2022年7月25日

総合商社 資源トップに聞く/■住友商事■/資源・化学品 事業部門長 坂本 好之氏/中下流含め事業機会探る/グリーンアルミ マレーシア以外でも検討

住友商事の資源事業は電化や電池関連の銅、ニッケル、リチウム、コバルト、アルミを優先商品として引き続き拡大する方針だ。鉄鉱石など鉄鋼原料も維持、拡大する。原料炭も当面必要な原料として維持する。必ずしも上流だけでなく中下流を含めて事業機会を探るという坂本好之・資源・化学品事業部門長に方針を聞いた。

――2021年度は最高益だった。

「部門の純損益は2473億円だ。期中に資産を売却したのがチリのシエラゴルダ銅鉱山。これをオーストラリアのサウス32に売却した。銅価格が高い時にディールが成立したので、370億円の売却益だった。銅は優先商品と位置づけており、その方針は変わっていないが、相対的に競争力の劣る銅の資産からポートフォリオをシフトしていく。同じチリのケブラダブランカ(QB2)が建設途上で、年度内の生産開始を目標にして建設を進めている。これは100年続く大型プロジェクトだ。こちらの方が圧倒的に競争力が高く、コストカーブでも上位に位置するということで、資産を入れ替えた。中期経営計画で全社的にポートフォリオの質の改善を図っていく。21年度はシエラゴルダ権益の売却に加えて、北海油田権益の一部売却等、資産入替を進めた結果、一過性利益が500億円くらいあった。それを除く通常損益で約1960億円。化学品が約360億円、資源で約1600億円。移行期のエネルギー源で必ず必要になるLNGは権益を維持、拡大させる。それから我々の中で魅力度が高いと位置づけるのはバッテリーメタルだ。たとえば、EVや風力発電でも銅やアルミが使われている。バッテリーメタル関連で当社が力を入れているのが銅、ニッケル、コバルト、リチウム、アルミだ。ここでは権益の拡大を図りたい方針は変わっていない。30年までに一般炭鉱山持分生産量をゼロに、35年までに化石エネルギー権益事業から生じる間接的CO2排出量を19年比90%以上削減する。19年の排出量は約1600万トンだ。一般炭は昨年ロレストン炭鉱権益12・5%を売却した。既に20年には米国の非在来型のガス田、シェール事業は撤退している。サステナブルな社会を構築するために必要となる非鉄金属関係に力を入れてやっていく。移行期のエネルギーとしてLNGは維持、拡大を図る」

――原料炭は持ち続ける。

「原料炭は維持だ。今持っている原料炭の権益は維持して安定供給責任を果たしたい。水素還元鉄に行くまではコストと時間がかかる。それまでは鉄鋼メーカーにとっての必要原料という位置づけで維持する」

――鉄鉱石は大事な資源。

「鉄鉱石もブラジルと南アフリカの2拠点で権益を持っていて、南アフリカはアソマンを通じて鉄鉱石、マンガン鉱石の上流権益を保持して川下のトレードのところまで責任を持ってやっている。ブラジルはMUSAというウジミナスが70%、当社が30%の合弁だ。保有している鉱山の拡張を継続していく。気候変動対応に合わせて求められる鉄鉱石も変わってくる」

――尾鉱ダムを乾式に変える。

「今後MUSAではダムは使用しない。尾鉱ダムからドライスタック方式への変更は、昨年計画していた通りに実現し、既に操業を開始している。マダガスカルのニッケルの鉱山も同様だが、尾鉱は問題を起こさないように、地域、政府、我々自身も自発的に保全を図る。直接還元鉄(DRI)用の鉄鉱石は今の鉄鉱石よりも高い品位が求められるため、新たな投資が必要になる。相当な投資が必要になるが、ウジミナスとFSの段階に入っており、25年ぐらいにFID(最終投資意思決定)をする。新規にブラジル、オーストラリアで鉄鉱石の山を買いに行くかというと、検討していない」

――優先商品は銅、ニッケル、コバルト、アルミで、ニッケルもアンバトビー以外に新しく投資するのか。

「アンバトビーを1年間止めて、昨年3月より操業再開した。まずは年間4万トン強のアンバトビーのニッケルの安定生産に集中する。ただニッケルは魅力度の高い優先商品だ。チャンスがあれば(新規も)やりたい」

――去年戦力が加わったところは。

「スタディ中のものはいくつか常に持っているが、銅鉱山を買いに行くとかニッケル鉱山を買いに行くとかといっても基本的に高値掴みとなりやすい。やり方を変えることを検討している。優先商品を必ずしも上流のみでやるということではない。アルミは上流ではない。マレーシアでの製錬だ。また、アメリカでは下流の圧延事業をやっている。アルミのバリューチェーンでかなりの収益が上がっている。だから、アルミを優先商品と位置づけている。ボーキサイトの山を買いに行くのかというと、それはない。銅も上流は今が買い時かというと違う。ニッケルも同じだ。やり方を変える。価格が高騰しているなかで、上流権益だけ取りに行くのは難しい」

――マレーシアは水力発電でグリーンだ。

「マレーシアの事業をモデルとして、電源は水力なり地熱なり風力でもいいが、CO2を排出しない再生可能エネルギーが確保できるところで製錬事業を検討している。たとえば、アフリカで水力発電の供給できるところで始める、どこかと共同で取り組む、既存の案件に参画する、などさまざまな選択肢を検討している。繰り返すが銅、ニッケル、コバルト、リチウム、アルミ、これらは優先商品で変更ない。ただし上流権益を取りに行くだけの一辺倒の考え方ではない」

――去年の業績は価格が大きい。

「前年度から資源の価格が高騰した。アンバトビーなど生産が止まっていた分の数量増分と合わせて900億円程度の影響があった」

――今年は市場がどう展開するか。

「今公表している想定よりも第一四半期で値段が上がっているのがニッケルと石炭だ。(部門の純利益)約1550億円で対外発表しているが、そこまで落ちないかもしれない」

――QB2以外で年内に収益源に加わるものは。

「QB2は銅の持ち分量が増える。エネルギー関係でブラジルのFPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)も立ち上がる」

――QB2は収益にどのくらい影響があるか。

「今年度内に完工する目標で建設を進めている。予算には入れていない」

――当面大きなプロジェクトはQB2。

「上流ではQB2。中下流ではアルミを検討している。上流は1年経っても発表できる新たなものは多分ない。価格が合わないため、やり方を変える必要がある。中下流も投資対象になる。優先商品のアルミでは、上流はやらないが、中下流をやる。常にチャンスは狙っており、リスト化しているものもある。電源が再生可能エネルギーにより調達できる立地のところで製錬事業を真剣に検討している。年内くらいに発表するようなところまでいきたい。また、アメリカでUACJとやっている缶材は需要が増えているから拡張の検討をしている」

――鉄鋼原料の脱炭素対応は。

「DRIだ。また、当社は電炉用の黒鉛電極、黒鉛電極用のニードルコークスが強い。ニードルコークスに関しては、当社90%、ENEOS10%の合弁で製造している」

――アンバトビーは安定してなかった背景を。

「コロナで停止を余儀なくされた1年間なるべくケアをしていたが、コロナが蔓延して、エキスパートも引き上げていた。そのため、ケア・アンド・メンテナンスがなかなか行き届かないところがあった。1年間風雨にさらされて、腐食が進む。そこから立ち上げて徐々にストレスをかけている。どこの部分で漏洩が発生するか慎重に確かめながら、都度必要な補修や部品の交換をするという粘り強い努力を続けている」

――今年度は目標の月間4000トンにいけるか。

「去年が3万8000トンで、今年(計画)が4万トン。(4月から)3カ月で1万トンくらいだ。能力的に5万トンはいける。もっと早くやりたいが、複雑なプラント故に時間が掛かるし、慎重に立ち上げている。市況が良い時に増産して欲しいという期待はあるが、そこは過度にプレッシャーをかけないようにしている」(正清 俊夫、田島 義史)

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