2024年5月1日

住友商事、資源グループ始動/グループCEO/矢崎耕一郎氏/上流とトレード 強み融合

住友商事で鉄鋼原料、非鉄金属を担う資源グループは上流資産、鉱山運営ノウハウやトレーディングの強みを生かし、新たな価値を創出する。メリハリを付けた上流投資、中下流分野で付加価値を高めるというグループCEOの矢崎耕一郎執行役員に聞いた。

――組織変更の狙い、新組織の機能は。

「旧資源・化学品事業部門は資源、エネルギー、化学品も入った所帯だったが、今年4月、全社で6つの部門とエネルギーイニシアチブ(EII)という7つを、9つのグループに再編した。全社で44ある戦略単位のストラテジック・ビジネス・ユニット(SBU)を9つに分けた。旧資源第一、第二本部が資源グループになってSBUは非鉄金属、アルミ、コモディティビジネス、鉄鋼原料・炭素と石炭・原子燃料の5つだ。どこにより経営資源を投入するかメリハリを付ける。本中計(2024―26年度)では強みのあるところに新たな投資もして人員も投入する。目的に応じて価値を提供できる、将来の成長につながる分野を見極める」

――シエラゴルダ銅山を売却した。

「前中計でシエラゴルダ銅山を売却した。銅への注力は変わらず、競争力のある案件にシフトした。ケブラダ・ブランカ(銅山、QB2)は当社が5%、住友金属鉱山と一緒に住友グループで計30%の出資。資源事業は条件が良いところから順番に開発され、課題のある案件は後から開発される。QB2は、現在は稼働率を上げていくランプアップの段階、標高4400メートル程の高地に位置し条件は厳しいが、バリューアップできる楽しみな案件だ」

――何を重視するか。

「1つはバッテリーメタルで、銅もアルミも含めてニッケル、コバルト、リチウムを念頭に置いている。もう1つは鉄鉱石で、ブラジルと南アに上流案件を保有している。我々として価値を提供できる分野を絞る。鉄鉱石でもバリューアップしようとしており直接還元鉄(DRI)やHBI(ホット・ブリケット・アイアン)製造に見合う原料の供給を検討している。銅は再生可能エネルギー、EV化でより必要になる。当社はボリビアのサンクリストバルでパートナーが破産した際、100%化し、収益化した。こういう経験をした人が当社にはいる。マダガスカルのアンバトビーニッケルプロジェクトにも、貴重な経験をしている人が多くいる。同プロジェクトも、マイノリティから始まって今はオペレーターになっている。アンバトビーは、収益貢献までいっていないが、色々な経験を積んでおり、人的資源は財産であり強みだ。当社は商社の中でも独自の取り組みをしていると見られている。銅ほかの案件に我々ならではのバリューを発揮したい」

――石炭事業は。

「一般炭は新規はやらず、2030年には終える方針は変わらない。原料炭は必要だ。新たに行くか考えどころはあるが、今あるところをしっかりやる」

――トレードビジネスは。

「トレードを担当している人も多くいる。非鉄、鉄鋼原料や炭素だ。石炭もトレード部隊が強い。コモディティビジネスは貴金属から派生して電力系、排出権、エネルギー系も手掛けており現物の取引とデリバティブを組み合わせたソリューションを提供できる。ポジションを取るというより、価格を安定させる等色々なパッケージを提供している。物流に絡んで各業界に入るので世の中の動きで先手を打てる。こういうところを大事にして上流とトレーディングを組み合わせて色々やりたい」

――具体的には。

「1つがリチウムだ。EV用電池の需要もアップダウンが激しいが、10年以上前からやってきた知見を使いながら、バリューチェーンでどこに利益の源泉があって、どこが足りないのか見ながら入っていく。中流では、ライオンタウンという豪州の会社と組んでFS中。色々なところに布石を打ち、価値を見出せるところで種々取り組んでいきたい」

――DRI用鉄鉱石に進出する。

「そういった用途も意識しつつ、ブラジルの案件は検討している」

――MUSAの拡張に絡んでDRI向け鉄鉱石の設備投資を来年意思決定する。

「許認可等、色々な要素があり流動的だが、実現に向けて検討を続けている」

――日本向けか。

「決まっていない。事業化する段階ではそういうところを固めながらだが、世の中に求められる原料になるものと信じている」

――DRIそのものを作る計画は。

「価値の最大化に繋がるようであれば、我々のビジネスとして十分あり得る」

――QB2の拡張は。

「検討が始まった段階。立ち上がったプラントをフルキャパまでもっていき安定させる。地下に巨大な資源があり、何10年、100年かけて掘っていくのか、あるいは拡張していくかは、鉱山業では常に考えられるところ。銅の需要は必ず伸びると見ている。既存の銅鉱山が枯渇し、品位が薄まって減っていくことから、誰かが新しい鉱山を開発する、ないしは拡張していかないといけない。QB2は鉱体が大きいのでやりようが色々ある」

――今は年産24万トン。

「いずれ、年産30万トンにはもっていきたい」

――拡張の時間軸は。

「技術的、経済的な検証を詰め、許認可取得に動く。年単位で動く」

――銅はほかに新規投資の余地はあるか。

「銅は新たに資産を積んでいく。当社では、過去、銅はバツ・ヒジャウ鉱山をインドネシアに保有し、最終的には売却した。シエラゴルダも整理した。これから、モードを切り替えて積み増していくステージだ。当社の強みや知見を生かして案件を積み増したい。そのメインが銅だ」

――アフリカも可能性はあるか。

「あると思う。ただカントリーリスクがある。我々はマダガスカルや南アフリカで事業を行っているが、国によって全然違う。国も安全で案件も優良という案件はなかなか無い。どういうリスクなら取れるかを見ながら案件を絞り込んでいく」

――ニッケルはまずアンバトビーの安定化か。

「そうだ。新しいところも見ていたが、新しい大きな開発はインドネシアかつ中国資本が多い。需要を超える開発が一気に進んだところがあり、若干緩くなった。新規開発は今ではないという感じを持っている」

――アンバトビーはどう競争力を高めるか。

「複雑なプラントで、ニッケルを造る設備だけでなく補助プラントも自分たちでやっている。硫酸を造るとか石灰石を買ってきて石灰を造るとか、水素のプラントとか。どこか不具合が起きると全体が影響を受ける。ベースラインを上げると言っているが、アップダウンはありながら平均生産量を上げることに注力している。年4万―4万5000トンに持っていきたい」

――アルミは。

「製錬をマレーシアでやっている。それ以外にも、トライアローズという米国の缶材を作る工場があり、ここはUACJが80%、当社が20%出資している。アルミは、よりグリーンに、を念頭にやっているが課題はある。電力を大量に消費する事業なので、電源を再エネ由来にするのが肝要だが、世界中を見てもまだまだだ。マレーシアのプレスメタルの案件は水力発電由来でやっているので、グリーンアルミと言っている。このグリーンアルミをいかに最終消費者まで繋げていくチェーンをつくるかは注力すべき取り組みだ。米国の缶材工場では、スクラップを使う比率を高めている。そのための設備投資もしている。アルミの地金そのものは、CO2を大量に排出したものもあると思うが、それをいったんCO2カウントした後にリサイクルされてくることから、スクラップのCO2排出量は限りなくゼロに近い。リサイクル比率をいかに高めるかは大きなテーマ。スクラップ比率を高める取り組みはその他の事業展開も考えていきたい」

――グリーンアルミのプレミアムは。

「ちょっとずつ出てきている。まだまだ物足りない。付加価値を業界のみんなが認識して対価を払うという構造にしていくのは、業界としてやらないといけない」

――グリーン合金鉄、ニードルコークスとかメニューは多い。

「当社の強みでもあるので、トレードを含めた取り組みは非常に重要だ。アルミを電解するアノード、カソードも元々はカルサインコークスというコークスからできている。そういうバリューチェーンはしっかりと取り組んでいきたい」

――ビンツルのプレスメタルは2年前に増強した。

「今は年産108万トン」

――さらに増強するには電力が必要。

「再エネ由来電源でしかやるつもりはないので、増強となると確保できるか次第になる」

――条件が合えば他の地域でも。

「そうだ」

――グループをまたぐ案件も多い。

「戦略単位で44のSBUだが、世の中が動いているので取り組みが変わってくる。社内の横の連携は常にある。特にEX(エネルギートランスフォーメーション)グループは全部のグループと関わる。コミュニケーションは強化されて一緒にやるものもある」(正清 俊夫、田島 義史)

▽やざき・こういちろう氏=慶大法卒後、93年入社。幼少期を米国で過ごし、海外志向だった。非鉄系資源投資事業が長く、ボリビアの鉛・亜鉛鉱山投資をまとめ現地にも駐在した。20年ニッケル・コバルト事業部長。23年資源第一本部長。本年4月現職。休日はゴルフ。プライベートは柔軟性が信条。70年10月2日生まれ、東京都出身。

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