2020年11月19日

「金属リサイクル 未来への展望」上場大手各社首脳座談会2 上場の狙い 鈴木孝雄氏(リバーHD会長) 静脈産業再編へ質上げる 佐野富和氏(エンビプロHD社長) シナジー生む経営統合を

佐野「昔は『なぜ父がこんな仕事をしているのか』と恨みがましく思ったこともあったんだけど、15歳の時、私が生徒会長に選ばれたことを伝えたら、父はぼろぼろ泣いて『おれみたいな男にお前みたいな子供ができてうれしい』と。その言葉と涙を見て父を喜ばせたいと思うようになり、家業を継ぐことにした。そのような『喜ばせたい、役に立ちたい』と思う対象が、両親、家族、社員、取引先、社会、というように広がっていき、上場に至った」

高橋「もちろん社員・業界のイメージをよくしたいという思いがあり、さらに業界に対してわれわれが上場することで一石を投じたいなと思った。そんな時、上場してから地元の同業者の社長たちとばったり会ったんです。先輩方です。みんなが『よかったなあ!』って握手してくれて。この業界はいい人が多い。忙しいからうつつを抜かして遊んでいるような人はいなくて、毎日相場を見て売ったり買ったりしている。その割には社会的評価が低い。見てくれだけで判断されて。上場することでそれを乗り越えられるような気がした」

佐野「上場するといろいろなところから監視され、内部統制も効く。一流企業の皆さまとお付き合いする上で必要なことだ。オーナー企業のわがままな親父が長く社長をやると、どこか間違いが生じるときがある。私はそもそも会社を大きくするのが目的じゃない。より大きな仕事はより世間に貢献できるので、その仕事をするための手段として上場があったに過ぎず、決して目的やゴールではない。職種もたまたまリサイクル業だっただけで50年後には違う業かもしれない(笑)。でも、上場の後、各方面から信用を得た。100の言葉を尽くしても得られない信用だ」

高橋「私もスクラップだけの商売だったら上場を考えていない。スクラップに付随するサービス業を一つ一つ取り込み、つなげたいという思いがあった。どうしてもスクラップ業は集荷コストが見合うエリアしか出店できないが、サービス業だと全国展開できる。そのシステムを一番利用できるのがゼネコンのビジネスモデルだと思った。とはいえこの業界、『建物を解体します』といっても反社会的勢力のイメージがあって怖がられる。でも上場したら、東証がそのあたりをクリアにしてくれるんで。自分たちのバリューが上場によってブラッシュアップされるのはサービス業ですよね。川上にいけばいくほど相手にしてくれる。一番の目的はそこにある。もちろん私個人の思いもあるけど」

鈴木「私は10年前、上場など考えてなかったが、5年前に上場したくなった。なぜか。日本の静脈産業を再編せねばならないからだ。そのために信用度と内容(質)を上げる必要があって、そういう問題意識を持った他の会社と統合し、早い段階でヨーロッパやアメリカと匹敵するような……」

吉野「ただ、統合はうまくいかないと思うよ。みんな飯が食えるから。それなりに各社でやっている。何をもって統合するかという次元の高い話にいかない。客観的にスクラップ業界を見ると、みな飯が食えてうまいことやっているようだが、『茹で蛙』が始まっている状況だと思う。今は心地よいぬるま湯に浸かっているが、少しずつ火が強くなり、いつのまにか熱湯の中で死ぬだろう。よほど大きな危機感がないと。それこそ黒船が来て旧来の価値観がすべて変わった時のように。われわれの業界にも黒船が必ず来る。それが海外の巨大企業なのか、プライスリーダーか、違う仕組みを作る企業なのか、アメリカからか中国からなのかは分からないが、都市鉱山を持つ日本は格好の標的。私だったら日本を狙う。弱小企業に資本を入れてグループ企業にし、大きな塊を作り上げていく。皆も早く気が付かないと」

佐野「この問題はサーキュラーエコノミーと関係するんだけど、一定規模の会社になれば全国どこでもいろんな仕組みを提案できる。実務的な能力を含めた一定規模がないといまいち説得力がない。この地域はここ、この地域はここ、みたいに『面を抑える展開』が重要。そういう意味で言えば経営統合は必要性も可能性もある。ただ、足し算のように単純に同じ業種が集まるだけではだめ。ケミストリーが生まれないと。統合する状況が来たときに1+1が3、5になるようなネタを仕込んでいきたい」



鈴木「そのサーキュラーエコノミーっていうのと似たような動きは昔からあったけど、大きく言い始めたのはEC、欧州共同体だよね。『大量生産・大量消費・大量廃棄が資本主義社会を発展させてきたが、その考え方はもう古いのだ』ということを、哲学も含めてプレゼンしてきた。日本はどうもそういうのが下手で、追随せざるを得ない。近頃は日本もサーマルリサイクルなどの多面的な絵図を描き始めたけど、二番煎じの感が否めない。言っていることは正しいからいいんだけど(笑)」

佐野「鉄スクラップはそもそも資源として循環しているし、サーキュラーエコノミーに無理に当てはめる必要はないんじゃないかと思っている。今当社が戦略的に一番注力しているのはリチウムイオンバッテリー。サーキュラーエコノミーと聞いて個人的にピンとくるのはバッテリーのリサイクルだ。リサイクルされたレアメタルも使ってバッテリーを作らないとやがて資源が足りなくなる。バッテリーを乾燥又は焼成してから破砕した時に生じる、ニッケルコバルトが含まれる粉をブラックサンドとかブラックマスと呼んでいるが、今の段階はそれを回収して精錬所に売っている。ただ、今後は湿式製錬を自分でやって、電極材に近いものまでに加工するような会社にならないといけない。サーキュラーエコノミーというからには、製造業がリサイクル業でもあるような、そういう社会にならないといけないだろう」

高橋「私も金属リサイクルはある程度、流れが完成していると思っている。それでも非鉄は、特に金、銀、レアメタルはまだまだで、事業のチャンスがある。(当社は解体事業も展開しているが、)解体するとリサイクルできないものが出てきたりする。燃やすことも埋めることもできないような物だ。たとえば木毛セメント板という物は、木とセメントを練り込まれたものだから、管理型処分場に持っていくと嫌がれる。メーカー側がリサイクルのことを考えて作っていないから起こる問題だと思うし、我々がまず提言していきたい。その為にも企業として大きくなる必要がある」

佐野「私も鉄リサイクルの循環はほぼ完成されていると思うけど、廃プラはまだだね。その問題を解決するために、ケミカルリサイクルとか、バイオ技術を使ったリサイクルを研究している企業がある。当社も他社と連携して12月から実験を開始する予定だけど、高橋さんの言うように、同業者だけでなく異業種との連携や大企業とやりとりをするためにも、質量共にそれにしっかり対応できるレベルに自社を成長させないといけないですね。」

吉野「サーキュラーエコノミーでもなんでも、業界を変えるにはルール・仕組みを変える人が必要だ。たとえばメガネのJINSの田中仁。彼とゴルフをしていて、ゴルフがうまくなるメガネを作ったらどうかと言ったら、本当に作った。メガネが1本5000円くらいで買える時代に8000円で売ったらかなり売れた、と聞く。そのうちにブルーライトをカットするPC用のメガネも開発した。機能メガネは検眼がいらない。つまり通信販売で売れて、店舗がいらない。要は、従来の眼鏡屋の仕組みを変えたということだ。我々も仕組みを変える必要があるんだけど、これは若い人の発想に委ねないといけないと思うし、彼らに機会を与えないといけない。そのためにも会社の枠組みを超える必要がある。各社が連携して、若い人たちだけで企業内企業を作って、発想を新たにしてものを見てもらおうじゃないか、と思っている。たとえばさっき高橋さんが『解体すると、処分できない物が出てくる』とおっしゃった。それは法律で決まっているからだ。でも法は人がつくったもの。それを壊すことを考えればいい。若い人たちに業界の因習を全部疑ってもらい、新しい仕組みをつくってほしい」

鈴木「今、社を超えた枠組みの話があったけど、前もそういうのがあったんだよ。各地のリサイクル企業7社の包括業務提携を『ROSE』と名付けて、勉強会をいっぱい開いた(スズトクホールディングス〈現リバーホールディングス〉、エンビプロ・ホールディングス、イボキン、やまたけ、中特ホールディングス、マテック、青南商事の7社。15年発足)。ヨーロッパのリサイクルの仕組みや各社のコンピュータシステムなどを共に学んで、お互いの組織の理解が深まったと思う。今ここにいる3社は当社の株主で、吉野さんは社外取締役だ。統合というものを広義に捉えれば、徐々に統合は進んでいるといえる。人の交流も統合だといえるし、積極的にやっていく。同じ方向性を持っていれば、当社は統合をまったく拒むものではない。そういったメッセージはこれまでもずっと発信してきた」
(松井健人、早間大吾)

「金属リサイクル 未来への展望」上場大手各社首脳座談会1
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