「予算、前年を上回り、過去最高益となった。EEWが計画比でプラスとなったのが最大の増益要因だが、既存事業も市場環境が厳しい中で健闘した。国内外のグループ会社は合理化・効率化策を推し進め、下方耐性を強くした。鋼材市況に寄らずに一定の収益を上げられるよう体質強化が進んだ。国内、海外ともに既存事業の下方耐性が向上し、EEWを除いた利益も前年を上回った。鉄道関連は米国だけでなく、アジアやインドなど非米も堅調。資産の入れ替えを実行し、中国の天津と中山のスチールサービスセンター(SSC)は地場有力企業を新たなパートナーに迎え、当社は戦略的にマイナー出資へと持分を再構成した。既存のサプライチェーン(SC)を守りつつ、中国のパートナーとの協業により新たな商流を取り込み、事業ポートフォリオを入れ替え、持続的な成長を目指す。上海のSSCは中国華東地域における加工能力の適正化を図り事業終了し、経営資源の最適配置を進めた」
――26年度も市場環境は厳しいが、足元の事業の状況は。中東情勢の影響はどの程度受けているか。
「当社の事業は今のところ堅調に推移している。内需に大きな変化はみられず依然低調だが、データセンターの建設が増え、建設に関わる資材や電力需要が増える中での電磁鋼板やバックアップ電源用エンジン向けクランクシャフトの需要増が見込まれる。海外で原子力発電の建設が進む動きがみられ、原発用の特殊管の需要を捕捉していきたい。政府による熱延・冷延鋼板類のAD調査の影響がどう表れるか、需給へのプラス効果を期待して注視している。鉄鋼各社が鋼材値上げを進め、当社グループも価格改善に注力していく。中東向けの鋼材輸出は若干減っているほか、自動車など需要産業の中東向け輸出が一時的に減少しているが、他の地域や国内向けで補っているところもあり、全体として大きな影響は受けていない」
――国内事業のさらなる強化策は。
「マツダスチールと紅忠サミットコイルセンターの統合を昨年完了し、統合効果を発揮していく。国内事業は引き続き合理化、効率化を進めていくが、単に再編するのではなく、DXの活用含め各事業の機能を強化していく。人件費やエネルギーコスト、中東影響で梱包材などの価格も上がり、コスト転嫁を進めていくが、高い機能を提供しなければ需要家に値上げを受け入れてもらえない。従来から取り組んできた合理化・効率化の効果で国内事業会社のサミットスチール、北海道シャーリング、マツダスチール、大利根倉庫、住商メタルワン鋼管、伊藤忠丸紅住商テクノスチール、NSステンレスはいずれも堅調な業績を上げているが、人手不足に対応する省力化工法など需要家のニーズに応えられるよう機能をさらに磨いていく」
「GXスチールを広めていくことも当社の使命の一つだ。高炉各社の供給力が増えていく中で、販売面でしっかり貢献していきたい。当社のGXスチールの販売量は多くはないが、25年度は前年よりかなり増えている。GXスチールの価値を理解する顧客は確実に増えており、普及に力を入れていく」
――26年度の純利益は290億円と増益を予想している。
「欧州の洋上風力建設が今後一時的な端境期に入るため、EEWは昨年ほどの収益は見込めないが、中国のSSCの再編による資産入れ替えの効果が今期に顕在化し、相殺する格好となる。欧州の洋上風力は29年以降需要が回復する見込みであり、欧州のモノパイル製造で圧倒的なナンバーワンを目指す。既存事業は国内外とも市場の状況が厳しい中で前年並みの利益を見込む。この数年、減少傾向が続いた内需は底を打った様子がみえ、当社グループも価格改善とともに販売量の維持に努める」
――成長を牽引する海外事業について。北米でM&Aなど大型投資を検討している。
「現地の加工拠点は鋼製家具向けが不振などそれぞれの需要家の事情でバラつきはあるが、鋼材市況が上がり、シェアを伸ばしたところもある。北米のグループ全体の収益は計画通り推移しているが、今は順調な既存事業も数年後はどうなるかわからない。投資案件を多く持ちながら厳選し、確実に成功する投資を進め、持続的な成長を目指す。薄板事業は拡大に加え、より付加価値の高い川下の加工分野も検討する。特に方向性電磁鋼板は成長する分野。鉄鋼流通のマジック・スチール買収に続く『ネクスト・マジック』をここ数年探求してきており、実現はまだだが、引き続き検討を進めていく」
――日本製鉄が買収したUSスチールの改革を進めている。高品質の鋼材供給が増える見通しであり、商社としていかに対応していくか。
「住友商事としてピッツバーグ支店に社員2名を5月に派遣している。ピッツバーグ支店と一緒に当社も北米事業を強化し、USスチールの戦略にアライン(方向性を一致)していきたいと考えている。北米で長年手掛ける鉄道関連事業は当社の特長、強みであり、今後もその強みを生かした事業を展開する。重量物の石炭輸送は減っているがコンテナ輸送が増え、鉄道関連の需要は堅調だ。先進国で唯一、鉄鋼需要が増えている国であり、幅広い視点で投資を検討している」
――インドはグループの特殊鋼メーカーのムカンド・スミ・スペシャルスチール(MSSSL)が事業の核となり、能力増強を決めている。
「MSSSLの能力増強投資を進め、29年度以降の収益貢献を見込んでいる。二輪車、四輪車などマーケットは伸び、中長期的に成長が続く見通しから、薄板関連でも新しい事業を検討している。自動車、建材、電機、電磁鋼板など多様なマーケットがあるが、SCを確保するには加工拠点が必要。単にSSCではなく、建材や電磁鋼板の加工など付加価値の高い事業を検討したい。地場企業との連携は選択肢の一つであり、よいパートナーを探る。二輪車を製造するバジャジグループとは良好な関係にあり、バジャジのネットワークの活用に加え、住友商事グループがインドで広く持つ有力企業とのコネクションも生かしたい。既存ビジネスの下方耐性は国内外で強くなり、資産の入れ替えも一定のめどがつき、これからは持続的成長のために新規投資を増やしていく」
――日系需要家が多く立地し、日本高炉のホームグラウンドであるASEANでの事業のあり方は。
「ASEANに広く展開するSSCは当社の強みであり、引き続きしっかりと事業を継続していく。拡販策の一つとしてパートナーの中国企業と協調して、タイの自動車やエアコン関連の中国・台湾系企業への販売を増やしていく。ベトナムは経済が回復に向かい、建材需要が好調で鉄筋用棒鋼のメーカーは収益を上げている。薄板関連のメーカーは米国向け輸出が難しくなるなど供給が過剰気味のため、鉄筋メーカーほど改善はしていないが、建材需要が増えていることで当社グループの亜鉛めっき鋼板メーカーの事業は堅調だ。中国系や台湾系の企業のベトナム進出が増えており、新たに生じる需要を捕捉していく」
――高級鋼の一大市場である欧州をどう攻めていく。
「チェコのSSCは堅調だ。第2スリッターが5月に稼働を始めており、自動車・電機向けなど受注を増やし稼働率を上げていく。欧州の需要産業は東欧に移ってきており、チャンスが広がる。パートナーのスペイン企業のバメサはフランスやスペイン、トルコ、モロッコに拠点を持つが、中欧・東欧で当社と一緒に拠点を設けたいと考えている。グリーンフィールドで立ち上げる考えはなく、M&Aを検討し、チャレンジしたい。日本製鉄がスロバキアで直接の子会社とするNSSKの戦略にアラインできる活動を進める。アフリカ市場を取り込む方策も検討しているが、戦略としてはこれからであり、東アフリカの二輪車市場で高いシェアを持つバジャジとの連携の可能性などマーケティングを進めていく」
――来年度からの次期中期計画に向けて注力するポイントは。
「中計の作り込みはこれからだが、投資案件を数多く持っておきたい。住友商事の鉄鋼グループとの連携や事業部門をまたいだ案件などいろいろと考えている。鉄鋼グループ以外の他の事業グループとも緊密に連携している。住友商事がこのほど完全子会社化したITサービス事業のSCSKとの取り組みを考えるなどグループのリソースを活用していく。5、10年後にマーケットがどう変化していくか。市場の動向を見極めながら、対応策を実行していきたい」(植木 美知也)
























