年、一昨年に引き続き、今年もオープンカンパニーを実施することにしている。道内の大学生・大学院生などを全国大会と緑十字展に無料招待し、両イベントを自由に聴講、見学してもらうというプログラム内容であり、全国1万人以上の安全衛生担当者が交流することで生まれる熱気を肌で感じてもらい、キャリア教育として、産業界の安全衛生に関わる仕事への理解が深まり、安全衛生の道を志すきっかけになればうれしい」

――昨今の労災の発生状況・傾向と関連して札幌大会で訴えるポイントは。

「25年の労働災害による死亡者数は700人(前年比46人減)と過去最少となったが、休業4日以上の死傷者数は13万5333人(前年比385人減)と依然高い水準で推移している。特に近年は『転倒』『腰痛』『無理な動作』といった行動災害が増え、高年齢労働者の災害が増加している。60歳以上の労働者は全就業者の約19%だが、休業4日以上の死傷災害では約30%を占めている。高年齢労働者は一度の転倒が重症化しやすく、回復に時間を要するため、長期離職につながるケースも少なくない。死傷災害が増加傾向にある小売業や介護施設を中心に防止対策を着実に推進していく必要がある。その流れを受けて、26年4月1日から高年齢労働者の労働災害防止措置が事業者の努力義務になった。これまで高年齢労働者対策はエイジフレンドリーガイドラインに基づく自主的な取り組みだったが、改正後は、高年齢者の労働災害防止のための指針として法的な位置付けが与えられ、全ての事業者に対して対応が求められることになる。努力義務化によって重要になるのは『高齢だから危険』と考えるのではなく、年齢特性を踏まえた職場づくり。これからの安全管理は『誰もが長く安全に働き続けることができる職場環境を設計する』という発想への転換が必要だ。高年齢労働者対策は単なる法令対応ではなく、人手不足時代において、経験豊富な人材を安全に活用し続けるための経営課題そのものだ。近年、精神障害による労災認定が過去最多となり、小規模事業場でもメンタル不調が多数発生しメンタルヘルスの重要性が高まる中、労働者数50人未満の事業場についてもストレスチェック実施を義務とする改正法令が25年5月14日に公布された。施行日は28年4月1日となり施行日から1年以内の実施が必要となる」

「ストレスチェック制度は、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに職場環境改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を主な目的としている。中災防では小規模事業場向けストレスチェック(厚生労働省マニュアル対応版ストレスチェック)について6月にサービスを開始した。実施者を選任できない小規模事業場のストレスチェック実施をサポートしていく」

――人員不足やコストアップなど直近の安全対策上の課題とは。

「2年前、『2024年問題』が社会的に大きな話題となった。24年4月から時間外労働の上限規制が適用され、建設業や運送業で人手不足などの問題が生じるといわれたが、危機的な大混乱に陥らなかったと受け止めている。深刻なドライバー不足や物流コストの上昇などは依然続いている一方、企業もただ手をこまねいているわけではなく、それに対処すべく様々な知恵や工夫で課題解決に努めている。例えば、建設の現場では、建設機械の遠隔操作システムなどの導入が進められている。人材不足やオペレータの高齢化が深刻化する建設業界で、オフィスや事務所にいながらにして現場作業を可能にするこうした技術は安全性の確保のみならず、業務効率の飛躍的な向上や人件費、交通費などのコスト削減にも大きく貢献すると期待されている。流通の現場では、荷待ち時間の削減や中継輸送の導入、モーダルシフト(トラックから鉄道や船舶への輸送手段の切り替え)、複数企業での共同配送など新たな物流体制の構築、強化につながっている」

「現場における人手不足は放置できない深刻な問題だが、見方を変えれば、こうしたピンチの状況が技術革新を生み出したり、これまで常識だった仕事のやり方を見直すきっかけになったりしていることも事実。物流業界ではAGVと呼ばれる、工場・倉庫の中を自動でものを運ぶ無人搬送車の導入が急速に進んでいる。人手不足の解消や作業者の負担軽減、さらには転倒事故等のリスク回避につながると期待されている。近年の人員不足や働き方の多様化に起因する安全衛生上の別の課題として、スポットワーク(いわゆるスキマバイト)における安全管理がある。就労が短時間化、単発化し、かつ就労者が流動化する中、安全教育や人材育成に時間をかけられないスポットワーカーの人たちの安全をどう確保するのか。その対応に苦労している現場も少なくないと聞く。市場の急拡大に伴い、スポットワーカーを雇用する現場、特に飲食、小売などのサービス業はさらに増えていくと思われるが、こうした新たな雇用形態や働き方が生み出す新たな労災リスクへの対応は、企業にとって重要な経営課題になるだろう」

――労働者人口減少と安全衛生との関係性は。

「高年齢労働者や外国人労働者の活用が進むとともに、DX化による省力化、効率化が進んでいる。このような中で、持続的な企業成長には、限られた人材が健康で安全に長く働ける職場環境づくりが重要であり、安全衛生管理は『人への投資』であると認識している」

――外国人労働者への安全衛生対策は。

「25年10月末時点の外国人労働者数は約257万人(対前年比11・7%増)、外国人を雇用する事業所数は37万1215所で前年比2万9128所増といずれも過去最多となる中、外国人労働者の労働災害が多発している状況にある。外国人労働者の労働災害は、未熟練といったリスクに、日本語の理解が不十分であることにより安全衛生教育の内容や、職場の危険の理解が不十分なまま作業を行うことによるリスクが加わることが大きいことが要因として考えられる。厚生労働省は、ピクトグラムを活用した安全標識や多言語ややさしい日本語の教材を作成し、無償で提供している。中災防においても、現場の表示標識や安全衛生教育で使われる用語100語を、ひらがな・ローマ字と10カ国語で紹介する図書や日本語試験を受けて来日した外国人労働者向けの新入者教育用小冊子を発行している」

――高年齢労働者への安全衛生対策は。

「高年齢労働者対策は単なる法令改正への対応ではなく、人材不足時代において、経験豊富な人材を安全に活用し続けるという経営課題そのものと考えている。中災防では、高年齢労働者の活躍を促進するための安全衛生対策セミナーといったセミナーの実施や講師派遣、リスクアセスメントの実施支援を含む安全衛生診断などの技術サービスの提供のほか、特設サイトや図書用品による周知啓発など、さまざまなかたちで全ての職場での高齢者の特性に配慮した職場づくりを支援している」

「今年の大会では、ダイバーシティなど分科会を企画し、高年齢者や女性が働きやすい職場環境への改善事例、外国人労働者自身による職場の改善事例などの発表も予定している。また、DX分科会を設置し、AIやIoTを活用した安全衛生に関する好事例を発表いただき、来場される皆様の企業において参考になるものと考えている」

――AI・ロボットの労災防止への活用策・未来像をどう考える。

「労働安全衛生の分野にも技術革新の波が押し寄せ、AI、IoT、VRなどのデジタル技術を駆使したさまざまな災害防止用の機器、システム、ツールなどが市場に投入されている。なかでもAI画像認識システムを用いた安全衛生管理の仕組みは、その最たるもの。人手不足で人員を配置できない現場などでAIを搭載したカメラが危険エリアへの人の侵入を感知したり、作業場で転倒した人を検知したり、作業員が保護具を正しく装着しているかを判定したりと、AIカメラが人に代わって安全確認を行う。数年前まで誰も予想できなかった技術で、その進歩の速さには驚かされる。先日も某自動車メーカーがAIで動くヒト型ロボットを製造現場に導入すると発表したと報じられた。工場の働き手が不足する中、熟練工のノウハウをAIに学習させ、技術継承することが狙いだそうで、歩行や手作業だけでなく、会話までこなすというから驚きだが、この試験導入が実現すれば、近い将来、AIロボットが生産ラインで働く人間に取って代わるという話も絵空事ではないかもしれない。なお、こうした高度なAI機能を搭載した製品に通底するのは自動化、省力化、効率化というコンセプトだが、背景にはやはり、企業で課題となっている生産性の向上や慢性的な人手不足の解消がある。AIはこうした課題を解決する優れた技術である反面、学習するデータの量や質によって精度に影響が出るとされ、信頼性に若干の課題がある。誤認識が発生するリスクも捨て切れないことから、個人的な見解としては、まだ人を補完する役割にとどまるのではないかと考えている。しかしながら、昨今の労働力人口の減少ペースやAIの急速な進化をみると、こうしたイノベーションは今後も加速度的に進み、これまでの労働安全衛生の常識を大きく変えていくのではないか」

――とりわけ必要性が増す熱中症対策、中小規模事業場の対応をいかに進めていくか。

「昨年6月の労働安全衛生規則改正により、夏季に屋外作業や高温環境での作業を行う事業者は、作業手順の作成と周知、緊急時対応フローの整備、報告体制の構築が罰則付きで義務化されている。水分・塩分補給の計画的実施や適切な休憩場所の確保に加え、仲間同士で体調チェックや声かけを徹底し、予防と初期対応の強化が求められる。全国産業安全衛生大会と同時開催する緑十字展で、道内の企業などが取り組んでいる熱中症対策の実例をパネル展示で紹介するコーナーを設ける。入場無料なので、ぜひ来場してほしい。熱中症対策については、厚労省のウェブサイトの一部を当協会で運営し、そのサイトを核として民間と政府、大学研究機関とで情報を共有化し、対応策を話し合う場を設ける予定にしている」

――今後の安全衛生大会の構想を。

「全国大会では、コロナ禍以降、全国の事業場の安全衛生担当者の皆さんが安全衛生情報を共有する機会を確保できるよう、現地開催とオンライン開催を併用したハイブリッド式にするなど、運営に工夫を凝らしてきた。コロナ収束後は、全国大会・緑十字展ともに多くの参加者・来場者が集まり、現地参加への意欲の高さを実感している。リアルでの熱気や圧倒的なライブ感の中で安全衛生に対する決意を新たにする重要な機会と再認識している。全国大会は、日本の労働安全衛生の水準を向上させる目的のために、年に一度、安全衛生に携わる人たちが一堂に会して安全衛生に関する情報、取り組み、知見を共有する場。その場だからこそ、『話し合うべきこと』、『話し合えること』があると思っている。特にこれからの産業現場を支えていく学生や研究者など若い方々に多く参加していただけるよう、『オープンカンパニー』などの取り組みを継続していくことで、世代や立場、地域、業界などの垣根を超え、さまざまな参加者が集う場にしたいと考えている。今後も全国大会と緑十字展の開催にあたっては、開催地やその時代にあった共通のテーマ、コンセプトを掲げ、一体的な運営を進めていく。日々進化する技術革新や新しい働き方・多様性に着目した発表、講演等を企画し、安全・安心な社会づくりをリードする、唯一無二のイベントを目指す。さまざまな変化が起こる不確実性の時代だからこそ、両イベントを間断なく実施し、労働安全衛生に関する確かな情報を確実に発信し続けていく。これこそが、われわれ中災防の使命だと強く感じている」

――昨年のタイ・バンコクでの安全大会の成果と今後の海外での大会開催予定は。

「タイの日系企業の安全衛生意識の向上や課題解決、担当者間のネットワーク構築への支援を目的に、昨年12月18―19日の2日間、タイ労働安全衛生促進協会(SHAWPAT)の協力、在タイ日本国大使館、ジェトロなどの後援のもと、タイ・バンコクで第1回タイ日系企業安全大会を開催した。日系企業の工場長や安全担当者等を中心に現地会場では約300人、オンラインでは約100人の合計約400人が参加した。日タイ双方からの専門家による基調講演、行政機関・大学などによる特別発表、日系企業による事例発表、パネルディスカッションなどが行われ、参加者は熱心に耳を傾けていた。日系企業を対象とした安全衛生に関するイベントはタイで初の試みだったが、両国の専門家の方々の協力を得て、安全衛生に対する知識や経験が共有され、まさしく『知恵の貸し借り』が実現できたと思っている。参加者からも『他社の活動事例を初めて聞いて自社の活動のブラッシュアップに役に立った』『交流会で他社の安全担当者とネットワークが構築できた』『日系企業を対象とした安全衛生のイベントがないので、知識を得る新たな場になった』などの声が聞かれた。来賓としてご参加いただいた在タイ日本大使館の西岡達史次席公使の挨拶の言葉が印象的だったので紹介する。『日本企業にとって従業員は家族という考え方があり、彼らの安全を守ることが社会的責任であり、信頼関係の基盤である』。このことは私たち日本人が大切にしているマインドである。従業員の安全と健康を守ることは企業の大切な責務であり、ひいては企業のさらなる発展にもつながる。このマインドがタイの日系企業にもより広く浸透することを願っている。今後は本大会を2年に1度開催することとした。第2回大会は来年12月14、15日にバンコク市内で開催する。併設する安全衛生保護具の展示会は展示の規模を広げ、多くの出展企業に参加いただき多様な展示会となるよう内容を充実させたい。また本年11月に第2回大会への橋渡しとなる無料の中間イベントを実施する。『タイと日本の違いから紐解く労働安全衛生マネジメント』と題して、中災防の専門家が日本の安全衛生の考え方を活用する際の留意点や事例などを紹介する。参加者同士のグループワークも予定しているのでタイ日系企業の経営者や工場長、安全担当者など多くの方々の参加を期待し、詳細は当協会のホームページをご覧いただきたい」(植木 美知也)



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