人財戦略を聞く/電炉編/東京製鉄/執行役員 経営企画本部長/津田 聰一朗氏/採用活動、環境企業と競合/「適材適所」支える少数精鋭主義

人財戦略を聞く/電炉編/東京製鉄/執行役員 経営企画本部長/津田 聰一朗氏/採用活動、環境企業と競合/「適材適所」支える少数精鋭主義
 東京製鉄はカーボンニュートラル(CN)の加速によって業容が拡大しており、新卒、キャリアともに採用を増やしている。津田聰一朗執行役員経営企画本部長(総務管掌)に「少数精鋭主義」で知られる東鉄の人財戦略を聞いた。

 ――日本では人口減少、少子高齢化によって人材の採用が年々難しくなっている。

 「就活生にとって、鉄鋼業界の中でも、地球環境保全やCNに貢献している電炉業に対する注目度が高まっているのを強く感じており、当社の採用募集への応募人数も漸増している。近年、当社は『鉄鋼業』ではなく、『環境関連産業』のカテゴリーに属すると認識されていると聞く。採用については高炉メーカーや電炉他社ではなく、環境関連の企業と競合するケースが増えている」

 ――採用活動をどのように展開しているか。

 「現時点の社員数は1161人。長期環境ビジョン『Tokyo Steel EcoVision2050(エコビジョン)』では、国内鉄スクラップ購入量(全社生産量に相当)を2030年度で年間600万トンに引き上げる目標を掲げている。当社は間接部門をスリム化した『小さな本社』、効率化や省人化による『少数精鋭主義』を経営の基本にしてきたが、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用しつつ、エコビジョンの目標を達成するために必要な人員は確保していかなければならず、新卒者、キャリア人材を含めて採用活動を強化している」

 ――求めている人材は。

 「応募者には面接時などで『当社に入社するだけで社会貢献になる』と伝えている。新卒採用では『鉄スクラップの高度なリサイクルを通じ、環境に優しい電炉鋼材を社会に供給している』という当社の事業展開や、進めている方向性を理解し、共感してもらえることが重要。キャリア採用では近年、他メーカーや鉄鋼商社の出身者なども入社しており、即戦力として活躍するだけでなく、各人のキャリアを糧とした『客観的に東鉄を見る視点』を持って業務を遂行する能力を求めている」

 ――採用方法を。

 「大卒者については理系3人、文系3人が採用数の平均的なイメージ。今春は理系、文系2人ずつの4人で、結果的に例年よりも少なかった。『経営資源』である優秀な人財の獲得を増やすため、来春入社の新卒採用については採用選考をバージョンアップしている。本社総務部に採用活動を担う社員で構成する専門グループを設けた。また通常の採用スケジュールに加えて、工場やサテライトヤードの見学会、係長クラスまでの若手社員とのウェブ面談会を企画するなど、社員と学生が交流する機会を増やす」

 ――ウェブページ内の採用特設ページを大幅にリニューアルした。

 「当社の歴史や事業、製品を紹介するだけでなく、『データでわかるトウテツ』コーナーでは生産量や財務指標、環境貢献を表す数値などを公表し、学生にも理解しやすい内容にした。また『プロジェクトストーリー』と題して低CO2鋼材『ほぼゼロ』と、スクラップ集荷拠点『サテライトヤード』の誕生秘話を社員が対話する形式で紹介しながら、当社が求める人材を示した」

 ――小林幸子さんをチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSuO)に任命し、各媒体で東鉄をアピールしていることも大きい。

 「小林幸子さんによる『ほぼゼロ』アピールキャンペーンが徐々に効果を表しており、小林幸子さんのポスターを見て応募し、入社した学生もいるくらい。元々はBtoB事業拡大に向けたブランディング戦略だが、同時に一般消費者にも浸透していることが分かり、採用活動にも寄与していると評価している」

 ――女性の活躍やダイバーシティを推進する動きが加速する。

 「例えば海外人材も鋼板部で韓国出身の管理職が活躍している。女性活躍も推進しており、九州工場では初の管理職も誕生した。これは男性にも関わるが、社員の要望を踏まえて、17年に一般職を廃止している」

 ――社内学習制度はどうか。

 「衛生管理者など工場スタッフを中心に必要な資格を取得するよう指導している」

 ――近年では大幅な人事異動が増えている。

 「24年4月に組織を改正し、本社に経営管理本部(現経営企画本部)を新設した。本社スタッフを工場に異動させるなど、社内の意思疎通を推進するための配置転換も積極的に行っている。26年4月では営業本部内のスタッフを大幅に替えている。国内鋼材市場がシュリンクする中、残念ながら当社の販売数量も減少している。例えばH形鋼はトップシェアであるため、需要減少局面では大きなマイナス影響を受ける。一方で、CNが加速する環境下、低CO2など『鉄にまつわるストーリー』が求められ、買われる時代になっている。マインドをチェンジしながら国内市場における攻め方、売り方を再検証し、今の時代に合った方法を模索するべきとの判断から、現行体制下でベストな適材適所の配置とした。『小さな本社』『少数精鋭主義』ゆえに可能になる配置換えであり、これからも人材流動性を高める人事を追求し、当社の強みを発揮することで企業としてのブランド力を高め、人財確保につなげていきたい」

(濱坂 浩司)



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