2025年11月27日

経営戦略を聞く/ジェコス 野房喜幸社長/サービス対価取得で成果/海外、まずはシンガポール軌道に

ジェコスは2025年度からスタートした新中期経営計画が順調に進捗、本年度第2四半期業績は連結で増収増益を記録した。野房喜幸社長は「利益重視へ舵を切り、この数年間取り組んできた採算性重視の受注活動の成果が出てきている」と強調する。みずほリースとの協業推進、公共土木の強化を実践。海外ではシンガポール・FUCHI(フチ社)とベトナムでの展開を強める。野房社長に取り組みを聞いた。

――26年度第2四半期の業績評価から。

「連結で売上高549億2100万円(前年同期比2・1%増)、営業利益37億3100万円(同35・6%増)、経常利益41億2200万円(同51%増)で利益面は想定を上回った。前年度から堅調な需要は続いているという認識で、全体的に環境は良かった。その中で制約として工事の現場管理要員があり、需要はあるものの、リソースに合わせて受注する方針で、この数年間やってきた」

――売上抑制とは。

「我々には商社機能もあるが、この中には採算の低い流通販売取引もあり、この2年くらい前から計画的に抑制してきた。整理すべきものは整理し、今後は、賃貸・工事を増やしていくことからこれ以上、売上が減少することはなく、成長に伴い増加していく局面になると考えている。」

――営業利益のプラス要因は。

「下期に予定していた物件が順調に進捗し、上期に計上できたことが挙げられる。さらに制約となる工事の現場管理要員について、6人増員し、首都圏における1日に対応できる現場数を52現場から58現場に増やした。これが賃貸、工事のプラス要因として寄与。これまでの利益改善の成果も徐々に出始めている。」

「サービス対価の取得も大きい。物件の大型化、工事短縮により、求められる設計も複雑化、高度化している。これまでは付帯サービスという色彩が強かったが、1年前から見積もりに織り込んで、設計費を取得するよう努めてきた。高度な設計内容をサービスとして提供し、適正な対価を得る。各営業部にサービス対価の目標を定める活動をしておりその成果が出ている。以前は、設計でコストに見合った対価が得られなかったが、サービス対価として真水で収益に乗せられる。これが営業利益の増加につながり、結実している。稼ぐ力が上がっていると感じている」

――25年度見通しについては。

「業績予想は連結で売上高1100億円(前年度比1・4%減)、営業利益69億円(同0・7%増)、経常利益74億円(同8・9%増)。売上高は当初より下方修正したが、利益面はいずれも上方修正した。売上高は下期に予定していた物件が順調に進捗し、上期に予想を上回って計上できたことから、通期では抑え気味となった」

――今年度スタートした中計の進捗ですが、建機事業で需要減退地域の対策を掲げています。

「拠点を置き、人を配置し、売上高を上げるというやり方は見直す。本来の力が発揮できていない東北については、テコ入れを図る。今年関東でも拠点の集約を実施し、一部の営業拠点を、地域の製品管理センターとし見直した。成果も出始めている。業務面でも機械の整備要員などを集約、他の営業に回すなど効果は少なくない。東北は苦戦しているが、関東では売り上げ、利益とも改善してきている。より適正な人員配置を進めていく」

「東北は厳しいが、今がボトムと思っている。軽仮設材等の取り扱いを始め、借りていただける商材を増やしていくことにより、プラスに持っていく。ちなみに、重仮設業は地域により受注の強弱がある。強いのは関東、札幌など北海道、博多の再開発や防衛関連がある九州・沖縄、IR、鉄道のなにわ筋線など大阪、やや弱いのが、リニア工事が延長された名古屋、弱いのは東北、四国、中国地方だ」

――地方の需要減を下支えする施策は。

「首都圏や大阪などを中心にした大型プロジェクトに注力する一方、地方の需要減を下支えする観点から公共土木を強化する。水害対策など国土強靭化で需要が出てくる。山谷があっても公共土木のニーズは見込まれ、地元に根差した地場ゼネコンの仕事にしっかり対応したい。地方は地域も広く、北海道、東北、四国、九州などはきめ細かく拠点を置くことはできない。このため地場の特約店の力を借りて、需要を補足していく。この取り組みはより重要となる」

――海外展開は。

「シンガポールの重仮設業者、FUCHI(フチ社)は8月に連結子会社化した。いずれは東南アジアの商圏拡大を目指すが、まずはシンガポールの拠点を軌道に乗せることが最優先で、ここを拠点とした他国への展開は次のステップだと考えている。シンガポールの需要は潤沢で、材料と工事で稼いでいく。他のASEAN(東南アジア諸国連合)地域については本格的にプロジェクトを獲得し、工事を含めて展開するためには、それぞれの国で材料を持つ必要があるが、リスクもある。周辺国は、日本のゼネコンがASEANの本部をシンガポールに置いており、ここでのつながりを軸に進める。設計相談などを受けており、インドネシアの地下鉄工事で加工品の設計を受託した実績も持つ。シンガポールで実業を担う一方、ベトナムの現地法人の設計の力も借りてソフト面でASEAN各国に事業展開していく」

――フチへの人員派遣は。

「今年、2名を増員し、合計4名を出向させた。現地では日本人の工事担当要員も採用した。今後は設計での増員も考えられるが、当面は当社からの出向は現行体制でいく。これとは別に、技術や工事の若手社員を日本から短期間派遣し、海外人材を育成する研修、勉強の場としても考えている。また、ベトナムと同様にフチ社社員の日本での研修も検討している。ベトナムからは既に16名中6名が日本に来日。帰国した現地社員は力をつけて、リーダー的な役割を果たしている」

――山留周辺分野の事業体制構築に向け、ジオ・エンジニアリングを新設しました。

「特化した部隊とし、技術2名、営業工事経験者を1名計、3名の組織とした。知識、知見を擁する人員を配置し、他部門との連携、つなぎ役として機能させ、他社との連携、将来はМ&Aも想定している」

――資本提携するみずほリースは9月に連結子会社のレンタルシステムの株式49%を取得しました。

「みずほリースは昨年4月、当社の株式20%を取得した。その後、両社で協議を進める中で、みずほリースの力をレンタルシステムに活かせると判断し、株式取得に至った。みずほリースはレンタルシステムと同様に建機リースを手掛け、幅広い取引による様々な知見を持つ。鉄板置き場となるサテライトを探す場合など、みずほリースのネットワークが活用できる。商材でも建機リースに留まらず、リース業として幅広く捉えた場合、みずほリースの顧客との関係なども生かせる。コスト面でも、レンタルシステムが自社で購入してリースする商材を、みずほリースから一部商材を調達し、オペレーションリースの形で展開しており、メリットが出ている。移動式室内足場『ヘリオムーブ』など戦略商品の市場投入も並行し、各取り組みによって企業価値も高められる」







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