2020年9月30日

「熱交換器の世界的メーカー 日阪製作所の成長戦略」竹下好和社長に聞く 素材メーカーと技術的課題共有 新たな商品価値を ユニット化などで勝負 海外シェア倍増へ

 熱交換器の世界的メーカー、日阪製作所は創業から80年近くの間に数々の「日本初」「世界初」の製品を生み出してきた。ステンレスを材料としたプレート式熱交換器、レトルト調理殺菌装置や滅菌装置、染色仕上機器、ボールバルブを衣食住医・エネルギーなど多様な産業に製品を供給。新型コロナウイルス禍を受けて需要は減少しているが、一方で食品・医薬向けに広がる商機を捉え、海外で増えるニーズの獲得にも力を注ぐ。変化する市場への対応と企業の成長に向けた展望を竹下好和社長に聞いた。

 ――熱交換器事業の現状と課題を。

 「前期は国内の化学業界や船舶業界向けの受注・販売が好調だったが、これは人手不足などを背景にしたメンテナンス需要が大きかった。これからは鉄鋼や化学など各需要分野に対し、当社だけにとどまらず、熱交換器業界の地位を高めなければならない。そのためにも素材メーカーと技術的な課題を共有し、新たな商品価値を創造できる関係を築いていきたいと考えている」

 ――プレート式熱交換器の次世代製品とは。

 「プレート式熱交換器の長所は性能やメンテナンスの良さがあるが、さらに高温・高圧の耐性を持つ製品の開発を進めている。チューブ式の強度とプレート式の性能を備えた全溶接型プレート式熱交換器もその一つといえる。LNG(液化天然ガス)の精製プラントで不純物の硫黄や二酸化炭素を回収する箇所で、アミン系溶剤への耐久性を上げるため、二相ステンレスを用いた熱交換器を開発し、販売を進めている」

 ――熱交換器の海外戦略をどう強化するか。

 「熱交換器の国内シェアはトップだが、海外シェアは5%程度。アジア市場で存在感を高め、マレーシアや中国の工場を活用してシェアを倍増させたいと思っている。これからは価格競争を避けて熱交換器のユニット化などで勝負できるよう、戦略を転換しなければならない」

 ――足元の経営環境は。

 「新型コロナウイルス感染拡大によって経済活動が低下し、当社グループの顧客や販売先の関連市場も設備投資の抑制に伴う案件の延期や規模縮小など需要の低迷が続いている。熱交換器事業は船舶の新造案件や半導体、空調関連の中小型汎用品が低調となり、バルブ事業でも化学業界や鉄鋼業界の需要の停滞を受けた。一方、プロセスエンジニアリング事業はレトルト食品の巣ごもり需要が増えている食品関連や、培養プラントなどの医薬機器や中国向けなどが好調に推移している。海外でも殺菌や衛生の意識が高まっていることから、商機が芽生えている」

 ――今期に新中期経営計画「G―20」をスタートさせた。

 「前3カ年計画の『G―17』の期間中は、M&Aによる医療機器事業の強化、関東地区の青梅事業所開設、奈良県生駒市の新しい事業用地取得、モノづくり革新活動や基幹システム刷新などに取り組んだ。新中計は『圧倒的な存在感ナンバーワン企業』を目指し、各種施策を進めている。最終年度の2023年3月期の連結売上高は20年3月期比4・6%増の340億円、営業利益は19・6%増の27億2000万円、経常利益は13・5%増の29億2000万円を目指す」

 ――生駒の新事業所はどのようなものに。

 「造成を進めており、23年以降にプロセスエンジニアリング事業(食品・医薬向け殺菌・滅菌機、染色機)を移管する構想だ。移管後の鴻池事業所の再構築を含め、これから考えていく」

 ――グループ会社が充実してきた。

 「小松川化工機は医薬・バイオ関係の設備に強みを持ち、コロナ禍においても保有技術が注目されている。旭工業は食品の常圧殺菌の技術があり、日阪製作所の高圧殺菌とのシナジー効果が期待できる」

 ――未来事業推進部の狙いを。

 「創業100周年を迎える42年の売上高目標を1000億円とし、前中計『G―17』から(あるべき姿から今を考える)バックキャスティングでさかのぼりながら計画を立てている。そのためにあと一つか二つ、主力となる新規事業が必要だ。当社が持つ流体・熱・圧力制御技術をどう生かせるか、各事業から若手メンバーを中心に集め、時代に合ったビジネスモデルを模索している。スタートして3年目に入り、複数の候補が上がっている」

 ――アフターコロナ、ウィズコロナをどう考えるか。

 「コロナ問題によって出張ができず、海外の設備の立ち上げが遅れてしまう事態となった。遠隔で立ち上げができる仕組みを設備に組み込んだり、最終組み立て近くまで行う試みを始めている。こうした新たな気付きが商品力の強化にもつながっていく」

 (福岡紀子、桐山太志)

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