業界団体トップに聞く/建設産業専門団体連合会/岩田正吾会長/正栄工業社長・全国 鉄筋工事業協会会長/業界一丸で魅力高める/処遇改善が改革の出発点

業界団体トップに聞く/建設産業専門団体連合会/岩田正吾会長/正栄工業社長・全国 鉄筋工事業協会会長/業界一丸で魅力高める/処遇改善が改革の出発点
 ――近年、地震などの災害増加に伴い公共事業の重要性が増す一方で、インフラの老朽化が深刻な問題となっている。現状の課題についての認識を。

 「甚大化するさまざまな災害の増加により、公共事業は国の安全と人々の生活インフラを支える基盤として、これまで以上に重要な役割を担っている。しかし、現場では、道路の陥没や水道管の破損などのインフラの老朽化が急速に顕在化している。少子化や人口減少に伴い、維持や更新に必要な予算が不足しており、特に地方自治体では従来のサービス水準を維持することが非常に困難になっている。その結果、都市部と地方でインフラ維持の格差が広がりつつあるのは大きな問題だ」

 ――現場を支える人材や技術の継承という観点で、どのような危機に直面しているか。

 「深刻な労働力不足に加え、職種としての人気低迷が続いており、世界に誇る日本の建設技能を次世代へ継承することが極めて困難な状況にある。このまま何の対策も講じなければ若年層の新規入職は期待できず、業界全体のさらなる高齢化と衰退が進む。強い危機感を抱いている」

 ――そうした構造的危機を打破するために、業界の変革としてまず何に取り組むべきか。

 「最優先課題は賃上げと制度改正。国内外の事例を見ても処遇改善は不可欠であり、取り組んできた建設業法の改正は業界変革における“スタートライン”と位置付けられる。適正な価格転嫁を進めることで現場全体の賃金水準を引き上げることができる。ただ、業界内にはこうした変革を受け入れようとする層がいる一方、現状維持を望む層も存在しており、二極化している」

 ――若手や多様な人材を呼び込むためには、賃金面の改善の他にすべきことは。

 「賃金の引き上げと同時に“働き方”そのものを改革することが不可欠。業界内にはこうした変革を受け入れようとする層が増加している一方、変われないと考える層がいる地域もある。現場で働く人たちにとって魅力的な職場環境となるように、夏場の労働時間短縮や建設業の夏休みを提案している。また子育て世代でも柔軟に働けるフレックスタイム制の導入や、地域に密着した託児所の柔軟な受け入れ時間の導入などが重要と考えている」

 ――外国人労働者の受け入れについてはどのように進めるべきか。

 「単なる労働力減少の穴埋めではなく、計画的な受け入れ体制を構築することが重要。将来の建設投資量をしっかりと予測した上で、そのデータに基づき国内人材と外国人労働者のバランスを考慮した受け入れの仕組みを作るべきだ」

 ――近年、大型プロジェクトが増加しているが、これが業界の需給構造にどのような影響を与えているか。

 「数千億円規模の巨大案件が増加、また地方にも点在化したことで、元請けは全国から施工スタッフを総動員するような体制が常態化しつつある。これにより元請けは一つの巨大案件に長期間拘束されることになり、躯体、仕上げなどのパートを請負う専門工事業者は作業完成後にスムーズに次の案件に移行できず、繁閑差対応に苦慮するなどの問題が生じている。従来の市場が持っていた自律的な需給調整メカニズムだけでは機能しなくなっている。また、こうした案件は高い機密性が求められるため、特定の大手企業による寡占化が進んでいることも要因の一つと考える」

 ――受注や発注の構造で、過去の取引習慣から変わったことで発生した弊害は。

 「かつて存在した談合的な仕組みを支持するわけではないが、捉え方によっては品質管理や仕事量をコントロールする“良き調整役”として機能していた面もあった。それが失われた現在、価格の下限がない民間工事では、過度な値下げ競争が横行し現場を疲弊させてきたのも事実だ。請負価格の適正化を図り安定した処遇改善を行うためには、会社単位で実績や能力を正当に評価・受注する仕組みを構築するとともに、繁閑差対策の議論を加速させ、新たな仕組みを作ることが重要だと考えている」

 ――今後、厳しい環境下で、建設関連企業が生き残るための新たな経営モデルとは。

 「今後は“全国規模の動員力”と“中長期的な計画性”を持つ企業が競争優位に立つ。具体的には、100人単位の人員を即座に投入できる組織力が求められる」

 ――長期的に求められることは。

 「民間、地方、国を合わせた全国の建設投資量に関する中長期的な見通しをデータベース化することが必要だ。このことが計画的な受注方針や、外国人も含めた将来を見据えた人員計画の立案につながり、結果として建設業界を安定化させる」

 ――最後に、これからの建設業界の将来像とメッセージを。

 「建設業界は今、歴史的な変革期を迎えている。価格転嫁の透明性を高め、欧米並みの高水準な賃金と働きやすい環境を実現することで、働く全ての人が誇りを持ち、家族からも応援される魅力的な産業へと生まれ変わらなければならない。発注者、元請け企業、専門工事業者が一丸となってこの改革を推し進めていくことで、若い人が入職したい魅力的な建設業にしていくべきだ」(隈元 庸介)

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