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2024.11.29
2024年4月11日
三菱製鋼のDX戦略を聞く/佐藤基行会長/顧客満足と働きがい 両立/操業見える化や設計自動化進む
三菱製鋼は、DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術を活用したビジネスモデル変革)化を積極的に推進し、持続的に発展する企業を目指している。最高デジタル責任者(CDO)を務める佐藤基行会長にDX化への取り組みや進捗状況などを聞いた。
――中心的な組織であるDX推進室の概要を。
「DX推進室は問題点を抽出しながら、各事業部とDXに関わる企画を検討・立案したり、立案した施策の進捗管理などを支援している。またDX人材を育成するため、各種セミナーを立案・実施するほか、ITパスポート取得キャンペーンなどのイベントを展開。全社の啓蒙活動にも努めている。このほか、業務改善やデータ分析を補助する目的でRPA(人間のみ対応可能とされていた作業を、AIなどの認知技術を活用して代行する仕組み)ツールを導入し、システム部との連携によってデータ見える化ソフトを組み入れるなど、積極的に取り組んでいる。2023年8月には経済産業省が定めるDX認定事業者に認められ、ようやく第一歩を踏み出した。メンバーはシステム部4人、技術開発部門2人、営業本部と経理部から各1人の合計8人。うち4人が専任。このほか、管理職を中心に各部門にDX推進リーダーを配置し、DX推進室メンバーと連携を密にしている」
――DX推進で描くありたい姿は。
「30年度でのありたい姿に向けて、現行中期経営計画(23―25年度)では『DX実現に向けた基盤作り(STEP1)』を、26―30年度で『DXの実現を図る計画(STEP2)』を推進する。基礎となるデジタル技術を使いこなす人材が増えており、取り組みとしては順調に進んでいる。最終的には、サステナブルに発展する企業になるのがビジョン。そのためには顧客満足度の向上と、働きがいのある職場の創出を両立しなければならず、この基本ツールとしてDXを使う必要がある。具体的には、まず顧客への対応を変え、現場のプロセスを変え、顧客満足度を向上し、売り上げ・利益の拡大を目指す。また全体業務を連携させて経営情報の見える化、迅速な経営判断に繋げていく。さらに各部門と連携し、従業員のエンゲージメントを向上させることで、働きがいのある職場を構築していきたい」
――DXビジネス人材を増やす計画だ。
「ITツールなどを使って業務効率を高めることができる人材を『DXビジネス人材』と称する。現在は40人程度で、25年までに100人を育成する。各種啓蒙活動の結果、DXに慣れ、意識が高まり、活用するための土壌が醸成されつつある。DX先進企業からアドバイスをもらっているが、人材育成には相当の時間を要するため、着実に進めていく」
――DX事業戦略をどのように進めているか。
「当社ではDX基本方針に基づいて、『DX人材育成』『DX事業戦略』『IT基盤構築』を重要施策に位置付けている。人材育成については先ほど述べたとおりだが、『DX事業戦略』では、営業や技術、資材などで情報の収集やノウハウの共有に係る能力を高めるため、まず鋼材営業部でSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)を導入し、顧客ごとの懸案事項や実績の見える化を図った。ビジネスの深掘りに寄与している。次のステップでは、工場管理と連動した予実管理の自動化を計画している。特殊鋼の受発注システムはこれからの課題。また、24年度内をめどに、ばね営業部や機能部品営業部においてもSFAやCRMを導入し、部門間の垣根を越えた顧客管理を推進する」
「そして『IT基盤の構築』についてはメールシステムの更新、資材発注システムの刷新、全工場ネットワークの光回線化、工場操業状況の見える化、製造ラインへのデジタル技術導入など、全社横断的に取り組んでいる。24年度は基幹システムの更新、工場系システムの見直しを計画。23年度から取り組む工場の見える化では、例えば千葉製作所は稼働率のみを対象にしていたが、故障率なども見える化できた。また導入中のシステムでは、資材発注について各部門の取引先の中でベストな選択を可能にする。今後は製品力の強化や、タイムパフォーマンスの高い組織への変革、デジタル人材の育成など、多岐にわたる成果を想定している」
――生成AI(人工知能)の活用もテーマ。
「生成AIのトライアルを社内で公募した結果、翻訳や化学成分検索などで約90人が利用している。活用に伴う業務改善事例をヒアリングし、24年度には事務系や技術系を含めた全社員への導入を検討する。また、一部の生産工程においては生成AIを活用し、生産情報のデータベース化と解析を実行して、操業自動化も検討している」
――ばね部門のDX活用は。
「足元ではRPAを活用した自動車向け懸架ばね、サスペンションばねの設計自動化を推進しており、24年度上期中での完成を視野に入れる。従来、ばねの設計は時間を要し、設計者によって精度に差が生じてしまっている。ベストな設計を標準化・自動化すれば、アルゴリズムを使うだけで、誰でもレベルの高い設計を実現できるようになる」
――三菱製鋼室蘭特殊鋼室蘭製作所での取り組みを。
「ファーストステップとして、分塊圧延機を一部自動運転に切り替えた。従来はオペレーター2人が手動で操作していたが、各種機器を汎用コントローラーに切り替え、ワンマン化を実現している。今後操作データを収集することで全自動化を目指していく」
――DXに投資金額の5%以上を投じる。
「23年度のDX投資は約1億円となり、主な案件として、素形材製品を手掛ける広田製作所で既存設備のネットワーク化や無線化、また技術開発センターで文書や数値のデータベース化に向けた実験データ管理アプリを導入した。24年度は1億3000万円を見込んでおり、素形材部門の現品管理改善をはじめエネルギーや原単位、設備などの管理システムの強化が主体。DX投資は費用対効果を優先することなく、社員のモチベーションを高めるためにも、面白い案件へ積極的に活用する」
――今後の取り組みは。
「DX先進企業との関係構築に力を入れており、成功事例を学び、我々の戦略に適用することができる。これは新たなパートナーシップの機会をもたらし、さらに進歩させることができる。社員には関連イベントへの積極的な参加を推奨し、新たな視点やアイデアを得て、最新のテクノロジートレンドをDX戦略に組み込む。AIやIoT、(モノのインターネット)などに対して、興味を持つ社員が予想以上に増えている。サーバーやネットワーク、セキュリティなど社内インフラを整備すればDX化は一段と加速するものと期待している」(濱坂浩司)
――中心的な組織であるDX推進室の概要を。
「DX推進室は問題点を抽出しながら、各事業部とDXに関わる企画を検討・立案したり、立案した施策の進捗管理などを支援している。またDX人材を育成するため、各種セミナーを立案・実施するほか、ITパスポート取得キャンペーンなどのイベントを展開。全社の啓蒙活動にも努めている。このほか、業務改善やデータ分析を補助する目的でRPA(人間のみ対応可能とされていた作業を、AIなどの認知技術を活用して代行する仕組み)ツールを導入し、システム部との連携によってデータ見える化ソフトを組み入れるなど、積極的に取り組んでいる。2023年8月には経済産業省が定めるDX認定事業者に認められ、ようやく第一歩を踏み出した。メンバーはシステム部4人、技術開発部門2人、営業本部と経理部から各1人の合計8人。うち4人が専任。このほか、管理職を中心に各部門にDX推進リーダーを配置し、DX推進室メンバーと連携を密にしている」
――DX推進で描くありたい姿は。
「30年度でのありたい姿に向けて、現行中期経営計画(23―25年度)では『DX実現に向けた基盤作り(STEP1)』を、26―30年度で『DXの実現を図る計画(STEP2)』を推進する。基礎となるデジタル技術を使いこなす人材が増えており、取り組みとしては順調に進んでいる。最終的には、サステナブルに発展する企業になるのがビジョン。そのためには顧客満足度の向上と、働きがいのある職場の創出を両立しなければならず、この基本ツールとしてDXを使う必要がある。具体的には、まず顧客への対応を変え、現場のプロセスを変え、顧客満足度を向上し、売り上げ・利益の拡大を目指す。また全体業務を連携させて経営情報の見える化、迅速な経営判断に繋げていく。さらに各部門と連携し、従業員のエンゲージメントを向上させることで、働きがいのある職場を構築していきたい」
――DXビジネス人材を増やす計画だ。
「ITツールなどを使って業務効率を高めることができる人材を『DXビジネス人材』と称する。現在は40人程度で、25年までに100人を育成する。各種啓蒙活動の結果、DXに慣れ、意識が高まり、活用するための土壌が醸成されつつある。DX先進企業からアドバイスをもらっているが、人材育成には相当の時間を要するため、着実に進めていく」
――DX事業戦略をどのように進めているか。
「当社ではDX基本方針に基づいて、『DX人材育成』『DX事業戦略』『IT基盤構築』を重要施策に位置付けている。人材育成については先ほど述べたとおりだが、『DX事業戦略』では、営業や技術、資材などで情報の収集やノウハウの共有に係る能力を高めるため、まず鋼材営業部でSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)を導入し、顧客ごとの懸案事項や実績の見える化を図った。ビジネスの深掘りに寄与している。次のステップでは、工場管理と連動した予実管理の自動化を計画している。特殊鋼の受発注システムはこれからの課題。また、24年度内をめどに、ばね営業部や機能部品営業部においてもSFAやCRMを導入し、部門間の垣根を越えた顧客管理を推進する」
「そして『IT基盤の構築』についてはメールシステムの更新、資材発注システムの刷新、全工場ネットワークの光回線化、工場操業状況の見える化、製造ラインへのデジタル技術導入など、全社横断的に取り組んでいる。24年度は基幹システムの更新、工場系システムの見直しを計画。23年度から取り組む工場の見える化では、例えば千葉製作所は稼働率のみを対象にしていたが、故障率なども見える化できた。また導入中のシステムでは、資材発注について各部門の取引先の中でベストな選択を可能にする。今後は製品力の強化や、タイムパフォーマンスの高い組織への変革、デジタル人材の育成など、多岐にわたる成果を想定している」
――生成AI(人工知能)の活用もテーマ。
「生成AIのトライアルを社内で公募した結果、翻訳や化学成分検索などで約90人が利用している。活用に伴う業務改善事例をヒアリングし、24年度には事務系や技術系を含めた全社員への導入を検討する。また、一部の生産工程においては生成AIを活用し、生産情報のデータベース化と解析を実行して、操業自動化も検討している」
――ばね部門のDX活用は。
「足元ではRPAを活用した自動車向け懸架ばね、サスペンションばねの設計自動化を推進しており、24年度上期中での完成を視野に入れる。従来、ばねの設計は時間を要し、設計者によって精度に差が生じてしまっている。ベストな設計を標準化・自動化すれば、アルゴリズムを使うだけで、誰でもレベルの高い設計を実現できるようになる」
――三菱製鋼室蘭特殊鋼室蘭製作所での取り組みを。
「ファーストステップとして、分塊圧延機を一部自動運転に切り替えた。従来はオペレーター2人が手動で操作していたが、各種機器を汎用コントローラーに切り替え、ワンマン化を実現している。今後操作データを収集することで全自動化を目指していく」
――DXに投資金額の5%以上を投じる。
「23年度のDX投資は約1億円となり、主な案件として、素形材製品を手掛ける広田製作所で既存設備のネットワーク化や無線化、また技術開発センターで文書や数値のデータベース化に向けた実験データ管理アプリを導入した。24年度は1億3000万円を見込んでおり、素形材部門の現品管理改善をはじめエネルギーや原単位、設備などの管理システムの強化が主体。DX投資は費用対効果を優先することなく、社員のモチベーションを高めるためにも、面白い案件へ積極的に活用する」
――今後の取り組みは。
「DX先進企業との関係構築に力を入れており、成功事例を学び、我々の戦略に適用することができる。これは新たなパートナーシップの機会をもたらし、さらに進歩させることができる。社員には関連イベントへの積極的な参加を推奨し、新たな視点やアイデアを得て、最新のテクノロジートレンドをDX戦略に組み込む。AIやIoT、(モノのインターネット)などに対して、興味を持つ社員が予想以上に増えている。サーバーやネットワーク、セキュリティなど社内インフラを整備すればDX化は一段と加速するものと期待している」(濱坂浩司)
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