日本の鉄鋼業界ではさまざまなルーツを持った人材が活躍している。南電機(本社=大阪市西区、岡崎英雄社長)執行役員本社営業推進部長の清水鷲さんは中国出身で、業界で働く中で帰化した経験を持つ。清水さんに来日したきっかけや現在の仕事内容、母国との文化の違い、今後の目標などについて聞いた。
――来日前は。
「中国・ハルビン出身で、10月に初雪が降るような寒い地域で育ちました。中学生の時に親戚が名古屋に住んでおり、宇多田ヒカルさんのアルバムをもらったのがきっかけで日本に興味を持つようになりましたね。またアニメ『美少女戦士セーラームーン』が放送されていて。主人公が学校を遅刻するシーンなどを見て、中国の文化と全然違うことに驚き、心を引かれました。中国では遅刻なんて絶対にありえないことでしたから」
――19歳で来日。
「高校卒業後、留学生として来日しました。一人っ子政策の真っただ中に生まれたので、両親は唯一の子供である私を遠くに行かせたくなく、反対されましたね。両親に内緒でこっそりと留学準備を進めながら中国の日本語学校へ。2003年10月に来日し、日本の語学学校を経て駿台予備校で学び、関西学院大学経済学部を卒業しました」
――卒業後は。
「予備校で知り合った中国人の友人がリサイクルプラスチックの輸出業を起業したので、仲間に加わりました。中国語を使う仕事で、お客さまも皆中国人でした。職業病で、今でもクリアファイルやペットボトルを見て瞬時に素材を言い当てられます(笑)」
――鉄の世界へ。
「中国の政策でダメージを受け、リサイクルプラスチックの輸出業が廃業に近い状況になったんです。友人とお別れして別の道を歩もうと決意。南電機はハローワークで見つけました。ものづくりをする会社に入りたかったことや、取引先に中国や台湾があることから興味を持ち応募しました」
――仕事の担当を。
「最初は大阪で営業をしていましたが、今は北海道から沖縄まで、全国で拡販推進担当をしています。特に日本製鉄製の黒ZAMを使用したケーブルラック、レースウェイなどの拡販に注力。工事業者やデザイン事務所などを回り、既存のお客さまに採用していただけるようデザイン性の高さや使用方法、塗装レスによる環境への優しさなどをご紹介しています」
――うれしいことは。
「いろんなお客さまに会えること。『もっと早く南電機の商品を知りたかった』と言っていただけると自信につながります。もともと人に会うのが好きなんですよね。最近では大阪・関西万博の玄関口である大阪メトロ夢洲駅のコンコースに商品を納入したのですが、規模の大きさや万博に関われていることに誇りを感じます。神戸アリーナにも商品を納入しました。機会があれば直接見に行きたいです」
――母国との違いを感じることも。