2020年9月7日

「静脈産業の新潮流」 事業の幅広がる非鉄リサイクル 高まる選別ニーズに投資拡大 限られる内需、課題は売り先

 非鉄金属リサイクルの事業範囲が広がりを見せる。工場や解体現場で出る非鉄スクラップの扱いに加え、輸出できなくなった雑品スクラップなどに由来する低品位スクラップの選別ニーズが増しているためだ。これは非鉄リサイクル業界の機械化を促し、新たな成長事業の種となる可能性も秘める。一方、低品位スクラップのリサイクルでは売り先の確保という課題も浮かび上がってきた。再生原料としての品質をいかに高め、その価値を認めてくれる販売ルートを開拓できるかが今後の競争力を左右する。

 ■選別設備の導入が進む非鉄リサイクル

 銅、アルミなどのスクラップを集めて量や品位をそろえ、製錬、伸銅、アルミ二次合金メーカーなどに再生原料として供給する非鉄リサイクル企業。扱いの中心はプレスや旋盤加工の工場で出る端材や削り粉、解体現場で発生する使用済みの配管やサッシだ。

 この2、3年でより低品位なスクラップの選別ニーズが増している。きっかけは中国が2018年末で雑品や雑電線の輸入を禁止したこと。従来輸出されていた給湯器や工業雑品の国内での解体や破砕処理が増え、不純物が多い低品位スクラップの発生が増えた。関東の有力非鉄原料問屋幹部は同業との差別化戦略として、「嫌われる低品位スクラップをどれだけ扱えるか」に重点を置く。

 こうした流れの中、手選別が基本だった非鉄リサイクル業界で選別機の導入が広がる。

 田子金属(本社=東京都墨田区、田子政夫社長)は5月、ミックスメタルの選別機を稼働させた。雑品のシュレッダー(破砕)処理で回収されたミックスメタルを仕入れ、導入した独製の選別機がX線とカメラの2段階でアルミ、銅、黄銅などを選別する。

 回収したアルミは国内の二次合金メーカーが十分に利用できる品位で、銅分などもリサイクル原料としての価値が生まれる。同社は従来ほぼ銅系スクラップしか取り扱っていなかったが、雑品の国内処理が増えることを見込んで新規事業への投資を決めた。

 自らシュレッダーを所有する東港金属(本社=東京都大田区、福田隆社長)はミックスメタルでも特に金属品位の低いものをターゲットにした破砕・選別ラインを導入し、このほど稼働を始めた。狙いは、産業廃棄物を徹底的に減らし有価ルートに乗せることだ。

 金属分が9割以上のミックスメタルはそのまま輸出もできるが、5―6割のものは買い手がほぼいない。導入したラインは独製の破砕機で直径0・5―10ミリに微粉砕することでダストを徹底的に取り除き、品位を9割以上に高められる。導入に際しては同様の破砕・選別事業で実績があるアビヅ(本社=名古屋市港区)から技術供与を受け、シュレッダーダストを固形燃料に加工するラインの建設も進めている。

 ■課題は売り先の確保

 選別機の性能向上、そして必要とあれば億円単位の設備投資も決断する企業が増えてきたことは低品位スクラップのリサイクルに道を開いた。ただ、低品位スクラップから不純物を完全に除去するのは現実的でない。不純物がわずかでも混入すれば売り先は限られ、国内で消化し切れないのも事実だ。

 例えば18年まで大量に中国へ輸出されていた雑電線。同国の輸入禁止後は大部分がマレーシア向けにシフトしたが、同時に国内で破砕・選別する雑ナゲットラインの導入も広がった。関東の有力非鉄原料問屋幹部は「品位によっては輸出向けより国内ナゲット業者向けの方が高く売れる」と話し、輸出だけに依存しないリサイクル体制ができつつあるように見える。

 だが雑ナゲットの国内需要規模は決して大きくない。黄銅棒メーカーや製錬メーカーが使えるものの、原料の高品位志向もあり購入制限は厳しい。最終的な売り先としての中国の存在は現在も大きく、それはミックスメタルも同様だ。

 東京資源(本社=横浜市中区、布村文雄社長)は7月、中国の有力非鉄企業である恒吉集団(本社=江西省撫州市、楊雪青社長)の日本の集荷窓口となる会社を設立した。自社で加工した雑ナゲットや、国内で余剰になった非鉄スクラップを恒吉向けに輸出する。

 同社はマレーシアに雑電線を輸出し、マレーシアから雑ナゲットなどを中国に輸出する三国間貿易も近年拡大している。こうした戦略の背景にあるのは「中国はリサイクル原料が恒常的に不足しており、日本は逆に売りにくくなっている」(布村社長)という現状認識だ。

 低品位なスクラップはとりあえず輸出というかつての商流は通用しなくなった。だが、財務省の貿易統計を見れば非鉄スクラップがいまも国をまたいで動いているのがよく分かる。今年になってからも銅系スクラップは月間2万―3万トンの輸出があり、輸入も1万5000トン前後ある。

 関東の大手原料問屋社長は「製錬向けの下銅は輸入することもあれば、国内で売れずに輸出することもある」と話す。売りつなげなければリサイクル事業は立ちいかず、海外市場を含めた商流は今後さらに複雑化する可能性がある。集荷力、選別機能、販売ルートの3つの観点で、足りない要素を同業間で補い合う協業も今後広がるかもしれない。

(田島 義史)

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