業界団体トップに聞く/全国鉄構工業協会/永井毅会長/永井製作所会長/物件動き需要回復の兆し/「ものづくりのやりがい」PR/創刊90周年特別企画

業界団体トップに聞く/全国鉄構工業協会/永井毅会長/永井製作所会長/物件動き需要回復の兆し/「ものづくりのやりがい」PR/創刊90周年特別企画
 ――鉄骨加工業の存在価値や社会に貢献する役割、強みについて。

 「鉄は依然として社会基盤であり、社会で使われる金属製品の90%以上が鉄であるため、“鉄器時代”は当分の間続く。特に建築分野は一品一様生産が多く、AIやロボットに簡単に代替されにくい業種だ。その中でS造は工場であらかじめ部材を生産することで現場での労務を大幅に削減できるという大きなメリットがある。建設現場の深刻な人手不足が続く現状を考えると、RC造や木造と比較して、S造は非常に有利な構造と言える。さらに、環境に優しい側面もある。鉄はリサイクル率が非常に高く、製造時に一定のCO2を排出するものの、一度作れば他の建材に比べて環境負荷が低い持続可能な材料だ。鉄骨加工業は高品質な建築部材を安定して供給し、地震などの災害に強い建物を社会に提供するという重要な役割を担っており、それが最大の存在価値と言える」

 ――これまでの需要環境変化と今後の見通しは。

 「リーマン・ショックで大きく落ち込んだ後、東日本大震災を経て、2013年ごろから需要は回復に転じ、約10年間は比較的堅調な時期が続いた。しかし、この3年ほどは鉄骨需要が400万トン割れしている。この背景には、主に建築費の高騰と、働き方改革に伴うゼネコンの受注抑制がある。一方で、26年度が需要の底になると予測している。中止や延期となっていた物流倉庫、データセンター、半導体工場、大規模な再開発などの各種プロジェクトが再び動き出す兆しが見えつつあり、見積もりや問い合わせが増加している。こうした動きから、来年度以降は需要が緩やかに回復していくと期待している」

 ――現在、業界が抱えている主な課題を挙げると。

 「最大の課題は、人材確保。近年の需要低迷と利益減少により十分な賃上げが実施できず、各社、人材獲得が滞っている。昨年、全構協構成員企業に実施した業界動向調査から想定する鉄骨業界の供給能力は約430万トン。需要が本格的に回復した際に供給が追い付かなくなる懸念がある。次いで、コストと品質管理に関する課題も挙げられる。鉄骨を建設現場に搬入する際の荷降ろしの遅延やドライバーの労働時間規制によるコストの増加、また、建築図面の確定遅れ、製作後の追加・変更によるコストや、品質に懸念のある安価な輸入鉄骨の支給対応による修正コストの増加などが負担になるケースがある。高品質な製品を納入する義務があるファブはそれに伴う費用を正当なものとして請求する姿勢が重要だ」

 ――これらの課題に対して、どのような取り組みを行っているか。

 「人材確保、育成と品質向上の両面で、全構協主導によるさまざまな対策を講じている。構成員企業の中堅社員を対象にファブ業界特化型の研修会を全国9カ所で実施しているほか、国土交通省の指導に基づいたグレード管理体制を強化し、顧客からの信頼を高めている。また、契約条件の面では、建築図面の確定遅れや、製作後の追加・変更によるコスト増に対応するため、全構協で統一見積書式を作成した。これにより、適正な費用請求や契約条件の明確化を業界全体で推進している。懸念のある輸入鉄骨については、高品質な製品を納入する義務があるファブとして、しっかりした品質の材料を支給してもらうことや材料修正費用の負担などをゼネコンに要望する活動をしている。さらに、業界の仕事は一般には広く知られていないため、PRビデオなどを通じて“ものづくりのやりがい”や“スキルが身につく魅力”を積極的に伝え、イメージ向上を図っている」

 ――AIやロボット技術の導入によって、未来はどのように変化するか。

 「設計プロセスの革新として、AI技術の進化がゼネコンとのやり取りを効率化する可能性がある。フロントローディングのプロセスにAIを導入し、ゼネコンとファブのAIが協議して迅速に仕様を決定できるようになれば、製造後の手戻りをなくすことができる。また、AIによって設計データが早期に確定すれば、そのデータを活用した製造プロセスの自動化、さらにロボット化が進むと考えられる。将来的に人間のような汎用的なロボットが登場すれば、現場の作業効率が劇的に向上するかもしれない。そのため、国内外の技術動向を注視し、将来の投資先を慎重に見極めていく必要がある。まずは先々の自動化を視野に、構造計算のソフトの互換性などCAD関連の情報収集を進めるべきだ」

 ――最後に、鉄骨業界で働く魅力についてメッセージを。

「鉄骨業界は、文系・理系を問わず誰でもゼロからスタートできる環境が整っている。入社後に溶接やクレーン操作など、仕事に必要なさまざまな資格を取得することが可能で、数年の勉強と実務で図面作成もできるようになるなど、確かな実践的技能が身に付く。切断、穴開け、組み立て、溶接といった一連の工程を通じて、“ゼロからものを作っている”という強い実感とやりがいを得られるのが最大の魅力。自分が手がけたものが巨大な建物として長く残り、あれは自分が作ったと誇れることは、何物にも代えがたい満足感につながる。多くの方にこの業界に興味をもっていただきたい」 (隈元 庸介)

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