業界団体トップに聞く/日本磨棒鋼工業組合/山岡景一郎理事長/(池内精工社長)/存在価値広め体質強化/風通し良く、業界一丸で課題解決

業界団体トップに聞く/日本磨棒鋼工業組合/山岡景一郎理事長/(池内精工社長)/存在価値広め体質強化/風通し良く、業界一丸で課題解決
 ――磨棒鋼業界の歴史、特長や魅力を。

 「引き抜き加工による磨棒鋼の生産が開始されたのは1911年ごろと、100年以上の歴史を持つ。自動車部品関連を中心に建設機械や産業機械、半導体製造装置の一部に使用されるなど用途は幅広い。品質の高さが何よりの特長であり、寸法精度や表面品質、真直度に優れることから、部品加工になくてはならない存在であり、日本の製造業を支えてきた産業の一つと自負している」

 ――この10年間で市場の状況は大きく変化した。

 「10年前は磨棒鋼の生産量が全国合わせて年間に100万トンあったが、2020年のコロナ禍での世界経済の落ち込みにより19年に比べ20%程度、生産量が減少した。21年にはいったん戻ったが半導体問題などで自動車の生産が制限された。その後自動車関連で、戦略的に重要な地域だった中国でEV普及政策によりローカル車が市場を席巻し、日系自動車メーカーがシェアを奪われていった。また、その他の産業でも落ち込みが大きく21年から24年までで磨棒鋼の生産は16%減少した。25年度はようやく対前年比で横ばいと、底を打っており、これからの需要の回復を期待している」

 ――26年度の市場をどうみる。

 「自動車生産が前年に比べて回復すると予測しているが、中国での日系自動車メーカーの苦戦が続くことが予想される。中東情勢もまだまだ不安定なので、今後減産となる可能性は大いにあるだろう。一方で、半導体製造装置関連はデータセンターなどが動き出しており、今後上向くことが期待できる。磨棒鋼の生産量は昨年から横ばいか、微増となるのではないかとみている」

 ――磨棒鋼業界が抱える課題とは。

 「上昇が続くコストの製品価格への転嫁、そして人材の確保だ。適正取引の観点からも素材価格上昇分に加え人件費、エネルギー費用、副資材などの諸物価上昇分、またレアアース問題も横たわっており、これらを製品価格に反映させていく必要がある。人材についても次世代人材の確保は重要な課題となっている」

 ――課題への対策にどのように取り組んでいく。

 「定期的な理事会の開催、業界の抱えている課題について話し合いが行われている。そのおかげで、素材納入の際に発生する荷扱いに関する問題も、作業を自社化するなど、対策を行うことができた。また、経済産業省や各製鋼メーカーとの意見交換会を年1回実施しており、困り事を共有することができている。価格転嫁についてもこれまで一定の進展があった。そのほかにも、毎月各地域の販売、生産、在庫量などの統計を集計し各社の経営に役立てているほか、BCP対策も進めており、災害で被災した企業の代替生産を地区をまたいで行えるように協定を結んでいる」

 ――特に今年、重要視している課題は。

 「われわれの業界は、材料の購入先が製鋼メーカー、製品の販売先が自動車メーカーやティア1メーカーなど大企業の狭間に立たされる存在であり、業界主導でものごとを決定することが難しい。しかし、品質の高い磨棒鋼の製造には非常に高度な技術が必要であり、そのことを深く理解してもらう必要があると感じている。存在価値を広く認めていただき、強い体質づくりに取り組み続け、成長につなげていきたい」

 ――5―10年先の市場をどう予測する。

 「将来的な見通しは自動車、建機、産業機械、半導体関連などの状況に左右されるため、判断するのは難しいが、使用量の多い自動車では中国以外でEV化が鈍化したのは朗報と言える。モーターになると部品点数が減ってしまうからである。また、目先はアメリカでの関税問題や中東問題で先行きが不透明であるが、政権が変わり正常化すれば世界経済も大きく変わってくることが期待できる。いずれにしても自動車を中心とした各産業がグローバルで発展していくことが重要であり磨棒鋼業界の動向もこれに追従していくものと認識している」

 ――磨棒鋼の業界は将来どうなっていくのか。

 「これからは現状の生産量を基準として省力化投資が必要になって来るのではないかと思われる。AIやIoTを導入して設備の最適化や省人化を図り生産性を上げていくことが人手不足の克服にもつながり、製造の無駄を減らしていくことが今後のスタンダードになっていくのではないか。また近年は夏の猛暑によって現場での作業が厳しくなっている。空調服、スポットクーラーなどに加え、抜本的な対策を進められたら良いと思っている。人材の定着という意味で、『新人が夏を越せるか』というのはキーポイントの一つとなっている」

 ――磨棒鋼業界に入ってくる方々にメッセージを。

 「この業界は、いわゆる『縁の下の力持ち』であり、決して大きな所帯ではないものの、組合活動は活発で横のつながりができており、ほかにはない風通しの良さがある。業界が抱える問題意識を一緒に共有し、われわれだけではどうしても解決できないことは行政の力を借り、より良い業界にしていければと思う」(大島 まい)

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