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2024.12.4
2020年7月14日
「未来へ見出す活路 廃棄物行政の針路を聞く」環境省 環境再生・資源循環局局長 山本昌宏氏 小型家電リサイクル、参加しやすい体制へ
政府がこのほど発刊した2020年版の環境白書は、近年多発する気象災害などを「気候危機」と表現する。危機を克服するにはライフスタイルの変革が必要と指摘し、一つの事例として資源消費のあり方を示した。これまでのような一次資源に大きく依存する経済構造ではなく、限りある資源を再利用する循環型社会の構築が求められる。環境省環境再生・資源循環局の山本昌宏局長に日本の廃棄物行政の針路を聞いた。
――まず最初に廃棄物処理に関する国際動向を。
「世界的に、持続的な社会を構築する観点からサーキュラー・エコノミー(循環経済)の重要性がクローズアップされてきている。廃棄物処理に関しては従来から3R(リユース、リデュース、リサイクル)の取り組みが進められているが、国際的にもより資源循環を意識した取り組みになってきた。また海洋プラスチックが地球規模で問題となっており、それにどう対応していくのかが大きな課題になっている。特に途上国では廃棄物の管理自体が不十分なため、資源循環を意識した取り組みがさらに重要になる。中国の輸入規制により質の悪い廃棄物の越境移動をより厳格に管理していく必要も生じている。これに伴って日本国内では廃棄物の処理体制を再構築することが求められる」
――廃棄物処理の地域的な格差は。
「欧州発のサーキュラー・エコノミーの考え方が急速に世界に広がっており、それに米国やカナダなどが影響を受けている。アジア諸国でも経済発展に伴って昔よりも廃棄物処理の問題がクローズアップされてきている。単純に廃棄物を処理するだけではなく、焼却して発電するなどのエネルギー回収といった温暖化対策を意識した取り組みが増えてきた。そしてアフリカでも経済活動が盛んになるに連れてゴミの量が増えており、特に都市部の廃棄物問題が大きな課題になっている」
――中国の廃棄物輸入規制が日本に及ぼした影響を。
「中国をはじめとするアジア諸国は廃プラスチックや雑品スクラップなどさまざまな廃棄物の受け皿になっていた。有価物取引で廃棄物処理に関連する規制が不十分だったからだ。しかし中国の輸入規制導入以降は、やはり日本国内の廃棄物関連の業界に大きな影響を与えている。廃プラスチックを例にとると、2017年には年間140万トン程が輸出され、その半分以上が中国本土へ向かった。それが19年になると中国の輸入規制の影響を受け90万トン弱まで減少した。廃プラスチックだけではなく雑品スクラップなども含め、今までリサイクルを輸出に頼っていたいろいろな廃棄物の流れが大きな影響を受けた。そして日本国内の廃棄物処理施設の廃プラスチック保管量が増加し、保管基準を超過する事業所も出てきた。中国の輸入規制の背景には環境意識の高まりがある。廃棄物をリサイクルする際に国内で環境問題を引き起こすことに厳しい目を向け始めた」
――中国に続いて東南アジア諸国でも輸入規制が相次ぐ。
「そこは本当に影響が大きい。輸出相手国でバーゼル条約に基づくシップバックが起きてしまうと、日本に戻ってきたものの処理が問題になる。そこで廃棄物の管理をこれまで以上にしっかりするため、国内のバーゼル法と廃棄物処理法を改正して、いわゆる雑品スクラップのベースになっているヤードに規制をかけた。さらにプラスチック廃棄物についてはバーゼル条約の規制対象に加えることが昨年決定した。来年1月1日の発効を控えているため、それまでに国内法のバーゼル法できちんと管理できるよう準備している。法整備と合わせて廃棄物の受け皿も必要になるため、大きな予算を投じて国内のリサイクル関連施設の整備支援を併せて実施している」
――国内の廃棄物処理施設や最終処分場がひっ迫しており処理費用も高騰している。これの対策は。
「自治体と廃棄物処理業者にアンケート調査を行い継続的に状況把握に努めている。その結果、保管量がかなり増えている。事業者によっては保管基準を超過している事例が出てきており深刻な状況と理解している。直近で実施した今年2月末時点の状況調査では、新型コロナウイルスの影響で事業活動全体が抑制された可能性もあるが、保管量の増加傾向が若干緩和している。しかし処理費用は焼却費と最終処分費が高騰しており、その影響を受けて収集運搬も含めて処理費用全体が値上がりしている」
「対応策の一つは廃棄物の受け皿を育てるための施設整備にしっかり予算をつけて応援することだ。都道府県が独自に設定している産廃の搬入規制を撤廃するなどの改善要請も行い、ひっ迫する廃プラスチックを円滑に処理できるようにしたい。処理費用の増大については、排出事業者に処理費用が高騰している現状を認識してもらい、しっかり対価を払っていただくよう排出事業者への働きかけを環境省として行っていく。加えて優良事業者の保管量の上限を緩やかにする法令の改正も行った。このようにいろいろな対策を総合的に講じ処理が滞らない、あるいは不適正な処理につながらないようにしていく」
――各種リサイクル法の評価や課題、改善点など。まずは自動車リサイクルから。
「自動車リサイクル法は02年の施行から約20年が経過して非常に成熟した仕組みになっている。ただし、これからのサーキュラー・エコノミーなど循環型社会を考えた時には、再生材の利用促進やシュレッダーダスト(ASR)の削減などで、さらに高度なリサイクルが求められる。そのため、例えば再生材を利用している場合にはリサイクル料金を割り引く制度や、残渣としてASRとなってしまうものを処理工程全体で減らすための方法など、自動車購入時に前払いしていただいているリサイクル料金を上手くインセンティブとして活用するための仕組みなどを自動車工業会などと議論している。車の設計段階からリサイクルしやすい環境配慮設計なども進めている」
――小型家電も含めた家電リサイクル法についてはどうか。
「家電リサイクル法の対象である廃家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機)はしっかり処理されており再商品化率も法定基準を上回っている。また不適正なルートに乗っているものはバーゼル法や廃棄物処理法を改正してヤード規制を実施した。その効果はもう少し時間がたたないと正確には把握できないが、少なくとも直近18年のデータを見ると回収率や回収量がかなり増えており正規ルートで適正に処理されてきている」
「小型家電リサイクルについては制度として定着してきており、参加する自治体が増えてきた。そのプロセスの中で東京オリンピック・パラリンピックの全メダルをリサイクル金属で作る『都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト』を展開。皆様にご協力をいただき世界初の試みが成功している。この関係で小型家電リサイクル制度に参加する市町村も増えた。しかし参加自治体が増えても回収目標の14万トンには届いていない。制度の使い勝手が十分ではなかったのかもしれず、さらに回収ルートや回収方法を改善しないといけない。実際にオリンピック・パラリンピックの会場でリサイクル金属を使ったメダルが授与されれば、それを支えた小型家電リサイクル制度への理解が深まるだろう。こうした機会を上手く活用しながら『アフターメダルプロジェクト』として引き続き普及・啓発活動を展開し参加者を増やす取り組みが必要だ。残念ながら足元は有償だった小型家電が逆有償になる事例が出てきており、市町村の取り組みが消極的になりやすい。こうした状況を勘案しながら市町村が参加しやすい体制を構築していきたい」
――家電も自動車のようにリサイクル料金を前払いにすれば、不法投棄が減って回収量の増加が期待できるという意見は多い。
「たしかにリサイクル料金が後払いのため不法投棄につながる可能性があるという指摘はある。自治体からも前払いに制度改正できないかという指摘もいただいており、検討課題として議論を続けている。だが今のスキームの中でも家電メーカーには不法投棄対策や災害対応などでご協力いただいていることに加え、制度をいったん後払いで整えた後に前払いに変更するのは容易ではない。今の後払い制度の中でも、回収率は向上してきており、不法投棄や不適正処理、海外への不適正な流れはある程度抑えることができている。それをしっかりやりながら、今後の制度見直しのタイミングで必要に応じて議論していきたい」
――改正廃棄物処理法が施行された後も、全国で雑品ヤードの火災が相次いでいる。
「法律の運用に基づく指導でしっかり対処していきたい。ヤードだけではなく、処理施設でも火災が増えていることを懸念している。ヤード火災もそうだがリチウムイオン電池が発火原因と考えられるケースが多い。リチウムイオン電池は今後さらに増えていくので、経済産業省とも意見交換しながら対応していく。またここ数年で登場した製品で加熱式たばこが発火原因となる事例が発生している。こうした新製品も含めて電池が通常の廃棄物に混入しないよう、またヤードに持ち込まれる家電系のものも含めて対策を徹底する必要がある」
――来年1月1日に発効を控えるバーゼル条約改正について。
「国際的な問題を引き起こす可能性のあるものはしっかり規制する必要がある。今回の改正ではプラスチックの廃棄物を管理することが決まり、シップバックになるようなプラスチック廃棄物が日本から出ていかないようにしなければならない。一方で原材料として再利用できる廃プラスチックの輸出は妨げないようにする。重要な事は規制当局として輸出の妥当性を現場で判断できないものが一番困る。したがって現在行われている『廃プラスチックの輸出にかかるバーゼル法該非判断基準策定のための検討会』では、現場が混乱しないで運用できる合理的なガイドラインを策定する。来年1月まであまり時間がないため、今夏にもパブリックコメントにかけて内容を整理して固めた上で、年内に周知期間を置くというスケジュールで進める」
――国内で資源循環体制を確立する上での課題は何か。
「今一番問題になっているのがプラスチックだ。容器包装リサイクル法や自動車リサイクル法、小型家電、家電のリサイクル法など関連する法制度の中である程度はカバーされている。しかしその枠組みに入らないプラスチックを個別の物品ごとにリサイクルするには限界がある。金属やプラスチックなど素材全体をとらまえた施策が大事になる。そのために政府は昨年5月にプラスチック資源循環戦略をまとめた。30年までのマイルストーンを掲げ、目標達成のための施策を具体化していく。先行して7月からレジ袋の有料化を実施したが、それ以外の施策を具体化するための検討会を5月に立ち上げた。夏までに具体策を整理して年度内に結論を得る。プラスチックの資源循環を一つのモデルとして、金属やその他の素材など総合的な取り組みに横展開をしていきたい」
――資源循環体制の確立で日本経済はどう変わる。
「持続可能な社会を構築するためにはサーキュラー・エコノミーという資源を循環させる経済構造に転換しなければならない。そのためにはバイオマスプラスチックの導入のように環境負荷が少なくリサイクルしやすい素材に転換したり、素材の水平リサイクルなどが重要になる。こうした取り組みを進めることで新しい産業が創出される。循環型社会に適した産業やイノベーションも期待できる」
――最後に日本の廃棄物リサイクルシステムの国際協力の成果や今後の取り組みを。
「アジア地域では『アジア太平洋3R推進フォーラム』を開催。国際協力機構(JICA)などとも連携しながら技術協力により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援している。経済成長に伴ってゴミ問題が深刻化してきているが、廃棄物の焼却による発電や高度な廃棄物処理ができるような国が育ってきている。アフリカでも『アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)』という新たな支援スキームを構築し、廃棄物をしっかり管理して衛生的に埋立するような支援を行っている」(増田正則)
――まず最初に廃棄物処理に関する国際動向を。
「世界的に、持続的な社会を構築する観点からサーキュラー・エコノミー(循環経済)の重要性がクローズアップされてきている。廃棄物処理に関しては従来から3R(リユース、リデュース、リサイクル)の取り組みが進められているが、国際的にもより資源循環を意識した取り組みになってきた。また海洋プラスチックが地球規模で問題となっており、それにどう対応していくのかが大きな課題になっている。特に途上国では廃棄物の管理自体が不十分なため、資源循環を意識した取り組みがさらに重要になる。中国の輸入規制により質の悪い廃棄物の越境移動をより厳格に管理していく必要も生じている。これに伴って日本国内では廃棄物の処理体制を再構築することが求められる」
――廃棄物処理の地域的な格差は。
「欧州発のサーキュラー・エコノミーの考え方が急速に世界に広がっており、それに米国やカナダなどが影響を受けている。アジア諸国でも経済発展に伴って昔よりも廃棄物処理の問題がクローズアップされてきている。単純に廃棄物を処理するだけではなく、焼却して発電するなどのエネルギー回収といった温暖化対策を意識した取り組みが増えてきた。そしてアフリカでも経済活動が盛んになるに連れてゴミの量が増えており、特に都市部の廃棄物問題が大きな課題になっている」
――中国の廃棄物輸入規制が日本に及ぼした影響を。
「中国をはじめとするアジア諸国は廃プラスチックや雑品スクラップなどさまざまな廃棄物の受け皿になっていた。有価物取引で廃棄物処理に関連する規制が不十分だったからだ。しかし中国の輸入規制導入以降は、やはり日本国内の廃棄物関連の業界に大きな影響を与えている。廃プラスチックを例にとると、2017年には年間140万トン程が輸出され、その半分以上が中国本土へ向かった。それが19年になると中国の輸入規制の影響を受け90万トン弱まで減少した。廃プラスチックだけではなく雑品スクラップなども含め、今までリサイクルを輸出に頼っていたいろいろな廃棄物の流れが大きな影響を受けた。そして日本国内の廃棄物処理施設の廃プラスチック保管量が増加し、保管基準を超過する事業所も出てきた。中国の輸入規制の背景には環境意識の高まりがある。廃棄物をリサイクルする際に国内で環境問題を引き起こすことに厳しい目を向け始めた」
――中国に続いて東南アジア諸国でも輸入規制が相次ぐ。
「そこは本当に影響が大きい。輸出相手国でバーゼル条約に基づくシップバックが起きてしまうと、日本に戻ってきたものの処理が問題になる。そこで廃棄物の管理をこれまで以上にしっかりするため、国内のバーゼル法と廃棄物処理法を改正して、いわゆる雑品スクラップのベースになっているヤードに規制をかけた。さらにプラスチック廃棄物についてはバーゼル条約の規制対象に加えることが昨年決定した。来年1月1日の発効を控えているため、それまでに国内法のバーゼル法できちんと管理できるよう準備している。法整備と合わせて廃棄物の受け皿も必要になるため、大きな予算を投じて国内のリサイクル関連施設の整備支援を併せて実施している」
――国内の廃棄物処理施設や最終処分場がひっ迫しており処理費用も高騰している。これの対策は。
「自治体と廃棄物処理業者にアンケート調査を行い継続的に状況把握に努めている。その結果、保管量がかなり増えている。事業者によっては保管基準を超過している事例が出てきており深刻な状況と理解している。直近で実施した今年2月末時点の状況調査では、新型コロナウイルスの影響で事業活動全体が抑制された可能性もあるが、保管量の増加傾向が若干緩和している。しかし処理費用は焼却費と最終処分費が高騰しており、その影響を受けて収集運搬も含めて処理費用全体が値上がりしている」
「対応策の一つは廃棄物の受け皿を育てるための施設整備にしっかり予算をつけて応援することだ。都道府県が独自に設定している産廃の搬入規制を撤廃するなどの改善要請も行い、ひっ迫する廃プラスチックを円滑に処理できるようにしたい。処理費用の増大については、排出事業者に処理費用が高騰している現状を認識してもらい、しっかり対価を払っていただくよう排出事業者への働きかけを環境省として行っていく。加えて優良事業者の保管量の上限を緩やかにする法令の改正も行った。このようにいろいろな対策を総合的に講じ処理が滞らない、あるいは不適正な処理につながらないようにしていく」
――各種リサイクル法の評価や課題、改善点など。まずは自動車リサイクルから。
「自動車リサイクル法は02年の施行から約20年が経過して非常に成熟した仕組みになっている。ただし、これからのサーキュラー・エコノミーなど循環型社会を考えた時には、再生材の利用促進やシュレッダーダスト(ASR)の削減などで、さらに高度なリサイクルが求められる。そのため、例えば再生材を利用している場合にはリサイクル料金を割り引く制度や、残渣としてASRとなってしまうものを処理工程全体で減らすための方法など、自動車購入時に前払いしていただいているリサイクル料金を上手くインセンティブとして活用するための仕組みなどを自動車工業会などと議論している。車の設計段階からリサイクルしやすい環境配慮設計なども進めている」
――小型家電も含めた家電リサイクル法についてはどうか。
「家電リサイクル法の対象である廃家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機)はしっかり処理されており再商品化率も法定基準を上回っている。また不適正なルートに乗っているものはバーゼル法や廃棄物処理法を改正してヤード規制を実施した。その効果はもう少し時間がたたないと正確には把握できないが、少なくとも直近18年のデータを見ると回収率や回収量がかなり増えており正規ルートで適正に処理されてきている」
「小型家電リサイクルについては制度として定着してきており、参加する自治体が増えてきた。そのプロセスの中で東京オリンピック・パラリンピックの全メダルをリサイクル金属で作る『都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト』を展開。皆様にご協力をいただき世界初の試みが成功している。この関係で小型家電リサイクル制度に参加する市町村も増えた。しかし参加自治体が増えても回収目標の14万トンには届いていない。制度の使い勝手が十分ではなかったのかもしれず、さらに回収ルートや回収方法を改善しないといけない。実際にオリンピック・パラリンピックの会場でリサイクル金属を使ったメダルが授与されれば、それを支えた小型家電リサイクル制度への理解が深まるだろう。こうした機会を上手く活用しながら『アフターメダルプロジェクト』として引き続き普及・啓発活動を展開し参加者を増やす取り組みが必要だ。残念ながら足元は有償だった小型家電が逆有償になる事例が出てきており、市町村の取り組みが消極的になりやすい。こうした状況を勘案しながら市町村が参加しやすい体制を構築していきたい」
――家電も自動車のようにリサイクル料金を前払いにすれば、不法投棄が減って回収量の増加が期待できるという意見は多い。
「たしかにリサイクル料金が後払いのため不法投棄につながる可能性があるという指摘はある。自治体からも前払いに制度改正できないかという指摘もいただいており、検討課題として議論を続けている。だが今のスキームの中でも家電メーカーには不法投棄対策や災害対応などでご協力いただいていることに加え、制度をいったん後払いで整えた後に前払いに変更するのは容易ではない。今の後払い制度の中でも、回収率は向上してきており、不法投棄や不適正処理、海外への不適正な流れはある程度抑えることができている。それをしっかりやりながら、今後の制度見直しのタイミングで必要に応じて議論していきたい」
――改正廃棄物処理法が施行された後も、全国で雑品ヤードの火災が相次いでいる。
「法律の運用に基づく指導でしっかり対処していきたい。ヤードだけではなく、処理施設でも火災が増えていることを懸念している。ヤード火災もそうだがリチウムイオン電池が発火原因と考えられるケースが多い。リチウムイオン電池は今後さらに増えていくので、経済産業省とも意見交換しながら対応していく。またここ数年で登場した製品で加熱式たばこが発火原因となる事例が発生している。こうした新製品も含めて電池が通常の廃棄物に混入しないよう、またヤードに持ち込まれる家電系のものも含めて対策を徹底する必要がある」
――来年1月1日に発効を控えるバーゼル条約改正について。
「国際的な問題を引き起こす可能性のあるものはしっかり規制する必要がある。今回の改正ではプラスチックの廃棄物を管理することが決まり、シップバックになるようなプラスチック廃棄物が日本から出ていかないようにしなければならない。一方で原材料として再利用できる廃プラスチックの輸出は妨げないようにする。重要な事は規制当局として輸出の妥当性を現場で判断できないものが一番困る。したがって現在行われている『廃プラスチックの輸出にかかるバーゼル法該非判断基準策定のための検討会』では、現場が混乱しないで運用できる合理的なガイドラインを策定する。来年1月まであまり時間がないため、今夏にもパブリックコメントにかけて内容を整理して固めた上で、年内に周知期間を置くというスケジュールで進める」
――国内で資源循環体制を確立する上での課題は何か。
「今一番問題になっているのがプラスチックだ。容器包装リサイクル法や自動車リサイクル法、小型家電、家電のリサイクル法など関連する法制度の中である程度はカバーされている。しかしその枠組みに入らないプラスチックを個別の物品ごとにリサイクルするには限界がある。金属やプラスチックなど素材全体をとらまえた施策が大事になる。そのために政府は昨年5月にプラスチック資源循環戦略をまとめた。30年までのマイルストーンを掲げ、目標達成のための施策を具体化していく。先行して7月からレジ袋の有料化を実施したが、それ以外の施策を具体化するための検討会を5月に立ち上げた。夏までに具体策を整理して年度内に結論を得る。プラスチックの資源循環を一つのモデルとして、金属やその他の素材など総合的な取り組みに横展開をしていきたい」
――資源循環体制の確立で日本経済はどう変わる。
「持続可能な社会を構築するためにはサーキュラー・エコノミーという資源を循環させる経済構造に転換しなければならない。そのためにはバイオマスプラスチックの導入のように環境負荷が少なくリサイクルしやすい素材に転換したり、素材の水平リサイクルなどが重要になる。こうした取り組みを進めることで新しい産業が創出される。循環型社会に適した産業やイノベーションも期待できる」
――最後に日本の廃棄物リサイクルシステムの国際協力の成果や今後の取り組みを。
「アジア地域では『アジア太平洋3R推進フォーラム』を開催。国際協力機構(JICA)などとも連携しながら技術協力により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援している。経済成長に伴ってゴミ問題が深刻化してきているが、廃棄物の焼却による発電や高度な廃棄物処理ができるような国が育ってきている。アフリカでも『アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)』という新たな支援スキームを構築し、廃棄物をしっかり管理して衛生的に埋立するような支援を行っている」(増田正則)
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