2026年3月2日

財務・経営戦略を聞く/神戸製鋼所 取締役執行役員/木本和彦氏/鉄鋼価格改善に最大注力/中国アルミ板合弁 現地車向け拡販が鍵

――通期の実力ベースの連結経常利益予想を1180億円と前回予想から60億円下方修正した。素材系の不振が続き、主に鉄鋼のメタルスプレッドが悪化しているが、一方で受注が堅調な機械系が補っている。

「前回から下方修正した主な要因は、鉄鉱石価格の上昇と円安、鉄鋼メタルスプレッドの悪化。電力事業の神戸発電所3号機が定期点検で大型ナットを調達するのに時間を要し、再稼働時期が当初計画から4カ月ずれ込む影響もある。素材系は低調な需要にさほど変化はなく、数量の減少が収益を押し下げている。素材と電力の減益分を機械中心に取り返している状況。機械はエネルギー・化学向けで一部案件がずれ込んだが市場の潮目は変わらず、高い利益を見込める。営業活動中の案件は円安が優位に働くが、受注時に為替を予約するため為替差益はほとんどなく、為替の業績上の影響は小さい。建機は販売台数の減少が続いたが、欧米や東南アジアで需要が回復しつつあり、底を打った感触。円安は1―3月期に少しプラスに作用し、足元円高に少し振れたが、今の為替水準であれば競争力や業績に大きな変化はない。建機はコスト削減の余地があり、利益を改善していく」

――米国関税リスクのマイナス影響を前回の年30億円から同15億円に修正した。

「素材系事業で完成車輸出の減少リスクを想定したが、顕著な影響は生じていない。鋼材の輸出量にも変化はない。建機の直接輸出で10億円程度、米現地法人の輸入品の関税負担などで5億円程度のマイナス影響を織り込むが、建機は価格を転嫁しきれなかった。新年度に価格交渉の中で取り戻していく」

――新年度に向けて。課題の素材についてまずは鉄鋼の収益をどう改善していくか。

「25年度は解体費や軽微な設備トラブルに伴う想定外のコスト、さらには人件費など主原料以外のコストも上がった一方で販売価格が下がった。主原料価格の上昇分は期ずれで取り返していくが、26年度は諸コストが上がる要素があり、価格転嫁が遅れるほど減益となる。製品価格の上げ幅を広げ、主原料コストプラスアルファで早めに値上げを進める必要がある。新年度の最大の課題は鉄鋼製品の値上げ。それも大幅に上げなければならないと考えている」

――25年度の粗鋼生産量は前回並みの580万トンを予想している。26年度は同程度を維持する見通しか。

「生産の下方弾力性はまだあるが、コスト上昇の懸念が生じる水準となっている。ひも付き向けが多く自動車生産などが増えない限り、粗鋼生産を大きく増やすのは難しい。現状の需要量が平時とすれば、その中で何ができるか。KOBELCOらしさを追求し、差別化を図っていく」

――主要需要分野の自動車は大きな回復が期待しにくい。

「国内販売に加え、日系自動車は欧米の景況感が決して悪くない中でさほど増えていない。中国では苦戦し、東南アジアなどでも目立った好材料は見当たらない。ただ、現在のサプライチェーンを維持する前提で、足元が底に近いとみており、26年度の国内生産台数は前年並みを予想している。造船や建築は人手不足などがネックとなり、大幅な回復は期待できそうにない。量に依存しない収益を追求する。需給が締まらないからコスト転嫁できないということはない。自動車や造船、建築などいずれの分野もコストをしっかりと価格に転嫁していく」

――アルミは半導体関連の需要の戻りが依然鈍い。

「検査装置メーカーや部品メーカーなどお客様の声をよく聞き、慎重に見極める。需要のドラスティックな回復は見込めず、緩やかに増えていく見込み。飲料缶は昨年、お客様のシステム障害の影響から回復基調にあるが需要は大きく変動することはなく、26年度も横ばいを予想している。ディスク材や厚板の需要はお客様での在庫調整が終わり、徐々に軌道に乗っている」

――アルミ製品の価格転嫁を進めてきている。進展は。

「需要が低調に推移していることから、自動車向けや飲料缶向けの値上げの進展は想定を下回っている。お客様の理解も得ながら値上げを継続していくが、製造の整流化にも力を入れ、コストダウンに取り組んでいる。真岡製造所は下期に整流化が進んだが、生産水準がやや低く、下期に見込んだアルミ事業の黒字化は数量の影響で未達となる。コスト競争力をみると黒字化は可能でも高収益事業とは言い切れない。コストダウンや製造の整流化など真岡製造所の改善をさらに進めることで目指す利益水準は見えてくるだろう」

――昨年、中国で自動車材アルミ板合弁事業を宝武鋼鉄集団と立ち上げた。ここまでで得られた成果は。

「初年度(12月期)ながら、黒字化の目途が付いてきた。厳しい市場環境に加え、初年度特有のコストがかさむ中でも集約効果をうまく引き出せた。宝武グループが相当に力を入れてくれており、各種作業を進めるスピードが速く、非常に頼もしく思っている。数量は両社合算から大きく変わっていないが、母材を従来の韓国製から現地材に可能なところから切り替え、コストやリードタイムなどお客様に評価されている。現地生産のアドバンテージの評価が高まれば、販売が増えていくとみている。欧米系自動車向けは当社が販売してきており、今後は中国資本のEVメーカー中心に販売をどう増やしていくかが焦点となる」

――米国のアルミサスペンション事業は。

「米国のKAAPはこの半年の利益が目標水準にほぼ届いている。誰でも製造できる商品ではなく、競争優位にある。生産性向上により、下期には収益力を持つ事業として認められる水準に達した。これまでは受注量は多かった一方で生産が追いつかず、社員を多数派遣して操業を支援してきたが、生産体制の立て直しが進んだことで、今は操業支援にかかる費用が不要となり、変動費も大幅に改善した。受注も申し分ない。国内含めアルミサスペンションは当社の競争優位の事業であり、収益性を一段と高めていきたい」

――銅板やチタン事業の状況について。

「銅板事業は自動車向けにあまり変化はみられないが、半導体の回復による伸びしろは期待できる。お客様のマーケットシェアに依存するところが大きいが、ここ数年はマクロの動きとおおよそリンクし、大きな変化はみられない。チタンのお客様は航空機向けと一般用途の熱交換器向けで約半々だが、航空機向けは安定し、今後も徐々に増えていく見通し。一般材は競争が激しく、直接輸出や最終製品の間接輸出も決して安泰ではないが、市場の成長が続き、伸びていく分野とみている」

「素形材事業は鋳鍛鋼、チタン、サスペンションなど多くのユニットがあり、鋳鍛鋼は比較的堅調だ。高市政権が造船分野に注力する方針を打ち出しており、期待が膨らんでいる。造船の建造量が将来的に増えてくれば、鋳鍛鋼の需要が大きく増える可能性がある。伸びしろが大きいのはチタンとサスペンション。需要は拡大の前夜まで来ている印象で、次の段階でどこに成長投資を織り込むか。素形材は明るい話題がいくつか見えてきそうだ」

――変革への取り組み「KOBELCO―X」の進捗、手応えは。

「言葉や考えは社内で浸透し、物事を変えることへの抵抗感は薄れてきている。アイデアや進め方など歯車は動き出し、これから変革が具体化してくるので楽しみにしている。社員4万人がそれぞれ少しでも変われば、大きな変化につながっていく」(植木美知也、増岡武秀)









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