――人財戦略の位置付けと具体的な取り組みについて。
「鋼材需要が漸減傾向にある国内で勝ち残り、成長の源泉と位置付ける海外で事業を展開する上で、人財は重要なキーワードだ。人財強化や技術伝承を目的に、2022年4月、人事総務部内に人材開発室を新設した。若手、管理職、ベテラン向けの定期研修や海外トレーニー制度を企画・運営している。現中計では人的資本投資の一環として教育研修投資を拡充し、1人当たり15万円程度を目安に社内外の研修へ投じている。若手が主体となり、社内制度や福利厚生をまとめたガイドブックを制作するなど、エンゲージメント向上にも努めている」
――人財戦略の一環として、交流制度「おむすび」を始めた。
「制度は24年秋に始めた。現場を含む社員が他事業所・他部門を経験する仕組みで、対象は事務系、技術系を問わない。期間は1日、2―3日、1週間、最長で3カ月程度。異動ではなく、短期研修や実務交流として他の現場を見てもらう。25年度までに44件を実施し、参加者は、派遣側のみで延べ91人となった。事業所間でつながり、刺激や学びを得られることから、現場の反応も前向きだ。個別の交流を重ね、グループ総合力の強化につなげたい」
――デジタルトランスフォーメーション(DX)やAIも人財戦略に関わる。
「現時点で、人の仕事をAIに大きく置き換える段階ではない。ただ、作業の一部を代替し、現場の負荷を下げながら生産性を高める取り組みは進む。設備の振動、温度、音などをデータで捉え、故障前に対応する予兆保全が一例だ。熟練者が『音が違う』と感じ取る技術を次世代へ伝えることは容易ではない。ビッグデータやAIを活用すれば、こうした技能の一部を仕組みに落とし込める可能性がある」
――海外事業を支える人財については。
「海外で活躍できる人財を増やさなければならない。大型投資や新工場の立ち上げには、プロジェクトを推進する人員が必要になる。同時に、本人にとって得難い成長機会でもある。海外の大型プロジェクトは大変なことも多いが、苦労しながら仕事を仕上げる経験は人を大きく育てる。新しい環境で仕事をし、視野を広げる機会をつくりたい」
――ベトナムの事業基盤も人財戦略に生かす。
「国内では、高卒の生産技術職を中心に応募者数、世代の母集団とも減っている。改善や省人化を進める一方、ベトナムでの事業基盤を人財戦略に生かせば、当社ならではの競争優位につながる可能性がある。現地で製造現場を経験した人に日本で活躍してもらうことも、制度面を含めて検討している」
「すでに技術系総合職では、ホーチミン市工科大学出身者を数年前から採用しており、現在は3人となった。日本人の新卒総合職と同様に研修を経て、国内事業所でOJTを受けている。将来はベトナムに帰国し、現地グループ会社の管理職として活躍する可能性もある。日本とベトナムの技術連携を深める役割も期待している」
――採用では「エシカルスチール」の発信も生かす。
「鉄鋼業はBtoBであり、若い人たちにとって当社や業界を知らないということがある。一方、学生に志望理由を聞くと、環境やリサイクルに関われる点を挙げる人は多い。企業が環境をどう考え、社会にどう貢献しているかは、就職活動でも重要な価値軸だ。エシカルスチールを通じ、当社事業の社会的な意義を分かりやすく伝えていく」
――「エシカル」には社内の意識向上などの効果も期待する。
「CM放映には、需要家や社会への認知向上、採用に加え、社員と家族に誇りを持ってもらいたいという意図もある。エシカルは事業価値や非価格競争力だけでなく、社内の品格、働く環境、採用力、定着力の向上にもつながる。各自が『それってエシカルですか』と考えることが、当社にとっての本質的なコンプライアンスにつながる。しっかりと社内への浸透を図りたい」
――次世代の社員に期待することは。
「自分の可能性を閉じず、挑戦し続けてほしい。挑戦とは、すでにあるものを再現することではない。まだ世の中にないもの、簡単には成功しないものに向き合い、苦労しながら前に進むことだ。共英製鋼のDNAは『スピリット・オブ・チャレンジ』。若い世代には海外にも目を向け、自らの可能性を広げながら新しい世界に挑んでほしい。それが本人と会社、双方の成長につながると信じている」(早間 大吾)

























