2023年7月25日

総合商社 金属トップに聞く/双日 松浦 修 金属・資源・リサイクル本部長/資源循環・CNに注力/DAC・SAF 早期実現目指す

双日の金属・資源・リサイクル本部は原料炭など上流資源の安定供給と維持拡大を継続しながら、脱炭素やリサイクル関連など新たな領域で事業化を急ぐ。リサイクルは第2、第3の打ち手を急ぎ、脱炭素は手持ち案件の事業化を狙うという。本部の事業戦略について松浦修本部長に聞いた。

――2022年度の総括を。

「本部当期利益は627億円となり最高益を更新した。市況に支えられた面もあるが、本部の強みである鉱産や金属原料のトレードも堅調だった。やるべきことをやった。金属製品事業も持分法適用会社のメタルワンが最高益ということで、全体として着実に進捗した。資産の良化とポートフォリオの変革を標榜し、撤退しようとしていた銅権益やインドネシアの一般炭権益、豪州の鉄鉱石権益にめどをつけて新しい権益の取得に向けて過去の権益の整理を一定程度進められた。総じて当本部にとって意義の大きな1年だった。稼げるところは稼いで、やめるところはやめた。新しい事業も着手できた。資源リサイクルでかねてから取り組もうとしていた金属資源循環事業の海外1号案件に出資できた。JX金属が100%出資するカナダのイーサイクル・ソリューションズの株式の34%を双日が取得して協業を始めた。北米のリサイクル事業の推進拠点になる。あとはフッ素化合物製造事業だ。北九州市の土地の確保もできた。2月に北九州市とともにメキシコのフッ素関連事業を行うメキシケムフローの日本法人の社長と当社の藤本社長とで立地協定書の調印式を行った。今年中に基礎設計も完了させ、投資の意思決定まで行いたい」

――新しい戦力は。

「目新しいものはないが、21年度までに取り組んだ事業が昨年度の数字に寄与している。特にグレゴリーの石炭事業だ。それからCBMM、メタルワンも寄与している。今年度の減益見込みは石炭市況がある程度下がっていることが一番大きい。一般炭も価格が下がっている」

――新規のイーサイクル・ソリューションズは。

「イーサイクル・ソリューションズは若干収益に乗ってくる。あとはまだ足が長い事業が多い。今のポートフォリオで支えながら、新しい事業をやっていくのが23、24年だ。できればスリム化は手を緩めずやりたい」

――伯CBMMと東芝と電池材料は近く商業化する。

「今年中には商業化に向けた意思決定を行いたい。工場建設の意思決定を今年行えば26年から27年ごろの稼働になると見ている。」

――日本に電池工場を建てるのか。

「現時点では明確に言えない。ブラジルのアラシャの町からCBMMのアラシャ鉱山へ従業員を乗せる循環バスでバッテリーを使用する実証実験が10月ごろから始まる。実証実験と東芝での電池開発も踏まえて商業生産のめどを今年中に付けたい。国内の工場かどうかや、委託生産やライセンス生産、海外生産かどうかは何も決まっていない。」

――双日の役割は販売か。

「CBMMとともに安定的に原料供給を行うことに加え、製品の販売やバッテリーの回収も狙う。ヨーロッパでは電池を売ったら回収することが義務で、正極も負極もみなリサイクルする金属の使用比率が決まりつつある」

――回収も手を打つ。

「本部として使用済みバッテリーのリユース、リサイクル事業も目指している。NTOバッテリーもメニューになる可能性が大きいと期待している。資源循環、金属資源循環、バッテリー循環、この辺はスピードを上げてイーサイクル・ソリューションズにとどまらず、第2、第3、第4の手を打っていかないといけない。今年、来年の私のミッションだ」

――循環経済関連で22年度の投資100億円はこの本部か。

「その分野を担うのは当本部という気概で素材もサーキュラーエコノミーにも取組んでいく。100億円では小さい」

――300億円が中計。まだ案件がある。

「ある。やっていかないといけない」

――鉱山投資はあまりない。

「上流も勿論視野に入れている。いいところがあればやりたいと思っていて、そこは検証中だ。実際今年やるかどうかわからないが継続して見ている」

――注力点は。

「資源循環ともう一つの新しい軸は脱炭素、カーボンニュートラルへの取り組みだ。今年から石炭部の名称を石炭・カーボンマネジメント事業部と変えている。過去3年間、当本部にミライ事業開発チームを立ち上げて20、30年先の事業を7人くらいで検討してきたが、脱炭素事業で形になりつつあるものが2、3出てきた。アカウントを持って稼いでいく気持ちも込めて石炭・カーボンマネジメント事業部に組み入れた。カーボンマネジメント課でやっていくのが九州大学と連携して会社を立ち上げたDAC(大気から二酸化炭素を直接回収する技術)事業、それから豪州でのSAF(持続可能な航空燃料)事業。これはMOU段階だが早期の実現を目指す。当社内にはSAFを取り扱っている本部が4つある。バイオや航空など本部ごとに領域は異なるが、当本部はイーフューエルという究極のSAFだ。水素と二酸化炭素(CO2)から作る。その水素も太陽光で作るし、CO2は企業から回収するのでわざわざ作らない。SAFの最終形、グリーンSAFをイーフューエルと呼んでいるが、それを当本部が担っている。東洋エンジニアリングと当社と豪州のクイーンズランドにあるCSエナジーは水素を作る。こうした事業をカーボンマネジメント課で取り組んでおり、急いで社会実装を進めたい」

――ビジネスになる。

「DACは会社を作った」

――最先端技術も色々ある。

「資源循環・サーキュラーエコノミーとカーボンニュートラル、カーボンマネジメントに注力したい。さらに社会ニーズに合致する事業としてフッ素化合物製造事業や電池のNTOバッテリー、その負極材などの素材開発も引き続きやっていきたい」

――炭素の回収・利用・貯留(CCUS)は。

「検討を続けている。SAFもDACなど色々な事業で取り入れている。各社豪州でやったり、コンソーシアムを組んだりしており、参画するという選択肢がないわけでないが、できれば日本での事業化を引き続き検討したい。ただまだまだ先だ。岩盤の調査などまだまだやることがある」

――炭鉱の操業効率化のDXもある。

「当社は商社で唯一自社操業しているので、操業データが手元にある。操業データをデータベース化して最適な操業に活用することが第1弾。次は将来の価格や需要予測も捉えながらの最適な事業運営に活用することが第2段だ」

――日本積層造形(JAMPT)は。

「金属3Dプリンター事業は将来性が高い。自動車産業を支えているのは部品を作る仕組みだが、金型メーカーが過去の車の金型も全部ストックを持っている。このねじが足りないとかこの部品が足りないというともう1回作れるが、もうそんな時代はでない。金属3Dプリンターを活用する流れは必ず来る。また足下で量産できない部品はもっと形状が複雑な部品。鋳物で作れないような形態だ。一例を挙げると、冷却部品で可能な限り表面積を増やす複雑な形状品だ。小さな空隙が多い複雑な形状、鋳物では作れないものを金属3Dプリンターで作っている」

――リサイクルの次の手とは。

「19年にTES―AMMジャパンに出資した。ITAD(IT資産の適正処理)業界だ。いわゆる情報の消去。北米でメインで取り組んでいるのは家電のリサイクルだが、ITADもやっている。北米で2の手、3の手をやる時には家電のリサイクルとITADからは離れないでおこうと思っている。日本と北米でやっているので飛び地ではなく、どちらかの関連投資になっていくと思う。TESグループは一昨年にSKグループに日本円にして1,400億円相当で買収された。我々が出資する日本法人もSKグループ。オーナーが変わっても、オペレーションは世界中変わっていない」

――電池も狙う。

「二次電池は狙っていく。バッテリーの回収も含めて北米と日本でだ」

――既存事業と関係なく、すべての機器のバッテリーの回収を狙うのか。

「機器別にそう分けられるものではないと思う。大きさが圧倒的に違うので車載バッテリーがメインにはなると思うが、携帯とかPCとか家電もバッテリーを搭載していない機器はほぼないので、全て一体的な構想が必要だと思う」(正清 俊夫、田島 義史)

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