2022年12月8日

財務・経営戦略を聞く 神戸製鋼所取締役 勝川四志彦氏 アルミ・建機、価格是正急ぐ タイ線材拠点の戦略加速

――上期は連結経常利益418億円と前年同期から25億円減少した。

「需要が大きく減退したことで数量・構成が130億円のマイナスに効いた。鉄鋼については原料価格の販売価格への転嫁が進み、300億円弱のプラス効果を生んだが、アルミ板・建設機械を中心に販価改善が遅れてマイナスに作用した。大きな減益要因は電力事業で一般炭市況の高騰が継続する中、電力における売電価格に関する一過性の減益影響が顕在化しており、利益は70億円悪化した。建機は上期にエンジン認証問題の補償金収入で見掛けの利益はよくなっているが、問題がなければ順調に利益が上がっていたとも言える。鉄鋼は数量と在庫評価益が減少したが価格転嫁が進み、増益傾向が続いた。前年度は鋼材値上げの浸透が元々の市況製品の販売の少なさや線材特殊鋼の特性上から遅れたが、今年度の上期は前年までの遅れを含めて販価の改善が進んだ。」

「アルミ板と建機は上昇したコストの販価への転嫁が進まず、厳しい収益となった。アルミ板は副原料のマグネシウムやシリコンの価格転嫁フォーミュラ化について個別に交渉し、まだ決着はしていないが、お客様のご理解は進んだものと認識している。ロシア・ウクライナ問題でかなり上昇したエネルギー費用についても価格への転嫁を進めているが、タイムラグが出てしまう」

――円安の影響は。

「短期的には素材系が輸入原料のコスト増でマイナスとなり、機械系は逆に海外受注額が為替換算でプラスとなって取り戻すことになる。セグメント毎には為替の影響を受けるが、全体で差し引きすると連結の業績に大きくは影響しない。

――下期の需要をどうみるか。

「自動車生産は回復時期が後ろ倒しになっている。1―3月期にかけて増えるだろうが、通常レベルに戻るのは難しいのではないか。建設需要に変化はみられないものの、原料市況が下がったことで在庫の調整局面に入る可能性がある。IT・半導体は北米の景気後退懸念から冷え始め、アルミ板を使用するハードディスクドライブの需要が急減している。機械は好調で21年度に初めて2000億円を超えた年間受注額が石油化学やカーボンニュートラル関連が増えたことで22年度は2300億円を超えそうだ。エンジニアリングは廃棄物関連に加え、スウェーデンのH2グリーンスチール社向けに水素直接還元鉄プラントを受注しており、堅調だ。建機の需要は欧米や豪州など全般的に堅調だが、中国が減り続けている。エンジン供給の問題は日本では解消したが、欧州の工場は停止したままなので影響が大きい」

――連結経常利益の通期見通しを700億円と前回800億円から下方修正した。特に電力事業の減益影響が大きい。

「電力は今まで発現しなかった一過性の影響を受けている。神戸発電所3・4号機は市況高騰時には燃料費調整の時期ずれによる損失が発生し、大幅な減益となる。一方で鉄鋼の年度見通しは360億円と前回から50億円上方修正した。粗鋼生産は通期630万トンと前回予想から20万トン下方修正し、販売数量も減少しているが鋼材販価の改善が進み、原料価格の低下もプラスに効く。アルミ板は販売数量減と価格転嫁の遅れで下期に赤字に転じ、年度では10億円の赤字予想とした。自動車に加えて飲料缶向けが少し減り、IT・半導体の需要減の影響も受け、販売予想は年36万トンと前回から1万トン下方修正したが、さらに下に振れる可能性はある」

――下期も価格是正が大きな課題に。

「鋼材の価格は改善が進む前提だが主原料だけでなく、副原料や物流、エネルギー費など上昇する諸コストも含めて取り組む。アルミ板や建機は価格交渉に時間を要しており、下期を面積でみた場合、値上げ分の利益は取り切れない。来年度のスタート時には適切な価格レベルを確保しておきたい」

――市場が変調してきた海外の事業の状況は。

「北米の自動車用鋼板製造のプロテックは新しいラインを立ち上げたこともありフル生産ではないが、価格と収益は高い水準を維持している。中国は冷延ハイテン製造拠点の鞍鋼神鋼冷延高張力自動車鋼板は昨年より収益が上向いているが、棒線の加工拠点は数量が戻し切れていない。中国の自動車生産はコロナ禍前の水準に戻っているが、中国メーカーやEVの生産が増えており、需要の中身が変わっている。アルミパネル製造の神鋼汽車鋁材(天津)はEV向けなど需要が底堅く、生産量・収益を維持している」

――タイの特殊鋼棒鋼線材拠点のコベルコ・ミルコン・スチール(KMS)を連結子会社化した狙いを。

「東南アジアでの特殊鋼線材事業における中心的な拠点として注力する考えを鮮明にした。神戸に第7線材ラインがあり、加古川が第8線材ライン、KMSを第9線材ラインに位置づけるためにKMSのマジョリティを取ることにした。KMSは21年度に高い収益を上げたが、22年度は需要がやや弱く、収益は少し低下している。需要はいずれ正常化するとみているが、KMSは普通鋼の線材も生産しており、市場の動向をみて能力の増強を検討する」

――カーボンニュートラル(CN)の取り組みの進捗は。低炭素鋼材のコベナブル・スチールの反響はどうか。

「コベナブル・スチールは10月から受注・販売を開始した。お客様からの問い合わせは多く、市場の関心は高いと感じている。また、官民が出資しCNの実現に向けてファンド事業を行う脱炭素化支援機構に参画し、協力して脱炭素化に向けた支援を担うとともに脱炭素に向けた最先端の取り組みに広い観点で関わっていく。水素による直接還元製鉄やメタノールの処理、廃棄物発電など市場が変化する中で生まれるチャンスを獲得していきたい」

――直接還元鉄の事業が大きく成長しそうだ。

「従来の天然ガスベースのミドレックスとH2グリーンスチール社向けで受注した水素100%の直接還元製鉄、その間の最初に天然ガスを利用しいずれ水素で還元するプラントの3つのパターンを想定している。完全なグリーンな水素が供給されるのはかなり先になるので、お客様のニーズを捉えながらまずは天然ガスベースの還元鉄プラントの実績を固め、将来に水素に転換できるプラントの受注に努めるとともに、安定操業の実績を重ねていく。世界の鉄鋼業が電炉化に向かう大きな流れの中で鉄スクラップが取り合いになり、還元鉄がより注目されることが予想されるのでビジネスをしっかりと成長させていきたい」(植木 美知也)
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