2020年11月20日

「金属リサイクル 未来への展望」上場大手各社首脳座談会3 高度循環社会に向け協調 規模・技術で「黒船」に対抗

■国内外の枠を越えた統合の可能性は?

佐野「中国系が絡んでも私は悪いと思わない。とはいえ、わが国のリサイクル企業が全て中国系やヨーロッパ系で占められては情けないという思いはある」

高橋「私は国外には静脈産業の大企業があるのに、日本にそういう企業に対抗し得る企業がないのは国の恥だと思っている。どこかの傘下に入るのではなく、自分たちでやりたい。弱者連合になるのではなく、各社がそれぞれ頑張った上で統合したい」

佐野「統合にあたってはいろんなジャンルの得意分野を持つことが大事。鉄を何トン取り扱っていますというだけではだめ。各社が成長を予感させるような事業を手がけることと経営統合はセット。そうじゃないと面白くないし、ケミストリーが起きない」

鈴木「日本の資源の持続性のためにも静脈産業の再編は重要になってくるじゃないかなと思う。私が考えているのは価値観の変化のこと。一番はSDGs。2015年に170カ国の合意でできたものだけど、持続可能な社会のためのもの。前世紀のような価値観でいけば、持続性が担保できない。人口が増え続けると、食料だけではなく資源も取り合いになり、世界の持続可能性が損なわれる。徹底的に再資源化するということは日本の存続のためにも非常に重要なんだけど、それをやるための力量が足りない。むしろ、マーケットが縮小し、競争が激化して消耗戦になる。鉄スクラップを再原料化するというのは生産性が非常に低く利幅も少ない。しかし、今の製品は複合物が多く、高い技術がないと原料化できない。当社はその部分に特に力を入れてやっているが、全てを個社でやるのは大変だから、技術や資金を提供し合ったりすることがある。そうやって協力して業界を伸ばし、日本を高度循環社会にしたい。もちろん技術・人材が必要。そのための施策を一所懸命やっている。人が集まるようなこんな新社屋をつくるとか(笑)。半分冗談だけど、そういったアピール性を含めて、トータルで今話したようなことができる企業になるためにやっていく必要がある。そういうことをよくこの4社で話し合う。基本的な方向性は同じ。細かいとこは違うけど。90年までは日本もパイが大きくなっていたし、各社が頑張っていればよかった。今は違う。とにかく各社の競争よりも協調が大事なんだよ」

■海外系ヤードが国内に増加している問題

佐野「そういったヤードを念頭に置いて法改正する必要はない。法を適用しさえしてくれたら十分。海外系企業の発展は日本企業にとっても刺激になるし、危機感が人々の目を覚まして進化を促すわけだから。非合法の部分が仮にあるのなら、すべての企業に法の下の平等を期してもらえばいいだけ。日本企業だけを守るのは結果的に衰退を招くんじゃないかな」

高橋「佐野さんに全くの同意見。食われないように自社のバリューアップを図ればいい。上場もその一つになるかもしれないし」

鈴木「私も同じ意見だね。確かに中国系ヤードが雨後のたけのこのように全国に増えている。放置している自治体があるけど、それは自治体が悪いのではなく、法的根拠がないのが現状。そういう点ではルールを新たに作る必要はないけど、中に入ってチェックする機構をつくる必要があると思う。でも行政にそんな手間暇をかける余力はない。今は空白になっている」

高橋「自由主義経済とはきちんと法律を守った上で成り立つので、順守意識はとても重要。環境汚染にもつながってしまう」

佐野「ただ雑品問題についていうと、私はかつて中国にどんどん輸出している時、社員たちに『選別が面倒なものを自分たちで手をかけずに右から左に中国に輸出するようなことはするな』と言っていた。今、輸出が止まったことで当社にはかえって良い状況になったと言っていい。廃プラにしても、大手がケミカルリサイクルに注力し始めてわれわれの提案に耳を傾けるようになった。それはこの一連の出来事が社会問題として大きくなったからだ」

高橋「私は国内循環が善で国際循環が悪とは思ってない。環境汚染や劣悪な労働環境がないように担保されたらどこでやろうといいと思う。ニーズがあるところにビジネスが生まれるのは当然なので。ただ、日本でやるとビジネスチャンスになるのは事実」

佐野「そう、いわば宝の山。電池もそう。きちんと回収していけばいい。中国がまた雑品を買い始めることをむしろ恐れている。日本で循環の仕組みを今のうちにきちんと構築せねば。金属リサイクルだけの技術だけじゃだめ。自分たちの事業ポートフォリオを転換しないといけない。鉄スクラップだけではもはや成長できない。積極的に成長分野にいかないと」
(松井健人、早間大吾)

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