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2024.10.3
2016年9月7日
財界トップインタビュー 「関西経済と鉄鋼業」(中) 関西経済連合会副会長(神戸製鋼所相談役)佐藤廣士氏 航空機産業の基盤強化
――関経連としては「ものづくり産業の振興」にも取り組んでいる。
「域内における総合的なモノづくり力を強化するため、中小・中堅企業を支援し、基盤技術に関わる人材育成に取り組んでいる。全国初の取り組みとして府県域を超えてモノづくり産業を支援する『関西支援機関ネットワーク』を本年7月に立ち上げた。域内の技術力をネットワークで結びつけるのが狙いで、関経連、産業技術総合研究所関西センター、大阪府立産業技術総合研究所などの公設試験研究機関10団体、関西文化学術研究都市推進機構など産業支援機関3団体で構成している。産業支援機関と公設試験研究機関、関経連の人材を『産総研イノベーションコーディネーター』として登録し、新製品・サービスの実用化・事業化に向けた技術等の情報を共有。『インダストリー4・0(第4次産業革命)』のような発想も含め、それぞれが得意とする機能を組み合わせ、市場調査から技術開発、製品化、事業化までのモノづくりの一連のプロセスの総合的な支援を行っていく。中小・中堅企業からの相談に応え、大手企業とは共同研究などで連携していく」
――どのような産業を強化していくのか。
「成長期待産業の一つが航空機産業。近畿経済産業局に中心になってもらって、『関西航空機産業プラットフォーム』を本年6月に立ち上げた。域内には川崎重工業、三菱重工業、新明和工業、島津製作所、住友精密工業、神戸製鋼所などコアとなる大手の川下企業がある。中小・中堅企業の機械加工や掘削、表面処理、接合といった域内のモノづくり力をサプライチェーンで結び、関西における航空機産業基盤として強化していく。極めて高い精度を求められるため、品質保証能力の強化、高度人材の育成、先進的な素材・加工方法の研究開発などの各方面からも支援していく」
――技術基盤を支える人材育成も重要な課題。
「人口が減る中で、技術系人材の確保・育成はとても重要。ところが大学には冶金学など伝統的なメタラジーを扱う教室が少なくなっている。そこで「金属・材料工学」プログラムを12年度に立ち上げた。対象は研究開発や生産の現場で活躍する入社2年目以降の技術者。モノづくりに欠かせない金属・材料工学の基礎を体系的に習得するためのプログラムを組んでいる。関経連などで開講しており、16年度は鉄鋼・非鉄製錬、状態図、熱力学、鋳造工学、溶接工学、塑性加工学などの15講義を10月に行う予定。講師は大阪大学、大阪府立大学、関西大学、近畿大学などから派遣してもらっている。毎年、内容の改善を重ねており、アンケート結果によると受講生の満足度は高く、経済産業省の『ものづくり白書』に掲載されるなど国からも高い評価を得ている。プログラムを通じて講師・受講者間の新たなネットワークを構築する狙いもある。4年間で143人が受講しており、修了生の交流の機会などを設けて人的ネットワークの拡大につなげ、オープンイノベーションのきっかけとすることも検討している。インダストリー4・0、AI、IoT、ビッグデータといったキーワードを取り込み、人材の高度化を加速する」
――労働人口の減少自体も課題。
「関西は首都圏や中部圏に比べて人口減少のスピードが速い。女性の労働力率も極めて低い。2040年までの人口シミュレーションを見ると、東京が約6%減の予想に対して、大阪府は約16%もの大幅減となる。女性の労働力率はトップの北陸が約73%だが、関西は約64%で最も低い。経済発展には労働力確保が不可欠で、女性、高齢者や外国人の活躍などダイバーシティが大きな課題となっている。関経連では『ダイバーシティ研究会』を設けて議論を重ねた結果、企業における女性の活躍の場を広げるには『就業継続・キャリアアップ』『管理職・役員への登用』が重要であると考え、『男性の意識改革』『女性のネットワーク構築』『長期的な視点での働き方改革』の3つの観点から、具体的な取り組みを推し進めている」
――活動内容を。
「働き方の意識改革を促すための報告書をまとめた。就業継続や退職後の職場復帰を可能とする短時間勤務や在宅勤務などの多様な働き方、地域限定社員や勤務時間限定社員などの多様な正社員についての事例を掲載している。ライフイベントに直面する30歳前後の働く会員企業の女性にも配布している」
――海外派遣プログラムもある。
「関西企業で活躍する中堅リーダーを米国に派遣し、女性のリーダーシップについて学ぶ機会を提供するもので、駐大阪・神戸米国総領事館とともに14年度から実施している。16年度は岩谷産業、オムロン、住友電気工業、タツタ電線、東洋紡、丸一鋼管などから女性5人、男性2人の7人が参加。15年度には神戸製鋼所からも技術開発本部材料研究所から1人が参加した。報告会での発表を聞いたが、多くの収穫を得て帰ってきたようだ。この米国派遣プログラムを受け、働く女性のリーダーシップを醸成するため『あけびネットワーク』と呼ぶ交流の場を15年度に新設している」
(谷藤 真澄)
「域内における総合的なモノづくり力を強化するため、中小・中堅企業を支援し、基盤技術に関わる人材育成に取り組んでいる。全国初の取り組みとして府県域を超えてモノづくり産業を支援する『関西支援機関ネットワーク』を本年7月に立ち上げた。域内の技術力をネットワークで結びつけるのが狙いで、関経連、産業技術総合研究所関西センター、大阪府立産業技術総合研究所などの公設試験研究機関10団体、関西文化学術研究都市推進機構など産業支援機関3団体で構成している。産業支援機関と公設試験研究機関、関経連の人材を『産総研イノベーションコーディネーター』として登録し、新製品・サービスの実用化・事業化に向けた技術等の情報を共有。『インダストリー4・0(第4次産業革命)』のような発想も含め、それぞれが得意とする機能を組み合わせ、市場調査から技術開発、製品化、事業化までのモノづくりの一連のプロセスの総合的な支援を行っていく。中小・中堅企業からの相談に応え、大手企業とは共同研究などで連携していく」
――どのような産業を強化していくのか。
「成長期待産業の一つが航空機産業。近畿経済産業局に中心になってもらって、『関西航空機産業プラットフォーム』を本年6月に立ち上げた。域内には川崎重工業、三菱重工業、新明和工業、島津製作所、住友精密工業、神戸製鋼所などコアとなる大手の川下企業がある。中小・中堅企業の機械加工や掘削、表面処理、接合といった域内のモノづくり力をサプライチェーンで結び、関西における航空機産業基盤として強化していく。極めて高い精度を求められるため、品質保証能力の強化、高度人材の育成、先進的な素材・加工方法の研究開発などの各方面からも支援していく」
――技術基盤を支える人材育成も重要な課題。
「人口が減る中で、技術系人材の確保・育成はとても重要。ところが大学には冶金学など伝統的なメタラジーを扱う教室が少なくなっている。そこで「金属・材料工学」プログラムを12年度に立ち上げた。対象は研究開発や生産の現場で活躍する入社2年目以降の技術者。モノづくりに欠かせない金属・材料工学の基礎を体系的に習得するためのプログラムを組んでいる。関経連などで開講しており、16年度は鉄鋼・非鉄製錬、状態図、熱力学、鋳造工学、溶接工学、塑性加工学などの15講義を10月に行う予定。講師は大阪大学、大阪府立大学、関西大学、近畿大学などから派遣してもらっている。毎年、内容の改善を重ねており、アンケート結果によると受講生の満足度は高く、経済産業省の『ものづくり白書』に掲載されるなど国からも高い評価を得ている。プログラムを通じて講師・受講者間の新たなネットワークを構築する狙いもある。4年間で143人が受講しており、修了生の交流の機会などを設けて人的ネットワークの拡大につなげ、オープンイノベーションのきっかけとすることも検討している。インダストリー4・0、AI、IoT、ビッグデータといったキーワードを取り込み、人材の高度化を加速する」
――労働人口の減少自体も課題。
「関西は首都圏や中部圏に比べて人口減少のスピードが速い。女性の労働力率も極めて低い。2040年までの人口シミュレーションを見ると、東京が約6%減の予想に対して、大阪府は約16%もの大幅減となる。女性の労働力率はトップの北陸が約73%だが、関西は約64%で最も低い。経済発展には労働力確保が不可欠で、女性、高齢者や外国人の活躍などダイバーシティが大きな課題となっている。関経連では『ダイバーシティ研究会』を設けて議論を重ねた結果、企業における女性の活躍の場を広げるには『就業継続・キャリアアップ』『管理職・役員への登用』が重要であると考え、『男性の意識改革』『女性のネットワーク構築』『長期的な視点での働き方改革』の3つの観点から、具体的な取り組みを推し進めている」
――活動内容を。
「働き方の意識改革を促すための報告書をまとめた。就業継続や退職後の職場復帰を可能とする短時間勤務や在宅勤務などの多様な働き方、地域限定社員や勤務時間限定社員などの多様な正社員についての事例を掲載している。ライフイベントに直面する30歳前後の働く会員企業の女性にも配布している」
――海外派遣プログラムもある。
「関西企業で活躍する中堅リーダーを米国に派遣し、女性のリーダーシップについて学ぶ機会を提供するもので、駐大阪・神戸米国総領事館とともに14年度から実施している。16年度は岩谷産業、オムロン、住友電気工業、タツタ電線、東洋紡、丸一鋼管などから女性5人、男性2人の7人が参加。15年度には神戸製鋼所からも技術開発本部材料研究所から1人が参加した。報告会での発表を聞いたが、多くの収穫を得て帰ってきたようだ。この米国派遣プログラムを受け、働く女性のリーダーシップを醸成するため『あけびネットワーク』と呼ぶ交流の場を15年度に新設している」
(谷藤 真澄)
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