2020年9月7日

「静脈産業の新潮流」 資源循環の鍵となる「選別」 機械化・自動化で精度向上 市場に見合った設備開発

 雑品スクラップは加工の難しさやコスト高から国内での処理は採算性が低く、これまで多くが輸出されていた。ここへきて金属リサイクル業界にとっての新たな商材として見直され、設備投資に踏み切る企業が増えつつある。雑品スクラップの適正処理と再資源化のためにカギとなる「選別」の高精度化を目指し、機械メーカーも新製品の開発・販売に相次ぎ乗り出している。

 ■雑品スクラップのニーズに変化

 輸出向け雑品スクラップは鉄スクラップと輸出禁止物を取り除く選別工程を前処理として行う。中国が雑品スクラップの輸入を禁止したことでマレーシア中心に東南アジアに多く輸出されるようになったが、東南ア各国の加工処理能力は中国より低いという。輸入側からの要望もあって「中国向けのようなバラ積みではなく、小ロットのコンテナ輸出が増えている」(シッパー筋)ことも前処理を行う背景にある。

 コンテナ輸出はバラ積みに比べ運賃が高いこともあり、雑品スクラップに含まれる鉄スクラップなどを取り除き、かさ比重を上げて非鉄含有率をより高くした状態で輸出される。取り除かれた鉄スクラップは鉄スクラップ加工業者に販売される。

 マレーシアなど雑品スクラップの向け先が中国のような処理能力を持たないため、市場ニーズが変わっている。いわゆる工業系雑品スクラップはマイナーな商材になり、「モーター類などの比較的処理しやすいスクラップが人気商材」(シッパー筋)になっている。雑品スクラップのようにさまざまな機械が混ざったものではなく、単一製品が好まれる傾向にあり、商材の細分化が進んでいる。

 ■雑品から非鉄金属リサイクルにシフト

 中国が雑品スクラップの輸入を禁止する一方で「スクラップ」を「再生原料」に格上げすることを受け、これまで雑品スクラップを主力としていた業者が付加価値の高い非鉄金属リサイクル事業に着手する動きが見られる。資金力のある業者は破砕機やナゲット機を導入し、雑品スクラップから脱却して「再生原料」の供給体制を構築する。

 人材が不足しているため、元々雑品スクラップを取り扱っていた中小業者の従業員や中国現地で人材を確保し、破砕された鉄・非鉄金属スクラップの選別処理を行っている。

 導入する加工機械の多くは「主要部品は欧州から取り寄せ、中国内で設計・製造して日本に持ち込むことで設備導入コストを抑えている」(中国系大手金属スクラップ業者)。ユーロ高のタイミングでは多くの中国系業者がイタリアなどから設備や部品の調達に動いたという。

 ■国内では設備開発も進む

 輸出や中国系業者とのコスト競争にさらされ、人手をかける金属スクラップの選別処理は「中長期的に困難」(雑品業者筋)だが、将来を見据えて機械化・自動化を図ろうとする動きが見られる。雑品スクラップの国内処理を支えようと機械メーカー各社が市場に見合った設備を開発している。

 選別機メーカー大手のトムラソーティングは色や形状などで金属スクラップを選別する高精度センサーが強み。シュレッダー設備や破砕機など既存設備と組み合わせて、同社の選別機を採用するケースが増えている。

 雑品スクラップを破砕した後に出てくるミックスメタルは銅やアルミなどの非鉄金属を含むため、最終工程の選別精度を高める必要がある。「設備に金をかけるか、人材不足の中で人手を確保して選別作業を行うか、三者三様だ」(雑品業者筋)。

 破砕・選別機メーカーの近畿工業は現場の人手不足に着目し、自社開発のAI(人工知能)を搭載した非鉄金属スクラップ自動選別ロボット「V―PICKER(ブイピッカー)」を開発した。モーター類などを破砕処理した後に出る銅や真ちゅう、アルミといった金属スクラップをカメラで認識し、ロボットアームが自動で仕分けを行う。

 「他の製造業や海外に比べて遅れている」(雑品業者筋)という金属リサイクル業界の機械化・自動化が雑品スクラップの国内還流を契機に進み始め、機械メーカーの活性化につながっている。

 (松井健人、阿部拓也、早間大吾)  

おすすめ記事(一部広告含む)