2020年9月18日

「未来へ見出す活路 電線メーカーCASEで稼ぐ」 大変革期をチャンスに 「つなぐ」知見生かし開発

 100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。これまで部品メーカーにとって製品の安定供給に努めることこそが最重要課題とされてきた。しかし、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を中心とする変革に伴い、将来の自動車像を創造し、必要な部品の開発を先取りして行うことが求められる。社会インフラを「つなぐ」役割を果たす電線メーカーの開発力が問われる。

 「アルミハーネスはもはや新製品ではない」。車載用ワイヤハーネスの世界トップメーカーである住友電気工業の西田光男副社長はこう話す。同社は2010年にアルミハーネスの量産に成功すると、16年には引張強度、伸び、導電率両立させた高強度アルミ合金を開発し、高温下での耐久性が求められるエンジンルームに採用された。

 自動車に搭載されている電線は全体で小型車でも1200メートル以上。これまでは銅を導体に使ったハーネスが一般的だった。銅導体をアルミに置き換えた場合、ハーネスを約30%以上軽くすることができる。車体の軽量化が求められる中、動力系統に使われるアルミハーネスの搭載数は増えている。

 現段階でアルミハーネスの搭載数は20―30%で、25年には60%を占めると期待されており、動力系統ではアルミが、通信系統では銅というように、使用部分によってすみ分けされる見通し。

 自動運転やコネクテッドの実現のためには高速大容量通信が必須となる。通信用のハーネスは、従来の銅より細く高強度な銅合金の活用が期待されている。しかし、金属導体では毎秒10ギガビットを超える通信は難しい。

 毎秒10ギガビット以上の高速大容量通信を実現するために期待されているのが、このほど住友電工が開発した光ファイバーハーネスだ。現段階ではコスト面から採用に至っていないが、来るべき高速大容量通信の要望に備える。

 CASEの中でも先行して取り組みが進む分野が電動化だ。富士経済はこのほど、19年のハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車(EV)の乗用車・新車販売台数が前年比14・8%増の488万台となったと発表した。本年度はコロナ禍の影響で販売台数が落ち込むが、35年度には3641万台に拡大するとしている。

 EV化に伴い、拡大が見込まれる製品が、駆動用モーターの小型化や高出力化を支える平角巻線だ。従来の丸線に比べ、巻線の占積率(コイル断面積に占める導体の割合)に優れるといった特長を持つ。

 住友電工の薄膜で、膜厚が均一な平角巻線は、日系の主要カーメーカーで高いシェアを誇る。古河電気工業は米スーペリア・エセックスと太物巻線事業を統合した。グローバルでの耐高電圧平角線の「HVWW」の拡販を狙う。

 高電圧への対応が求められる中、高品位な素材への期待が集まる。昭和電線グループの無酸素銅「MiDIP」は、銅の純度が99・99%で酸素含有量が10ppm以下といった特長がある。今後、高品位な無酸素銅を安定的に製造するための技術開発を進めていく考えだ。

 EV化に伴い変化する部品は、駆動用モーターだけにとどまらない。ガソリン車と異なりエンジンが搭載されないEVでは、車内の熱源の確保が課題となる。現在、ヒーターとして高い特性を持つ銅銀合金はハンドルやセンサー用に採用されているが、コスト面で課題が残る。

 今後、自動運転やコネクテッドカーの進展に伴い、センサーの搭載数は拡大する。センサーを正常に稼働させるために温度を保つヒーター線の需要は伸びていく。コスト競争力がある合金線の開発が期待される。

 第五世代通信規格(5G)を活用した高度運転支援技術の開発も進む。住友電工はNTTと共同で5G、自動車、交通インフラに搭載したセンサーを活用し、リアルタイムに交通状況の情報収集や解析を行う実証実験を開始した。交通インフラを含めた新たな「クルマ社会」を模索する。

 足元の自動車市場は低調だ。しかし、住友電工の西田副社長は「CASE対応への研究開発費を減らすわけにはいかない」と力を込める。単なるサプライヤーを超えた役割が期待される中、いかに変革に対応できるかが注目される。

(玉光 宏)

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