――機械市場をどう見ているか。
「機械関連市場はおおむね堅調に推移している。脱炭素の動きや、半導体もデータセンター向けなどが期待できる。ただ、資材価格高騰、労働力不足、EV減産の可能性や海上運賃の値上がりなどがあり、楽観はできず、動向を注視していく」
――機械ユニットの状況について。円安は追い風か。
「人員は単体で約100人、連結で約300人の体制となる。2023年度の売上高は599億円、セグメント利益は23億円だ。セグメント利益は21年度16億円、22年度22億円で順調に伸ばしている。経常益は約5割弱を国内単体が占める。円安はユニットの関連でいうと大きな影響はない。取引先は偏向しておらず、トータルではバランスしているため、リスク分散のような形になっている」
――組織変更により、本年度から機械ユニットとして新たなスタートを切った。
「コベルコグループビジネス、オリジナルサプライチェーン、新事業推進が事業戦略の3本柱だ。当ユニットとしてコベルコグループ対応ではカーボンニュートラル(CN)に貢献するための関連機械の販売、オリジナルサプライチェーンでは建機のグローバルサプライチェーンの強化、エンジニアリング能力獲得によるメンテナンスビジネスの拡大、新事業では水素・メタネーション関連装置を基本に推進する」
――神鋼グループ対応のCN貢献ではどのような取り組みを。
「ガス圧縮機を展開しており、水素、アンモニア、CCU(二酸化炭素利用)などの分野で市場があり、人も含めて強化していく。メーカーと協業し、人員を派遣、ボトムアップを図る」
「"取り扱い商品を通じCN社会に貢献する"を掲げて取り組む。当社で扱う汎用圧縮機は電気を使用するが、インバーターにより省エネができ、それによってCO2排出を削減できる。顧客の使用する機械にプラス要素を加えることでCO2対策につなげ、CNに貢献するそれらの装置を大型プラントに組み込むことで役立てる」
――メーカーとの協業は神鋼がメインに。
「神鋼および神鋼グループ会社がメインとなる。ニッチの世界で技術力が必要なため、数年前からメーカーに人員派遣し、メーカーレベルの営業ができるよう専門性を高めて信頼を得られるよう進めている。昨年度からは圧縮機グループを独立させて営業対応している。水素関連にも人を派遣し、水素需要の対応を強め、案件を取り込む。その他神鋼との協業としては、ゴム用ミキサーでも取り組みを始めている」
――オリジナルサプライチェーンは。
「安定したグローバルサプライチェーンを構築する。建機関連の部品納入が多く、多様な商品を提案していく。安価なコストが重要視され、中国から供給するほか、インド、東南アジアでサプライヤーを探している。もう一つの事業として、エンジニアリングの能力獲得を念頭に関連する企業を調べている。われわれにとって何がベストか、メンテナンス能力の活用を加味して精査中だ。人を育成しつつ、当社に足りない部分で対象となる企業を探し、最適な形を模索し、事業拡大につなぐ考えだ」
――建機の部材ビジネスとして合弁で、インドの建機部品製造会社「トラック・デザイン・インディア」を立ち上げた。
「9月から部品の組み立て、出荷を開始予定だ。第1ステップは韓国から材料供給を受け、部品を製造するが、次ステップではインド材を使い、納入することも想定しており、10月には運用評価を始める予定。日系のほか、欧州系などインドに進出した建機メーカー向けも考えている。その後の拡張についても検討に着手予定だ。インドは建機市場の成長が見込まれ、将来、建機ビジネスはインドを拠点に、アジア、中東、アフリカへも展開を予想する」
――新事業は。
「水素・メタネーション関連装置の取り扱いだ。客先のニーズに合わせた装置をわれわれのサプライチェーンを通じて客先に提案していく。メーカーへの人員派遣を通じ、専門性を高めていく。またユニット内でプロジェクトを組み、新規装置も中国などで調査し、日本で拡販したいと思う。どうするのかはこれから具体化し、現中計期間内に形をつくる」
――3本柱以外の取り組みは。
「前中計から旧機械・情報本部としてベースカーゴの拡大を挙げている。これまで国内を対象としていたが、海外の現地法人にも広げ、経営基盤の強化を図る。神戸製鋼所では機械事業でストックビジネスの強化を推進しており、当社のメンテナンスを強化するベースカーゴ拡大とも合致する。この分野も専門性を要するが、専門性を持った"プロ"を養成しつつ、偏っては困るので他の分野も担当できるようバランスをとって進めていく」
――DXの対応は。
「DXでは営業DXを活用、稼働中の汎用圧縮機をデータ化し、メンテナンス実施率を上げることにより、ベースカーゴの拡大を図っている。今後他の装置への展開も予定だ」
――新ユニットの中長期対応は。
「機械のくくりを外し、同じ本部内の溶接ユニットとの連携強化を図りたい。アメーバのような柔軟性に富んだ組織で何でもできる会社とし、顧客、仕入れ先から"頼られる商社"としたい」
(藤原 直)