2023年9月28日

営業戦略を聞く/JFEスチール 祖母井紀史副社長/EV向け商品、製販強化/低CO2鋼材、採用増を期待

――国内外ともに需要に濃淡が見える。

「自動車生産は半導体不足のネックがかなり解消され、2023年度の国内生産は900万台に迫る勢いで増えている。造船は受注残もあり円安傾向も追い風であることから製造業では自動車と造船は堅調だが、機械系は中国向けなど輸出が低調でやや振るわない。建設分野は資材高や人手不足の問題で早期に需要が戻る状況ではないが、都心部の再開発は進み、中長期的には安定した需要が続く見通しだ」

「海外は中国の経済が減速し、東南アジアの市場も先進国の利上げの影響などで回復途上にある。中国の粗鋼減産の動向には注視が必要だが、それ以上に経済の問題が大きく当面、鉄鋼市場の大きな回復は期待できない。当社の中国向けの鋼材輸出量は多くなく直接的な影響も大きくはないが、中国から東南アジアなどに鋼材が大量に輸出されることで間接的な影響を受ける。ただ、以前に比べてアジアの鋼材市況は持ちこたえている。鉄鉱石や原料炭の価格に加え、他の物価も上がっているので市況の底が抜けるということがない。米国の経済は力強く、メキシコも市場の成長が続く。今は中国経済が焦点であり、どのような景気対策を打つか注目している」

――東日本製鉄所京浜地区の上工程を今月16日に休止した。製造面の構造改革を大きく進めたことで見込む今後の効果は。

「京浜地区の上工程を今月16日に休止し、東日本製鉄所千葉地区と西日本製鉄所の倉敷地区と福山地区それぞれの特長を最大限に活かせる形に生産を集約した。千葉地区は酸洗ラインを改良し、酸洗鋼板の量が増え、自動車と関東以東向けも含めて対応していく。倉敷に鋼管関連の素材生産を集中させ、大単重厚板も製造する。福山は自動車向けとブリキを集中的に生産する。京浜地区で製造していた製品を他の地区に移して生産を継続するにあたり、ハード面の構造改革を進めた進めてきたが、これからは、例えば縞板の生産を福山で一種類にしたように、製造の移管先でそれぞれ規格の統合や効率的な生産方法を検討するなど、最適運用、競争力の強化といったソフト面での改革に取り組んでいく。構造改革によって各製鉄所の特色をより活かせる体制となり、販売と技術の連携を一層強化して取り組んでいきたい。移管する際に見えた課題もあり、構造改革は京浜の上工程休止で完了というわけではなく、これからも続く」

――鋼材販売価格の改善がこの数年に大きく進んだ。

「価格を3つの要素に分けると一つ目が主原料価格と為替、二つ目が諸物価、三つ目が再生産をするための適正な利益と考える。主原料価格と為替の販価への反映はフォーミュラ化を進め、上昇するコストの反映はかなりできてきており、諸物価についてもお客様への丁寧な説明を通してご理解をいただき、おおむね価格に反映できてきている。適正利益については再生産可能な利益の確保に向けての活動を続けているところであり、今年度内にはめどをつけたいと考えている。以降は成長投資やカーボンニュートラルに向けての検討にも注力していきたい。輸入鋼材の数量が増えつつあるが今後も主原料、諸物価などのインフレは続くと想定され、国内メーカーとして安定供給を前提とした適切な販価を継続していきたい」

――EV向けの商品拡販がテーマに。

「一つはハイテン材の強化だ。アルミ材やアルミギガキャストなど競合する素材や技術が出てきているが、ハイテンは自動車の設計に関して柔軟性が高く、新しいモデルの自動車をみるとハイテンの使用比率が上がり、使用量が増えている。競合する素材は増えるだろうが、ハイテンの需要も増える。当社の戦略として解析技術など新しい技術を、部品を加工する企業に提供し、鉄の素材としての力を使い切ることでサプライチェーン全体の競争力を高める。CO2の排出量を削減するには製品を小さく軽くするのが効果的なので、ハイテンは自動車以外の分野でも使われる可能性がある。アルミギガキャストは部品点数が減るのはメリットだが、自動車としての必要な性能を確保する点ではハイテンの強みもあると考える。今後もより競争力のあるハイテン材の開発に注力していきたい」

――倉敷で無方向性電磁鋼板(NO)の能力を第1期増強で2倍、第2期で3倍にする。

「現在見えている将来のマーケットの伸びに対応する投資であり、ハイエンドの製品に特化した投資だが、EVの普及とともにエンジン車からハイブリッド車へのシフトでもNOの需要は増える。NOの能力をさらに増強するとなれば、需要動向を鑑みて海外含めて最適な地域での増強投資を考えたい。インドでは送電網の整備から需要が増えるGO(方向性電磁鋼板)についてJSWスチールと製造販売の合弁会社の設立を決めており、2027年のフル生産開始を目標としている」

――グリーン鋼材のJGreeX(ジェイグリークス)の採用が進み始めた。

「グリーン鋼材は徐々に市場に浸透しており、ジェイグリークスは思った以上に反響があり、問い合わせが多い。お客様で細かな案件も含めご検討いただいており、『グリーンな建築物』などに使われていくと期待している。課題は環境付加価値をいかに販価に反映していくかだが、消費者含め社会全体で負担する必要があると考える。先日、ドライバルク船への採用が決まり、海運会社とCO2削減価値の社会分配モデルを構築し、先例になればと思う」

――倉敷で製造を始めた大単重厚板のJ―TerraPlate(ジェイテラプレート)の初採用も決めた。

「厚板の大単重化は溶接部位を減らせるなどお客様にとってコストや製作期間の短縮など大きなメリットがある。先日、台湾で新設される洋上風力発電用のモノパイルに採用された。造船向けの厚板はすでに大型サイズの厚板を供給しているのでジェイテラプレートは主に大型の構造物向けに販売していく。倉敷の厚板ミルに加熱炉を増設し、製造サイズの拡大に対応する」

――グループ会社との連携強化策は。

「例えば、電磁鋼板の分野では、JFEグループ全体で、電磁鋼板の製造に必要な原料を調達し、電磁鋼板を製造し、コアに加工するという、原料から最終製品までのサプライチェーンを持っている強みがある。また、これまで以上に力を入れているのは、あるプロジェクトや販売先に対してグループの商材をセットにして提案することだ。JFEシビルとの連携による耐震・制震デバイスの販売、JFE建材の床材とJFEスチールの柱・橋梁材のセット提案、風力発電用モノパイルや、その洗掘防止用袋型根固め材でのJFEエンジニアリング、JFEミネラルとの連携など、多くの事例が挙げられる。また、JFEスチールの研究所ではグループ会社も含めた機能性材料についての専門研究部門を備えている。このように、今後は、グループの商材や技術を総合してビジネスを進めることがますます重要になり、グループ連携という以上に『グループ協業』として取り組む」

――物流の「2024年問題」への対策をどう進める。

「西日本製鉄所で生産した製品を船で東日本の物流基地に運び、そこから陸送でお客様に届けているが、予定通りに運べば時間をオーバーすることはないものの、遠距離のケースもあり、うまくいかないこともある。お客様の方で早く引き取っていただく、あるいは配車のタイミングや積載率の向上などお客様と当社の物流部門、工場の3者が一緒になって対処する必要がある。薄板の販売先が多い中京地区では鋼材の置き場を拡張しており、船で効率よく運び、トラックで届ける仕組みを強化している。全社で課題を洗い出し対応しているが、お客様や配送会社と互いに理解を深めながら解消策を詰めていく。日本鉄鋼連盟がお客様に物流における実態の理解と協力を求めている。鉄鋼業界として取り組み、個社としても取り組んでいく」

――鋼材輸出は採算重視の方針を継続か。

「当社の輸出は従来より、コアのひも付きの比率が高く、そのお客様を重要視している。市況見合いで、その他の輸出分野を増やすこともあるかもしれないが、構造改革によって生産能力も大きく増やすことはないだろう」(植木 美知也)

スポンサーリンク