2022年6月13日

三井物産 鉄鋼製品本部長に聞く/藤田 浩一執行役員/北米中心に攻め投資/新旧エネルギー、両利き戦略

 ――2021年度の連結純利益は269億円となり、前年度の21億円から大幅に改善した。

「当初予想が80億円で、100億円、200億円、280億円と段階的に上方修正してきたが、減損など12億円の処理を実施したため下振れた。新型コロナで20年度に落ち込んだ需要が戻り、国際鋼材市況が上昇するなど追い風もあって、17年度の247億円を上回る最高益となった。三井物産スチール、日鉄物産、エムエム建材などトレードビジネスが回復し、自動車、インフラを中心に事業会社も好調だった。17年度はゲスタンプ出資に伴う評価益48億円、米国の税制改正による35億円の増益効果など一過性要因が利益を押し上げたが、21年度は一過性要因を除くと300億円前後となり、事業構造改革の成果を確認することができた」

――100%出資の三井物産スチールの業績は。

「連結純利益が89億円で前年の39億円から大幅増益となった。単体に加えて、連結会社のセイケイ、新三興鋼管、鶴見鋼管、MSSステンレスセンターもそろって貢献してくれた」

――20%を出資する日鉄物産の持分利益も増加した。

「日鉄物産は連結純利益が前年の160億円から354億円に増加し、持分利益は大幅に拡大した」

 ――ニューコアとのサービスセンター合弁、スチールテクノロジーズに50%を出資するニューミットも大幅増益となった。 

「持分利益は前年の25億円から112億円に拡大した。スチールテクノロジーズは主力の住宅、自動車向けの需要が回復し、ホットコイルがトン2000ドルを超える期間が続くなど市況の上昇効果も取り込んだ」

――中期経営計画(20-22年度)の最終年度を迎えた。本年度の利益予想は200億円。

「20年策定の中期計画では最終年度の今期は利益計画を140億円から160億円と設定していた。2年目が最高益となることを見越したうえで、鋼材市況動向、ロシアのウクライナ侵攻、中国のロックダウン、自動車メーカーの減産、米国の金融引き締めなどによる影響を織り込んで200億円と設定した」

――投融資の進捗状況は。

 「スチールテクノロジーズが昨年12月に同業のカルストリップ・インダストリーズを買収した。20年度は業績が低迷し、21年度は業績回復を優先した。中計の全社方針が「変革と成長」であり、本年度は将来の成長に向けて数百億円単位の大きな案件をいくつか実行したいと考えている」

 ――ターゲットは。

「中計ではモビリティ、エネルギー、インフラ、流通の4領域をターゲットに設定している。景気がより良い北米を中心に攻めの投資を実施したい。パートナーである大和工業、ニューコアなど電炉メーカーとのグローバル展開も加速したい」

――モビリティでは、電磁鋼板需要が伸びている。

「100%出資のオランダのEMS、カナダのTMSともに変圧器用の方向性電磁鋼板が中心だが、TMSはEVモーター用の無方向性電磁鋼板にも注力しつつある。EV用は急速に需要が拡大しているが、洋上風力発電向けの変圧器用の需要も底堅い。モビリティ、エネルギーの領域における成長戦略として事業規模を拡大する。二つの事業会社を増強するか、スチールテクノロジーズで手掛けるか、新事業を立ち上げるか、検討を急ぐ」

――中国の電磁鋼板ビジネスは。

「広州日宝鋼材製品がモーターコア用のプレス、焼鈍、変圧器向けの斜角切断加工など方向性・無方向性を扱っている」

――米国はFRBが金融資産圧縮を予定しており、景気後退が懸念されている。

「金利上昇、金融資産圧縮によって自動車や住宅の購買に影響が出てくるだろうが、人口は3億3000万人を超えて増加を続けており、一定の需要は続く。ピークアウトを見込んで、事業の売却案件も増えている。事業化調査を徹底した上で、攻めの姿勢で新たなビジネスモデルにもチャレンジしていく」

――スチールテックの成長戦略を。

「米国20拠点、メキシコ9拠点、カナダ2拠点の31拠点で事業を展開している。経済拡大が続く南部は手薄で、自動車用のアルミパネル、電磁鋼板も扱っていない。カルストリップに続く、M&Aを積極的に仕掛けていく」

――インフラは。

「ショーボンド・ホールディングスとIMR(インスペクション・メンテナンス・リペア)事業を海外展開する合弁企業を設立。第一弾としてタイのサイアム・セメントグループと3社で現地合弁事業を20年に立ち上げた。新型コロナウイルス影響で活動ができていなかったが、本格的にリスタートさせる。国内にも対象を広げて、港湾などのIMR事業を開始。北米は、港湾、鉄道、道路などインフラの老朽化が深刻化しており、現地企業とのタイアップしながら進出したいと考えている」

 ――エネルギーについて。

「風力発電用タワー製造でグローバルマーケットをカバーするスペインのGRIは需要増を背景に好調に推移している。GEGはスコットランドにある広大なヤードを活用して洋上風力発電設備の組み立てやメンテナンスのビジネスを増やしている。国内は風力発電インフラメンテナンス大手の北拓と合弁事業を設立。ケッペルとの共同出資会社で海洋構造物を手掛けるリージェンシー・スチール・ジャパンは、オイル・ガスに加えて洋上風力に注力。ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー事業が変化し、豪州、中東、米国などの化石燃料採掘は再び増えていく可能性がある。新旧エネルギーの両利きの戦略に見直し、組織も強化して需要を取り込んでいく」

 ――ロシアに事業拠点がある。

「セベルスタールと合弁の自動車用鋼板加工拠点がある。トヨタ、日産、現代は自動車の組み立てを中止しているが、撤退はしていない。生産が再開されるとすればサプライチェーンを再構築する必要がある。建設インフラ向けのビジネスは継続しており、現時点で撤退は考えていない」

――ウクライナではアゾフスタリ製鉄所が操業停止を余儀なくされた。

 「シンガポールのリージェンシー・スチールが、厚板などを調達していたが、代替ソースがあるので大きな影響はない」

――トレーディング機能を全面移管する大胆な事業構造転換を図り、収益基盤を再構築した。次期中計のテーマは。

「世界は大きく変化しており、ビジネスチャンスが広がっている。個人的な思いとしては、MBSを通して鉄鋼製品ビジネスを拡充しながら、鉄鋼製品本部としてはゲスタンプやGEGのような需要産業、部品事業などダイナミックな事業投資を進めてみたい」(谷藤 真澄)

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