2021年7月5日

鉄鋼新経営 2030年に向けて 日本冶金工業 久保田尚志社長 高機能材で水素分野捕捉 ハイエンド商品開発を加速

――マーケットの現状をどう見ているか。

「市場はここ1カ月で急激に加熱してきた。新型コロナウイルス感染症影響によって、前年同期は需要が底入りし、川崎製造所は7割操業を余儀なくされたが、自動車分野をはじめ製造業が復調しており、マーケットはほぼコロナ前に戻っている。ステンレス鋼板の一般材は国内外で需給が急激にタイト化。アジアでは中国政府による増値税還付撤廃の影響がみられる。世界的な需要増で資源価格が急騰し、ニッケルやフェロクロムなど原料価格は急ピッチに上がっており、このコスト上昇分を販売価格に転嫁しているが、大幅値上げに市場が付いて来ている。高機能材は巣籠もり関連や半導体、太陽光発電など再生可能エネルギー向けで引き合いが増え、今期は前期比で販売増を期待している。足元、川崎は一般材、高機能材ともにフル生産。ただ、現状をみると、リーマン・ショック前のニッケルバブルを思い出す。07年5月をピークにニッケル価格が急落し、状況が一変した。上がった価格はいずれ下がる。ステンレス鋼は基本的に供給過剰構造が変わっておらず、気を抜くことはできない。コロナ後は先行きの競争が激しくなると予想しており、当社は競争力強化に寄与する川崎の新しい電気炉が2022年1月に立ち上がる予定で、この効果を垂直的に刈り取る」