2022年6月28日

JFE商事の経営戦略/小林 俊文社長に聞く/前期利益、海外が稼ぎ頭/メキシコ鋼板合弁、早期に一貫体制

――2021年度の連結セグメント利益は前年度比2・8倍の559億円で、07年度の392億円を大きく超えて過去最高となった。

「20年度は新型コロナウイルス影響で19年度の270億円から200億円に落ち込んだ。21年度は国内外で鋼材の需要が回復し、価格は上昇して高いゾーンで推移した。製鉄原料や資機材といった鉄をつくるために必要となる部門も鉄鋼需要が戻ったことにより好調だった。販売数量回復に価格上昇が加わり、トレード収益、事業収益ともに拡大した」

――とくに貢献したのは。

「連結対象の現地法人、子会社、持分法適用会社は全96社で、海外が45社、国内は51社。セグメント利益を鉄鋼貿易含む単体、国内グループ会社、海外グループ会社で分類すると、JFE商事発足以降、常に単体がトップだったが、21年度は全体的に良くなる中で、海外が初めて稼ぎ頭となり、単体、国内が続いた」

――その海外の動向を。

「アメリカ、ASEAN中国、その他地域で分類しているが、4地域ともに収益が回復し、連結収益を押し上げた。牽引役はJFE商事アメリカホールディングスで鋼管事業のケリーパイプ、VESTの収益が拡大し、電磁鋼板事業のメキシコJSA、買収したJSC(旧コジェント・パワー)も好調で、トレードを行う米国JFE商事は大幅に収益が改善した」

――ケリーパイプは、市場環境の変動が激しいOCTG分野から撤退した。

「注力している建設・土木分野ともに需要は旺盛で、在庫・物流拠点の集約など、前中期から取り組んできた収益構造改革効果も発揮している。マスターディストリビューターとして問屋からの幅広いニーズに応えるため世界各国から鋼管を調達しており、仕入ソースの拡大による数量確保が足元の課題。VESTは西海岸トップクラスの溶接鋼管メーカーで、物流倉庫やショッピングモール向けの建築用の構造用鋼管需要が旺盛で、こちらも高収益を維持している」

――鉄鋼事業の利益は500億円規模で、鉄鋼商社では飛び抜けている。

「価格上昇など一過性要因を除いた実力は350億円前後と分析している」

――第7次中期経営計画(21-24年度)の利益目標は400億円だが、本年度の目標感は。

「ロシアによるウクライナ侵攻、中国のロックダウンなどによる完成車減産の長期化など懸念材料は増えている。中国の現地事業はお客様の操業停止もあり低操業を余儀なくされ、4-6月は赤字の見通し。中国、ASEANの鋼材市場は混乱している。こうした環境の変化を踏まえた上で、本年度は400億円を目指したい」

――4年間で1200億円の投融資を計画する。

「21年度の実績は128億円だった。中国での加工設備増強、国内外の現場の安全・品質強化など設備投資が約70億円。ベトナムの薄板リローラー、トン・ドン・アの増資を一部引き受けた。本年度計画は約300億円。機会を逃さず実績を積み上げていきたい」

――重点施策は。

「7次中計では、電磁鋼板、自動車用鋼材、海外建材事業、国内需要を重点分野に位置付けて強化策を描いている。21年度はコロナ影響による遅れもあり取り組みが不十分だった。本年度は遅れを取り戻して、販売力、仕入れ力を磨き、稼ぐ力を鍛えていく」

――自動車用鋼材について。

「日本、中国、ASEAN、米州の世界4極におけるサプライチェーンマネジメントの拡充をテーマに掲げ、ハイテン鋼板対応、加工・物流効率化などの投資を進めている。中国では広州川電の設備増強を決定した。メキシコのJFEスチールとニューコアの自動車用鋼板合弁事業に対応するJSSBは、新型ウイルス影響で約1年半遅れて昨年10月に稼働を開始した。自動車用鋼板は品質認証などに時間がかかるので、ニューコアの力も借りながら汎用品を含めた切断・品質管理・デリバリーの一貫体制を構築することが本年度の最大の課題」

――電磁鋼板は世界最大のグローバルネットワークを拡充する。

「国内4拠点に加えて中国、ASEAN、インド、米州など10カ国17拠点を展開する。EV化に伴う無方向性電磁(NO)鋼板の対応力を引き上げつつ、電力需要の増加に応える変圧器向け方向性電磁(GO)鋼板のニーズにも応えていく。市場が拡大する米州はメキシコのJSA、カナダのJSCともにフル稼働を続けている。JSCはGO鋼板を得意としているが、このほど電動パワートレインを開発する現地企業と関係を築いた。JSCは変圧器用コアの設備増強を決定し、中国では華東地区の車載モーターコア用の設備増強を決定した。インドの拡張、新地域への進出も前向きに検討していきたい」

――海外の建材ビジネスは。

「米国とASEANがターゲットとなる。事業拡大に向けたチャンスは逃さないようにしたい」

――国内の鉄鋼需要深耕をテーマに掲げる。

「国内市場における存在感を引き上げたい。関西では阪和興業、小野建、信越では藤田金属と系列を超えて加工・流通機能の強化を図ってきた。国内の総需要は縮小するだろうが、伸びる分野・地域はある。東日本、九州市場を含めて、商社系・独立系の枠組みを超えて新たな絵を描いていきたい」

――環境資源本部を4月に立ち上げた。

「JFEグループとして2050年のカーボンニュートラルを目指している。第一・二原料本部を再編して環境や脱炭素関連の商材を扱う本部として環境資源本部を新設した。環境とつける事で組織を分かりやすくした。金属リサイクル部、化学品部、バイオマス燃料部で構成し、59人体制でビジネスを大きく拡大していく。鉄スクラップ、高炉スラグ、木質ペレットやPKSなどの販売力を強化していく」

――事業開発センターも同時に始動させた。

「20年4月に立ち上げた事業連携推進チームの機能に次世代事業開発のミッションを加えた組織。ビジネス開発チームは環境や経済構造の変化をチャンスと捉えて、環境をキーワードに事業投資、M&Aなど幅広い視野で新規ビジネスの開発を推進していく。事業連携推進チームは、社内連携、JFEグループ内外の連携を通じて洋上風力発電や電力周辺ビジネスなどの新規事業の創出に取り組む」

――収益安定には事業ポートフォリオの拡張が課題となる。

「鉄鋼に関連する事業が連結収益の95%を占めている。我々は鉄鋼メーカー商社であるが、商社として社会に貢献できる土壌を広げたいという思いがある。川商フーズは、ノザキのコンビーフが主力商品だが、海外では『GEISHA』ブランドが幅広く浸透しており、サバトマト漬缶などはアフリカでは重要なタンパク源となっている。先日米国に出張した際に訪問したウォルマートでは川商フーズブランドの牡蠣の缶詰が3種類並んでいた。微力ではあるが世界の食料問題に貢献していきたい」

――JFE商事エレクトロニクスも進化を続けている。

「生産現場の設備制御・操業管理を行う汎用システムSCADA(スーパーバイザリー・コントロール・データ・アクイジション)に映像を融合させた独自技術を開発した。製鉄所、加工・物流プロセスなどにおける品質管理、安全管理への活用を広げている。JFEグループが推進する洋上風力発電事業の無人オペレーション用の遠隔モニターなどへの応用も期待している」(谷藤 真澄)

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