2022年3月11日

LiB正極材 省ニッケル課題が急浮上

ニッケル相場急騰の影響がリチウムイオン電池(LiB)にも及びそうだ。車載用電池市場ではここ数年、高ニッケル仕様の正極材が主に採用されているが、ウクライナ危機後に約2倍に暴騰したニッケル相場を受け、電池メーカーなどで材料見直しの課題が急浮上。ニッケル不使用のリン酸鉄系へのシフトを後押しする可能性もあり、ニッケル離れが模索されそうだ。

 EV(電気自動車)向けLiBの正極材では、最も希少性の高いコバルトを削減しながら、高容量・高出力を向上させることが開発のターゲットとされてきた。2010年代前半は「NCM523」(ニッケル50%―コバルト20%―マンガン30%)などの三元系が主流だったが、米テスラモーターズが開発した「NCA811」(ニッケル80%―コバルト10%―アルミ10%)が登場して高ニッケル・省コバルト化が進んだ。

 コバルト分は3―5%まで絞られた一方で、正極材におけるニッケル構成比率は上昇。ステンレス向けに次ぐ柱として、LiBはニッケル需要の押し上げ役となった。ロンドン金属取引所(LME)のニッケル相場は電池需要拡大を背景に、昨年4月以降は月間平均が上昇。昨秋には7年ぶりにトン2万ドルに到達したが、高ニッケル正極材の仕様見直しが迫られるレベルではなかった。

 2月下旬のロシア軍によるウクライナ侵攻により、LME相場は急変。ニッケルは取引を停止した8日時点で現物セツルメント(前場売値)は4万8201ドルと2倍に暴騰した。計算上、正極材の金属コストに占めるニッケル比率は80%前後から90%以上まで急上昇した。

 相場暴騰から数日しか経過していないが、ある電池材料メーカー関係者は「コバルトを減らして引き上げてきたコストメリットが薄れ、高ニッケルの正極材は見直しに入るだろう。次世代正極材と言われていた系統には高ニッケル系が多かったが、その開発も軌道修正が求められるのでは」という見通しを話す。正極材はこれまでも構成元素や比率のマイナーチェンジを繰り返してきたが、ニッケル高騰で大幅な変更の可能性もある。

 ニッケル離れが予想されているのが、EV最大市場の中国。近年では、短距離走行で充電頻度が多いバスや宅配便トラック、さらに軽自動車などでに、ニッケルやコバルトを含まないリン酸鉄系LiBの普及が始まっていると言われている。今回のニッケル相場急騰を機に、電池切り替えが加速するシナリオも想定される。

 「ニッケルにとって電池は待望の新規需要だったが、この相場ではとても使われない。仮に下がっても不安定な金属のレッテルを貼られて、コバルトと同様に削減の対象になるのでは」(鉄鋼メーカー向けの電池スクラップを扱う問屋)という見方から、中長期的なニッケル使用量減少も予想されている。

 「自動車用電池は安全性と信頼性が重要視されるから、価格高騰ですぐに省・脱ニッケルにつながるかどうかはわからない」(正極材メーカートップ)という通り、電池向けニッケル需要がすぐに落ち込むことはない。しかし、相場高騰が定着することがあれば、LiB正極材のニッケル離れに向けた検討は避けられなさそうだ。

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