2024年2月19日

鉄鋼業界で働く/グローバル人材編 インタビュー/鋼管・特殊管に魅力

日本の鉄鋼業界はさまざまな国籍・ルーツを持つ人材に支えられている。住商メタルワン鋼管の鋼管事業・特殊管本部海外事業部特殊管貿易チーム課長代理、安仁煥(アン・インファン)さんもその一人だ。安さんに来日のきっかけ、業務内容、今後の目標などを聞いた。

――来日までを。

「韓国・ソウル出身でして、初めて日本に接したのは中学生頃です。漫画やアニメ、ライトノベルにハマって。字幕なしで見られるようになりたくて、中学3年生の時に独学で日本語の勉強を始めました。高校生の時点である程度、日本語を読めるようになりましたね」

――その後は。

「釜山外国語大学校で日本語学科と国際貿易学科の2つを専攻しました。言語は手段であり目的にはならないという考えがあり、日本語を学んだ上で貿易に携わりたいなと。卒業後すぐに実務で使える内容を学びました」

――韓国で鉄鋼業界に就職。

「商社に入りたいと思っていました。ちょうど就職活動のタイミングで日本の鉄鋼商社の韓国支店が求人を出していて。合格を頂き2015年に入社。日本から輸入した鋼管・特殊管を韓国の客先に販売していました。日本から出張に来た社員の通訳や客先の資料翻訳も担当。4年間勤務しました」

――鉄への印象は。

「率直に鉄について特に知らない状況での入社でしたね。小学生の頃に製鉄所の見学に行って熱いなと思ったのを覚えている程度。でも身の回りで探せば探すほど鉄鋼製品があると気付き、鉄鋼商社とのご縁にもつながりました」

――その後来日。

「日本での生活に興味があり家族も日本に住みたいということで、東京の輸入専門の鉄鋼商社へ入社と同時に来日しました。順調に働いていましたが、次第に韓国で最初に担当した鋼管・特殊管を再度扱いたいという気持ちが芽生えるように。21年12月、住商メタルワン鋼管に転職しました」

――鋼管の魅力が忘れられなかった。

「鉄鋼全体から見ると鋼管・特殊管はニッチな分野で、ロットが小さくて仕様が細やか。しかも客先からの要求が厳しい。だからこそ、全てをクリアできて少量でも受注できた時、達成感があったんです。どうしてもまた鋼管・特殊管を売りたいという思いが強かったですね」

――現在の業務は。

「ニッケルアロイ鋼管やステンレス鋼管の販売を担当しています。向け先は石油化学系、発電系など。担当範囲は欧州、北米、南米、東南アジアなどさまざまです」

――大変なことを。

「とても重要な場所に使われるものばかりなので仕様が非常に細かく、客先との会話についていくために書類をしっかりと読み込み知識を吸収しなくてはなりません。理系ではないので、元素記号から技術面まで勉強しましたね」

――うれしいことは。

「担当した客先から初めてオーダーを頂けた時ですね。22年に東南アジアで大口のオーダーを頂けたことがあって。仕様から納期調整、次の案件も考えながらさまざまな交渉をしました」

――海外出身ならではの悩みも。

「北米の客先が来日された時に、ご要望で日本観光をしたことがあるのですが、重要文化財などを見て『あれは何?』と歴史を聞かれた時にとても困りました。パンフレットをじっくり見ながらご紹介しましたね(笑)。1日や2日でできることではありませんが、担当品種だけでなく日本のことを紹介できるようにならねばと思いました。料理も難しいです。懐石料理って日本人でも名前が分からないものが出てくることがありますよね。最近は可能な限りお店から事前に料理名を聞いて、英語で説明できるようにしています」

――働く上で感じる母国との違いは。

「韓国の鉄鋼業界も日本同様に古いと言われていて、軍隊式のような、上からの指示は絶対という風潮がありました。日本でもそういう雰囲気の残る企業が一部あるかもしれませんが、住商メタルワン鋼管ではそういう部分がなく風通しがいいなと。私も業務中にいろんな意見を伝えていて、失礼じゃないか心配になるほど(笑)。上の人もそれを受け止めようとしてくれる風土がありますね」

――グローバル人材に増えてほしいか。

「会社の方向性によると思いますね。会社としての競争力を維持するため、海外進出のためなど、目的をきちんとした上での採用であればぜひ増えてほしいです」

――業界にどう変わってほしいか。

「急激に変わる必要はないと思います。最近はDXや環境対策など新しい話題が多く、良くなりつつあると思います。鉄は紀元前から現在に至るまで使われていますよね。それはその時々に合わせて変化し、早かれ遅かれその時代に適応してきたからだと思うんです。今後もその都度変化に追いつく姿勢を見せ続ける業界になってほしいですね」

――今後の目標を。

「水素などの新エネルギーが増加し転換の時期にあると思うので、知識と経験値を生かしてそれらに使われる特殊管を担当したいです。特殊管において他の追従を許さないくらいのチームを社内で作りたいですね。事務作業の自動化にも力を入れているので、普及に努めていきたいです。もし機会があれば、北米や欧州などで海外駐在をしてみたいです。日本も海外ですが(笑)、そんな経験ができたらなと思います」(芦田 彩)





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