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2024.12.4
2020年6月17日
日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は16日、東京・茅場町の鉄鋼会館で開かれた会長就任後初の会見で将来的な内需と粗鋼生産について「間接・直接輸出の計6000万トンが外需。今後、その外需がどうなるかさまざまな懸念がある。建設や製造業向けの内需は少子高齢化で長期的に減っていく。粗鋼生産が(恒常的に)8000万トンに落ちていく見方があってもおかしくはない。常にそう需要をみていく」と述べ、個社の対応の必要を強調した。
国内のさらなる鉄鋼再編の可能性を問われた橋本会長は、「最大の脅威は中国。新型コロナウイルスの影響で中国有力ミルの相対的優位性が高まっていく」としつつ、「再編で答えが出るとは個人的には思っていない。抱えている余剰能力を徹底的に絞る。当社には2つの前提がある。協力会社含めて雇用は守り切る。工場を閉鎖する場合、別の工場で代替生産しお客に迷惑を掛けない。個社でやりきることが大事だ。集まって答えが出るわけではない」との認識を示した。
本年の全国粗鋼生産について、「新型コロナの問題が上期末で収束したとしても8000万トンを切ると予想したが、残念ながらそうなる可能性がある。内需は約6000万トン、海外への直接輸出4000万トンで粗鋼1億トンが成り立っている。上期は減産に時間を要するため、3600万―3700万トンとなる見込みだが、実力は3500万トン程度。下期4500万トンの計算で対前年の9割となるが、9割に戻るのは難しい。状況はそう進んでいる」と語った。
国内外で急減する需要への対応については、「鉄鋼各社が対策を行い、日本製鉄は国内15本の高炉のうち上期末までに6本を休止する。残る大型高炉もミニマム操業を行い、下方弾力性を追求している。各社の製品構成が異なり一概には言えない。電炉は比較的減産しやすいが、高炉は難しいということもある。今出されている対策を徹底することで、数量という意味では乗り切れると思う。高炉のバンキング(一時休止)はこれから効果が浸透する。追加対策が求められるということではない」との考え。
新型コロナの影響が広がり、高炉の一時休止を追加的に決めたことについて、「需要がある水準に落ちた時の対策を内部的、長期的にスタディし、対策を行っている。2月に構造対策を打ち出し時の競争の前提が新型コロナの影響によって、より厳しくなったことで対策を打った。先々を見ていろいろと考えていかなければならない」と語った。
中国市場の状況に触れ、「公共投資に加え、製造業も復調し、粗鋼生産は過去最高の水準。ただ、日本の鉄鋼業は中国の需要にさほどアクセスできず、恩恵にあずかれない。一方で中国は鉄鉱石を大量に消費し、鉄スクラップの輸入も増える可能性がある」とし、「世界で唯一需要が強く、粗鋼生産は増えているが、需要に応えきれていない。それと電炉が伸びていない。20年に電炉鋼の比率を20%に上げる計画だったが、年約1億トンと10%程度にとどまり、高炉が忙しく生産している。使用する鉄鉱石の8割以上を輸入しているので鉄鉱石の価格が上がっているが、この状態がずっと続くことはない。よく注意してみる必要がある」と今後も中国の動向を踏まえた対応が重要とした。
リーマン・ショックなどこれまでの危機と異なる点について、「1つは旗艦工程である上工程と電力や水などの設備の老朽更新に資金がかかるが、数量が増えたり、直接収益が取れるわけではない。かつてはそこまで設備が古くはなかった。2つめは中国の力がついてきたこと。製鉄所は20年経つと償却が進み、現場の従業員の熟練度が上がる。過去と比べて中国ミルの力が強くなっている。ビッグデータの時代に国営企業のデータがどう北京に集められているかを考えると、中国の脅威は従来と比べ物にならない。(日本に)極めて近いところに10倍の大きさを持ち、質的にも強い競争相手がいる。過去になかったことであり、難しさでもある」と語り、「表面的な現象が原料高・製品安に表れている」とした。
日本製鉄の社長として新型コロナ後の個社の成長戦略について答え、「新型コロナがあってもなくても需要の伸びるところ、あるいは技術と商品力が生きるところに経営資源を集中させる戦略に変わりはない。新型コロナによって需要環境は一段と厳しくなるのでその戦略を加速、徹底させる。国内の生産体制の立て直しははっきりしている。中国でも製造できるような低採算の注文は減らさざるを得ない。低採算の注文に対し依存度の高い設備をスリム化していく。当社でしか製造できない高級品について数量、能力を増やし、注文の構成を高度化する。高級鋼材を極力、集中生産してコストを下げていく」と説明。
成長戦略の焦点となる海外展開については、「世界の鉄鋼メーカーのなかでも先頭を切って進めてきており、引き続き力を入れていく。技術のコアは上工程から下工程まで一貫して製造することで技術開発や商品の高度化が可能となる。海外展開を深化させるためにも一定量の一貫生産を国内でやり続けないと開発力を中心とした技術力を維持できない。商品と設備の選択と集中を徹底し、世界で通用する高級鋼材のウエートを上げ、生産を集約し、国内に一定規模の一貫生産を残すことでマザーミルとして海外展開を支える」との考えを述べた。
国内のさらなる鉄鋼再編の可能性を問われた橋本会長は、「最大の脅威は中国。新型コロナウイルスの影響で中国有力ミルの相対的優位性が高まっていく」としつつ、「再編で答えが出るとは個人的には思っていない。抱えている余剰能力を徹底的に絞る。当社には2つの前提がある。協力会社含めて雇用は守り切る。工場を閉鎖する場合、別の工場で代替生産しお客に迷惑を掛けない。個社でやりきることが大事だ。集まって答えが出るわけではない」との認識を示した。
本年の全国粗鋼生産について、「新型コロナの問題が上期末で収束したとしても8000万トンを切ると予想したが、残念ながらそうなる可能性がある。内需は約6000万トン、海外への直接輸出4000万トンで粗鋼1億トンが成り立っている。上期は減産に時間を要するため、3600万―3700万トンとなる見込みだが、実力は3500万トン程度。下期4500万トンの計算で対前年の9割となるが、9割に戻るのは難しい。状況はそう進んでいる」と語った。
国内外で急減する需要への対応については、「鉄鋼各社が対策を行い、日本製鉄は国内15本の高炉のうち上期末までに6本を休止する。残る大型高炉もミニマム操業を行い、下方弾力性を追求している。各社の製品構成が異なり一概には言えない。電炉は比較的減産しやすいが、高炉は難しいということもある。今出されている対策を徹底することで、数量という意味では乗り切れると思う。高炉のバンキング(一時休止)はこれから効果が浸透する。追加対策が求められるということではない」との考え。
新型コロナの影響が広がり、高炉の一時休止を追加的に決めたことについて、「需要がある水準に落ちた時の対策を内部的、長期的にスタディし、対策を行っている。2月に構造対策を打ち出し時の競争の前提が新型コロナの影響によって、より厳しくなったことで対策を打った。先々を見ていろいろと考えていかなければならない」と語った。
中国市場の状況に触れ、「公共投資に加え、製造業も復調し、粗鋼生産は過去最高の水準。ただ、日本の鉄鋼業は中国の需要にさほどアクセスできず、恩恵にあずかれない。一方で中国は鉄鉱石を大量に消費し、鉄スクラップの輸入も増える可能性がある」とし、「世界で唯一需要が強く、粗鋼生産は増えているが、需要に応えきれていない。それと電炉が伸びていない。20年に電炉鋼の比率を20%に上げる計画だったが、年約1億トンと10%程度にとどまり、高炉が忙しく生産している。使用する鉄鉱石の8割以上を輸入しているので鉄鉱石の価格が上がっているが、この状態がずっと続くことはない。よく注意してみる必要がある」と今後も中国の動向を踏まえた対応が重要とした。
リーマン・ショックなどこれまでの危機と異なる点について、「1つは旗艦工程である上工程と電力や水などの設備の老朽更新に資金がかかるが、数量が増えたり、直接収益が取れるわけではない。かつてはそこまで設備が古くはなかった。2つめは中国の力がついてきたこと。製鉄所は20年経つと償却が進み、現場の従業員の熟練度が上がる。過去と比べて中国ミルの力が強くなっている。ビッグデータの時代に国営企業のデータがどう北京に集められているかを考えると、中国の脅威は従来と比べ物にならない。(日本に)極めて近いところに10倍の大きさを持ち、質的にも強い競争相手がいる。過去になかったことであり、難しさでもある」と語り、「表面的な現象が原料高・製品安に表れている」とした。
日本製鉄の社長として新型コロナ後の個社の成長戦略について答え、「新型コロナがあってもなくても需要の伸びるところ、あるいは技術と商品力が生きるところに経営資源を集中させる戦略に変わりはない。新型コロナによって需要環境は一段と厳しくなるのでその戦略を加速、徹底させる。国内の生産体制の立て直しははっきりしている。中国でも製造できるような低採算の注文は減らさざるを得ない。低採算の注文に対し依存度の高い設備をスリム化していく。当社でしか製造できない高級品について数量、能力を増やし、注文の構成を高度化する。高級鋼材を極力、集中生産してコストを下げていく」と説明。
成長戦略の焦点となる海外展開については、「世界の鉄鋼メーカーのなかでも先頭を切って進めてきており、引き続き力を入れていく。技術のコアは上工程から下工程まで一貫して製造することで技術開発や商品の高度化が可能となる。海外展開を深化させるためにも一定量の一貫生産を国内でやり続けないと開発力を中心とした技術力を維持できない。商品と設備の選択と集中を徹底し、世界で通用する高級鋼材のウエートを上げ、生産を集約し、国内に一定規模の一貫生産を残すことでマザーミルとして海外展開を支える」との考えを述べた。
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