商社の経営戦略 構造変化を見据えて/三井物産スチール・阪田尚也社長/現場×物流×総合力で成長/東京本店移転でMBKと連携強化

商社の経営戦略 構造変化を見据えて/三井物産スチール・阪田尚也社長/現場×物流×総合力で成長/東京本店移転でMBKと連携強化
――2025年度はトレードが堅調で連結純利益60億円と前年比1億円増えたが、26年度は市場がさらに厳しく、第1四半期17億円と前年同期の23億円から減少した。

「25年度は油井管と薄板、特殊鋼、レールの輸出が新興国や遠隔地向けに伸び、プラスに寄与した。油井管は中東向け、薄板は中南米向けのブリキや薄板が増え、特殊鋼はインド向けが堅調だった。一方で主力の電磁鋼板は欧米向けが需給調整が入り価格、数量ともに低下し、さらにラインパイプのプロジェクト向けの出荷が延期となり、マイナスに効いた。国内の事業会社は販売量が伸びない中で収益を確保する自助努力を進め、総じて堅調だった」

「今期は第1四半期に減益となったが、昨年第1四半期の水準が高かった反動もある。昨年に一時中断したラインパイプ向けの出荷が今期に再開され、米国の電磁鋼板需要は在庫調整を終え、回復基調にあり、これがプラスに寄与する。インド向けの特殊鋼は引き続き高い水準が続いている。一方で薄板が振るわず、中南米向けはエルニーニョの関係から食品産業が低調でブリキの需要が減少している。中東向けの油井管などの商談がイラン情勢の影響で中断している。中東向けは出荷を抑え、ホルムズ海峡を迂回したルートで輸送を再開している。国内の事業会社は数量が伸びない中で黒字を維持し、健闘している。足元で懸念するのは中東情勢であり、中東向けの商談の中断とコスト増の傾向が続き、商談再開のタイミングの見極めが課題となる」

――26年度に新中期経営計画をスタートした。重点テーマは。

「中期計画で掲げたテーマ『現場×物流×総合力』を成長の原動力にしていく。昨年社長に就任し、『車座』と称して全社員と会話する機会を持ち、当社の強み、持ち味を問うと大半の社員が『人』、『総合力』と答えた。この強みを伸ばしていこうとメッセージとして全社に発信している。働き方が多様化しているが、原点回帰として足で情報を集めて仕事につなげる基本動作を徹底し、大事に取り組む。私も含め需要家との接点を増やしており、現場に足を運ぶ社員が増えている。『三井らしさ』をあらためて打ち出していく」

――具体的にどのような施策に取り組む。

「実行するのは大きく3点あり、事業投資とグローバルトレードの強化、扱う商品の拡大だ。三井物産(MBK)鉄鋼製品本部としてドメイン運営を25年度にスタートし、MBKと当社(MBS)は一段高い意識で連携し、ROICを意識した経営や売却資産のリサイクルなどに重点課題として取り組んでいる。4つのドメインの建設バリューチェーン、流通・インフラソリューション、モビリティバリューチェーン、エネルギーバリューチェーンのそれぞれにおいて、MBS側組織との相互連携が進んでいる。例えば、ポーランドの電磁鋼板のサービスセンターを一昨年に設立し、パイプライン向け補修機器・技術サービス会社の英スタッツを23年に買収したが、この2社はMBKとMBSの共同事業として推進している。投資の母体はMBKだが、MBSでは周辺サプライチェーンの構築などを担っており、これらの事業のように両社連携による新規事業投資案件の発掘とシナジー発揮を今後も目指していく。従来型のトレーディングだけで大きく伸ばすのは難しく、MBKの海外拠点も含めて事業投資も絡めながら連携していく」

――グローバルトレードの強化とは。

「例えば、日本の高炉メーカーが海外で製造拠点を拡張し、地産地消に対応しているが、海外にいる当社顧客とのビジネス機会創出を検討する。日本の高炉メーカーが得意とする高級鋼や、グリーン鋼材の需要も着実に捕捉していく。MBKの海外店や加工拠点と連携して、グローバルトレード拡大に資するサプライチェーンを拡充したい。市場やメーカーの動向を見極めながらしっかりと対応していく」

――国内需要が減少していく中で扱う商品を増やすことで事業の成長を図る方向に。

「鋼材に限らず、鋼材に関連する副資材や半製品といった商材の取り扱いも促進する。当社では、過去からベアリング用部品や風力発電のフランジなども扱ってきた。DX提案、総合力のさらなる発揮によって、顧客とはもっと面で付き合える関係を構築したい」

――東京本店を6月にMBKの隣接に移転した。

「MBK・MBS両社社員の行き来が多くなり、総合力を一層発揮できる環境となった。新オフィスは社員の声をできるだけ集めてデザインし、フリーアドレスにした。部署の垣根を越えたコミュニケーションがとりやすくなり、社員からの評判は非常によい」

――MBKとの連携による海外需要を捉える取り組みを。USスチール(USS)への対応を中心とした北米、成長市場のインドでの事業展開をどのように。

「米国はスチールテックのさらなる活用が軸になる。加工拠点を広く展開しており、USSの成長に貢献していきたい。USSに関連し、欧州でもMBKがチェコやポーランドなど複数持つサービスセンター(SC)を活用して、日本製鉄グループのスロバキアのNSSKの事業展開に対応していく。MBKと連携しながら、先進国だけでなく、MBSのサプライチェーンに直結する新興国、インドやアフリカなどでの事業機会も検討したい。インドはデリー、ムンバイ、バンガロール各拠点の人員体制を整備し、トレーディング強化と事業機会を模索している」

――国内の事業会社の強化策は。

「25年度の税後利益60億円のうち、国内グループ3社の利益貢献は1割程度だが、市場が低調な中で健闘している。セイケイは、下期に半導体関連などプレスコラムの物件需要が出てくる見込みで前年より改善が期待できる。JFEスチール福山地区の新溶融亜鉛めっきライン(CGL)に1100㍉角の大型サイズのプレスコラムが使われ、都内の物件では1200㍉角の製品が採用され始めている。MSSステンレスセンターは数量が伸びていないが、食品用トレーなどステンレス加工品の販売も取り組み始めており、鋼材の加工を維持しつつ、加工品の販売で成長を目指す。新三興鋼管は昨年9月に竣工した第3工場を倉庫としても使用し、生産効率を上げている。外部の倉庫に保管していた鋼管を自社内に在庫し、キャッシュアウトを減らしている。販売量は増えていないが、自助努力で収益を確保している。今期の3社の利益は横ばいの見通しだが、下期に上積みを図っていきたい」

――DXで新たな価値を提供する考えだが、どのようなことに取り組んでいるのか。

「国内外の顧客とDXを進め、サプライチェーンを簡素化、効率化を図る。自動車関連では需要家から内示をいただき、鉄鋼メーカーへの受け払い表を手作業で作成しているが、このような作業をDXで効率化する。効率化だけでなく攻めにも活用する。需要家からの内示情報だけでなく、自動車の販売動向や気候、各国の成長率などいろいろな情報を参考にしながら需要予測に反映させる技術が向上しているので、生成AIを活用しながら需要予測を精緻化するとともに鋼材発注プロセスを効率化させるシステムを構築し、需要家ごとにカスタマイズして提供していきたい。MBKのデジタル総合戦略部と連携し、MBKの成功事例をヨコ展開するなど総合力を発揮していく。当社の社員はDXの意識が高く、以前から業務の効率化などで活用しており、生成AI活用においてもそういった強みを生かしていく」(植木 美知也)



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