2020年9月7日

「静脈産業の新潮流」 雑品、その後 ダスト処分場のひっ迫ネック マレーシア向け不透明感

 世界的な環境規制の高まりを受け、金属リサイクル市場は大きな方向転換を余儀なくされている。2017年の廃棄物処理法改正と同時期のバーゼル法改正、さらに中国の廃棄物輸入規制や18年末での雑品スクラップなどの輸入禁止により、日本から中国向けに輸出されていたおよそ150万トンの雑品スクラップが行き場を失った。中国の雑品スクラップの輸入禁止に伴い、国内では雑品スクラップの適正処理に向け、ダスト処分場のひっ迫や廃プラスチック処理問題などの課題が浮上している。中国の雑品スクラップ輸入禁止後の「静脈産業の新潮流」を追う。

 ■国内処理、輸出とも課題は多い

 18年末の中国の雑品スクラップ輸入禁止により、新たな雑品スクラップ市場開拓の道は大きく2つに分かれた。一つは国内処理、もう一つは中国の代替地への輸出だ。

 雑品スクラップは工業機械や家電、電子機器など鉄や非鉄が複雑に入り混じったものの総称で、銅やアルミ以外にも金や銀、レアメタルなどの貴重な金属を微量ながら含まれるが、複雑が故に解体処理・選別に時間とコストが非常にかかるため、中国向け輸出が主流となっていた。

 中国向けに処理を依存していた雑品スクラップは年間おおよそ150万トンとも200万トンともいわれるが、中国の輸入禁止後も「少なくとも表面上は国内と中国以外の輸出により、新たな雑品スクラップ市場が成り立っている」(シッパー筋)ようだ。

 中国の資源バブルでリーマン・ショック前に工業系雑品スクラップはキロ70円を突破したが、ここ最近はおおむねキロ10円台で推移するなど中国の輸入禁止に伴うコストを吸収した相場が形成されている。「国内処理や輸出向けに採算が確保できる価格帯にひとまず落ち着いている」(流通筋)ものの、依然として輸出向け、国内処理とも大きな課題を抱えている。

 ■中長期的な輸出の受け皿は不透明感強く

 中国・台州などで雑品スクラップを加工処理していた現地企業や中国系業者は、中国の雑品スクラップ輸入禁止を受けてマレーシアに処理工場を相次いで立ち上げた。工場の規模は中国より小さく、処理能力も劣っており、雑品スクラップの受け皿の一つになったものの、「中長期的に見てマレーシア向けもいつまで続くか不透明だ」(シッパー筋)との声も聞かれる。

 ある中国系業者は「やはりマレーシアに中国の変わりはできない」と本音を漏らす。中国の雑品スクラップ処理は安価な人件費を背景にした人海戦術をもとに、チーム制のような形で組織化されて大量かつ細かな選別処理が行われてきた。高い解体技術を持った職人のような熟練作業員も多くいたという。

 マレーシアへは中国から出稼ぎで来る人もいるというが、基本は現地で作業員を確保している。一から解体処理技術を教え込む必要があったが、「宗教や文化の違いからそこまで現場作業に熱心ではなく、結果として人件費も中国よりも高い。このあたりは中国人経営者もマレーシア人や現地の状況をやや見誤った」(シッパー筋)ようだ。

 解体処理の熟練度や技術が低いため、雑品の中でも比較的解体しやすいスクラップが好まれていることが雑品スクラップの品質評価にもつながっている。

 さらに新型コロナウイルス感染拡大が現地の雑品スクラップ処理工場に大きな影響を及ぼしている。マレーシアに出稼ぎに出ていた中国人が一斉に帰国し、マレーシアに戻れない、または戻らない状況が続いているという。このため、マレーシアの現地ヤードには雑品スクラップが山積みになり、今後の需要について先行き不透明感が出ている。

 ■国内では一定の資源循環ルート確立も

 雑品スクラップの現在の主な流通ルートのうち、輸出向けは国内で前処理されるものがほとんどだ。中国系で元々雑品スクラップ輸出を行っていたヤードで鉄スクラップを選別したり、バーゼル法で輸出できない基盤などを取り除いたりしており、「足元の相場レベルであればなんとか採算に乗るレベル」(雑品ヤード)という。

 国内向けはシュレッダープラントなど既存設備が活用されているほか、雑品スクラップ処理に向けて破砕機などを導入する企業も増えてきている。ただ、ネックなのはダスト処理。ダスト処分場が依然としてひっ迫し、処理費用も高止まりしており、雑品スクラップをより国内で資源循環させるための足かせの一つとなっている。非鉄金属をより精度を上げて選別するには、人海戦術か設備投資になるが、現場の人手不足などもネックになる。

 一方でこれまで雑品スクラップなどの輸出により、資本と日本での営業基盤を得た中国系ヤードは早々に雑品スクラップに見切りをつけている。雑品スクラップヤードから非鉄金属スクラップを中心とした選別処理ヤードへとくら替えし、破砕機や金属選別機、電線から銅を回収するナゲット機などの設備投資を進め、選別したものを中国向けだけではなく、国内向けの流通ルートにも乗せている。「非鉄金属リサイクルのプレーヤー数が増えているのと同じで、競争や淘汰の時代が続くのでは」(ヤード筋)と懸念する声も聞かれる。

 (松井健人、阿部拓也、早間大吾)

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