業界団体トップに聞く/線材製品協会/宮崎庄司理事長(神戸製鋼所副社長)/CN焦点、対応見極め/需要創出、供給網全体連携が鍵

業界団体トップに聞く/線材製品協会/宮崎庄司理事長(神戸製鋼所副社長)/CN焦点、対応見極め/需要創出、供給網全体連携が鍵
 ――線材製品が持つ機能や魅力をどのように捉えているか。

 「素材である線材から伸線工程を経て釘やコンクリート補強材、ばね、締結部材、ワイヤロープなどさまざまな部材となり自動車、建築、土木、エネルギー、物流、産業機械分野など、最終的な用途は社会のさまざまな場所に広がっている。素材、二次加工メーカー、部品メーカーと、サプライチェーン全体で連携して付加価値を造っていくという特長が魅力でもある」

 ――ここ10年の市場変化と足元の状況をどうみている。

 「これまでは景気の山谷とともに需要の増減があったが、人口減など産業構造の変化で国内市場は大きく変化した。今後、既存の分野で需要が大きく伸びていくことは考えにくい。その中で品質やコスト削減などお客さまの要求事項は高度化しており、線材製品もそれに応えて高強度化、加工性改善など進化してきた。直近では環境対応に対する要望が高まっているし、新しい需要を掘り起こすための新商品・新技術の提供が必要。数量を追う時代から、特長ある製品やソリューションでお客さまに価値を認めてもらうことが重要となる局面に変わってきた」

 ――線材製品業界が抱える課題とその対策について。

 「大きく三つある。1点目はコスト上昇だ。エネルギーコスト、人件費、物流費などの増加に対応していく必要がある。自助努力は行っているが、それだけでは吸収しきれない部分がある。あらゆる産業で共通の課題だと思うが、サプライチェーン全体で理解を深め、事業の継続のために動く必要がある。2点目は環境対応。業界にとっても環境保全は使命。生産過程だけでなく製品でもCO2の削減を行っていく。3点目は人材確保と技能継承だ。交代勤務する職場ということもあり、製造現場で勤務する人材の確保に苦慮している。良い人材を確保して育てていくことが事業の継続のために必須だ。これらはスケールが大きい課題であり、個社だけで解決するのが難しい部分もある。当協会では会員企業と現状を共有しながら、共通認識の醸成、業界全体の対応力向上に努めている。特に2026年はカーボンニュートラルに関するトピックに焦点が当たっている。技術的な課題点や壁が明らかになってきたことによって、各国の政策、個社の対応に変化が生じてきたタイミングをよく見極め、協会としての対応を決めていく」

 ――中・長期的なマーケットの見通しは。

 「国内の人口減少やこれまでの市場の長期トレンドを見る限り、既存市場は漸減していくとみるのが妥当だ。ただ、高度化するお客さまの要求に応えた新製品を造っていくことで、線材製品は大きな付加価値を生み出していくことができると考えている。電動化やカーボンニュートラルなどの新たなニーズがあり、社会課題解決に貢献できる領域は広がっている。付加価値を生み出すことができれば、成長機会はまだまだある。新しい市場、新しい商品も出てくるだろう」

 ――市場が変化する中、線材製品業界はどのように変わっていくとみているか。

 「これまで培ってきた技術資産やビジネス資産を組み合わせて、新しい需要の創出が進むだろう。そのためには、技術と技術のかけ合わせ、組み合わせが重要になり、また素材から製品までの長いサプライチェーン、縦の結びつきの連携が成功の鍵となる。縦のつながりが強固であることが線材製品業界の強みであり、これを生かして新たな価値創造が実現すると信じている」

 ――市場や産業界の変化にどのように備えるべきか。

 「生成AI、計測制御など、周辺技術が進歩している。積極的にビジネスに取り入れて生かすことが肝要だ。また、新たな発想、着眼のためには多様性が重要であり、今あるサプライチェーン間の交流をさらに活発にしていく必要がある。業界全体の課題に関しては、協会が会員企業をつなぐプラットフォームとして知見を共有し、業界全体で変化に対応していく」

 ――最後に、これから業界に入ってくる方にメッセージを。

 「鉄は古くからある材料だが、その可能性は今なお広がり続けている。世界がどれだけ変化しても社会の土台を支え続けている重要な素材は鉄鋼製品で、今後も鉄鋼業界は社会基盤を支える産業として進化し続けていく。特に線材製品は、社会のあらゆる場面で『つなぎ、支える』存在として人々の安全、安心を守るために重要。今後も『より強く、より軽く、より環境に優しく、より長持ちする』ように開発が進む。次の時代の線材製品業界を担う人材として、未来の社会を支える人材として、ともに挑戦していただきたい。ビッグデータを活用したDX推進など、最新技術を駆使した仕事を通じて社会貢献を実感できるのが線材製品業界だ」(大島 まい)

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