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2024.11.29
2023年4月26日
鉄鋼新経営 新たな成長に向けて 東京製鉄社長 西本利一氏 最適生産バランス構築 田原で下工程拡充を計画
――2023年3月期決算をどのように評価しているか。
「営業利益、経常利益ともに09年3月期以来の高水準となり、10期連続で経常黒字を維持した。23年1―3月期の営業利益は計画を下回ったが、着地時点での絶対値としては良い内容になった」
――24年3月期の通期業績は前期比で増収減益を予想している。
「鋼材出荷数量は345万トンと、前期比で30万トン増やすことができそうだ。リーマン・ショック後は300万トン割れが続いてきたが、前期は314万8000トンと大台を回復した。今期はさらなる増加を見込んでおり、高炉製品への代替に取り組んできたことが奏功し、数量回復を果たしている。岡山熱延工場の再稼動分に加えて、九州工場で大形H形鋼や厚板の生産増を見込んでいる。ただ、コストアップで減益を余儀なくされる。また、国内向け出荷数量は堅調ながら、足元の輸出環境を踏まえた場合、慎重な業績予想とした」
――各工場における今期の生産見通しを。
「生産計画について、田原工場は製鋼、圧延ともに前期と同水準になる150万トン弱を想定している。田原は前期まで岡山工場にホットコイルを供給していたが、今期はこの流れが解消。田原は4幅と5幅を主体とする生産体制に切り替えることで圧延能力がアップし、サイズや鋼種組み合わせを集約するなど最適生産バランスを図り、コストダウンにも繋げる。九州は大形H形鋼や厚板の引き合いが増えており、これに連動する形で生産増を計画。宇都宮工場は前期で生産を増やしたが、今期は若干増える見通し。H形鋼は出荷数量に占めるジャンボサイズの比率が高まっており、厚板は建設機械などを主体に増えている」
――岡山の状況は。
「マーケットの状況や採算、電力契約の内容などを考慮した結果、岡山熱延工場の月間生産量は2―3万トンペースで推移している。オフラインスキンパスを全面リプレースしており、23年3月末から稼働を開始し、4月にJIS認証を取得した。岡山のホットコイルは次工程向けを中心に増やす方針であり、足元は酸洗用が多い。余剰が出ればホットコイルでの販売も検討する」
――設備投資計画を。
「田原工場の下工程拡充を計画している。このほか、24年をめどに岡山中形工場の粗ミルでハウジング老朽更新などを手掛ける。環境対策として、田原で集塵機も増強する」
――販売および販売価格方針は。
「建材品種は堅調な国内需要が続くだろう。H形鋼はエキストラを改定し、コストに合った適正な販売価格に見直している。振れ幅が大きいのは薄板類。海外マーケットで価格が下落したことで、田原は23年1―3月期で赤字に陥った。収益安定化を図るためには国内需要家にしっかり組み込まなければならず、カーボンニュートラル(CN)の追い風に乗り、自動車業界をはじめ多くの需要家が当社製品の評価を進めている。これを軌道に乗せるためには物流網を拡充し、納期管理を改善しなければならない」
――2月1日付で企画物流部を新設した。
「鋼板類の数量を拡大する方針下において納期管理を改善し、カスタマーサービスを強化する必要がある。物流コストが大幅にアップし、圧延コストに迫る勢い。物流網を構築し、輸送コストの上昇を抑えながら、2024年問題に対応する。23年も中継地を拡大する。関東ではカットシートなどの中継地を千葉県市川市に集約し、コイルセンター並みのデリバリーを目指す」
――電気料金をはじめ各種コストが急速かつ大幅に上昇している。
「収益に打撃を与える。今期はトン当たり3263円を想定し、うち電気料金の上昇分は約1500円になる。また人件費引き上げに関わる部分は避けて通れない。これを拒むということ自体、経営のリスクと考え、当社では29年ぶりにベースアップを行っている」
「太陽光発電設備を増設する。田原で新たに6メガワット分の増設を検討中。各工場で協力会社棟や事務所の建て替えを予定しているが、その屋根に太陽光パネルを設置する。これによって、再生可能エネルギー比率を高めるとともにコストダウンを実現し、省エネを推進することができる」
――特寸H形鋼の状況を。
「繰り返しになるが、電炉H形鋼の引き合いが増えていることから、生産能力ネックになって、すべてのニーズに応えることが難しくなる可能性が出ている。特寸H形鋼は生産性が低く、23年4月契約分からエキストラを改定したものの、引き続き採算を考慮しながら、必要があればサイズ集約なども検討したい」
――鉄スクラップの購入についてはどうか。
「『ちゃんと買う』ということで、輸出を回避する購入価格をしっかり打ち出し、国内に還流させる。同時に需要家から発生する鉄スクラップを当社で利用する資源循環スキームを増やす。現時点で名古屋以外のサテライトヤードの設置は考えていない。宇都宮工場は鉄スクラップ置き場を追加で設けることで、受け入れ能力を拡大し、スクラップ企業の車両待機時間を減らす。予約システムは資源循環スキーム用のみに活用し、一般のスクラップ受け入れには使わないようにしていきたい」
――CNに向けた動きが加速している。
「至近では大成建設と連携し、建設物のライフサイクルでのCO2排出量を正味ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため、『ゼロカーボンスチール・イニシアティブ』を始動した。再生エネ電力の調達は現時点でも50年でも通用する普遍的なスキームであり、当社はこれでCNを目指す。当社には大成建設以外のスーパーゼネコンからも問い合わせが来ている。自動車用鋼板についてはアプルーバル(品質認証)を取得するべく、複数の自動車メーカーと話し合いを進めている」
――6月で退任し、特別顧問に退く。
「一定年齢で代表を退く当社の企業文化などを背景とし、私自身の気力や体力、能力を照らし合わせて決めた」(濱坂浩司)
「営業利益、経常利益ともに09年3月期以来の高水準となり、10期連続で経常黒字を維持した。23年1―3月期の営業利益は計画を下回ったが、着地時点での絶対値としては良い内容になった」
――24年3月期の通期業績は前期比で増収減益を予想している。
「鋼材出荷数量は345万トンと、前期比で30万トン増やすことができそうだ。リーマン・ショック後は300万トン割れが続いてきたが、前期は314万8000トンと大台を回復した。今期はさらなる増加を見込んでおり、高炉製品への代替に取り組んできたことが奏功し、数量回復を果たしている。岡山熱延工場の再稼動分に加えて、九州工場で大形H形鋼や厚板の生産増を見込んでいる。ただ、コストアップで減益を余儀なくされる。また、国内向け出荷数量は堅調ながら、足元の輸出環境を踏まえた場合、慎重な業績予想とした」
――各工場における今期の生産見通しを。
「生産計画について、田原工場は製鋼、圧延ともに前期と同水準になる150万トン弱を想定している。田原は前期まで岡山工場にホットコイルを供給していたが、今期はこの流れが解消。田原は4幅と5幅を主体とする生産体制に切り替えることで圧延能力がアップし、サイズや鋼種組み合わせを集約するなど最適生産バランスを図り、コストダウンにも繋げる。九州は大形H形鋼や厚板の引き合いが増えており、これに連動する形で生産増を計画。宇都宮工場は前期で生産を増やしたが、今期は若干増える見通し。H形鋼は出荷数量に占めるジャンボサイズの比率が高まっており、厚板は建設機械などを主体に増えている」
――岡山の状況は。
「マーケットの状況や採算、電力契約の内容などを考慮した結果、岡山熱延工場の月間生産量は2―3万トンペースで推移している。オフラインスキンパスを全面リプレースしており、23年3月末から稼働を開始し、4月にJIS認証を取得した。岡山のホットコイルは次工程向けを中心に増やす方針であり、足元は酸洗用が多い。余剰が出ればホットコイルでの販売も検討する」
――設備投資計画を。
「田原工場の下工程拡充を計画している。このほか、24年をめどに岡山中形工場の粗ミルでハウジング老朽更新などを手掛ける。環境対策として、田原で集塵機も増強する」
――販売および販売価格方針は。
「建材品種は堅調な国内需要が続くだろう。H形鋼はエキストラを改定し、コストに合った適正な販売価格に見直している。振れ幅が大きいのは薄板類。海外マーケットで価格が下落したことで、田原は23年1―3月期で赤字に陥った。収益安定化を図るためには国内需要家にしっかり組み込まなければならず、カーボンニュートラル(CN)の追い風に乗り、自動車業界をはじめ多くの需要家が当社製品の評価を進めている。これを軌道に乗せるためには物流網を拡充し、納期管理を改善しなければならない」
――2月1日付で企画物流部を新設した。
「鋼板類の数量を拡大する方針下において納期管理を改善し、カスタマーサービスを強化する必要がある。物流コストが大幅にアップし、圧延コストに迫る勢い。物流網を構築し、輸送コストの上昇を抑えながら、2024年問題に対応する。23年も中継地を拡大する。関東ではカットシートなどの中継地を千葉県市川市に集約し、コイルセンター並みのデリバリーを目指す」
――電気料金をはじめ各種コストが急速かつ大幅に上昇している。
「収益に打撃を与える。今期はトン当たり3263円を想定し、うち電気料金の上昇分は約1500円になる。また人件費引き上げに関わる部分は避けて通れない。これを拒むということ自体、経営のリスクと考え、当社では29年ぶりにベースアップを行っている」
「太陽光発電設備を増設する。田原で新たに6メガワット分の増設を検討中。各工場で協力会社棟や事務所の建て替えを予定しているが、その屋根に太陽光パネルを設置する。これによって、再生可能エネルギー比率を高めるとともにコストダウンを実現し、省エネを推進することができる」
――特寸H形鋼の状況を。
「繰り返しになるが、電炉H形鋼の引き合いが増えていることから、生産能力ネックになって、すべてのニーズに応えることが難しくなる可能性が出ている。特寸H形鋼は生産性が低く、23年4月契約分からエキストラを改定したものの、引き続き採算を考慮しながら、必要があればサイズ集約なども検討したい」
――鉄スクラップの購入についてはどうか。
「『ちゃんと買う』ということで、輸出を回避する購入価格をしっかり打ち出し、国内に還流させる。同時に需要家から発生する鉄スクラップを当社で利用する資源循環スキームを増やす。現時点で名古屋以外のサテライトヤードの設置は考えていない。宇都宮工場は鉄スクラップ置き場を追加で設けることで、受け入れ能力を拡大し、スクラップ企業の車両待機時間を減らす。予約システムは資源循環スキーム用のみに活用し、一般のスクラップ受け入れには使わないようにしていきたい」
――CNに向けた動きが加速している。
「至近では大成建設と連携し、建設物のライフサイクルでのCO2排出量を正味ゼロにするゼロカーボンビルの建設を推進するため、『ゼロカーボンスチール・イニシアティブ』を始動した。再生エネ電力の調達は現時点でも50年でも通用する普遍的なスキームであり、当社はこれでCNを目指す。当社には大成建設以外のスーパーゼネコンからも問い合わせが来ている。自動車用鋼板についてはアプルーバル(品質認証)を取得するべく、複数の自動車メーカーと話し合いを進めている」
――6月で退任し、特別顧問に退く。
「一定年齢で代表を退く当社の企業文化などを背景とし、私自身の気力や体力、能力を照らし合わせて決めた」(濱坂浩司)
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