――機械・情報、溶接の2本部を統合、本年度から新たな中期経営計画がスタートした。
「中計は機械、溶接の両事業を一つの本部に統合することを前提に、機械ユニット、溶接ユニットごとに策定した。これを着実に遂行することが第一だが、それぞれのユニットを相互に運用できると思っている。機械ユニットでは前中計でメンテナンス・補修部品のベースカーゴの拡大を進めていたが、これが有効ということで溶接ユニットのロボット、周辺機器でもベースカーゴ拡大に取り組み、収益基盤を強める」
「海外拠点で両ユニットで強いところ弱いところがある。機械ではインドに力を入れているが、溶接は弱い。マレーシア、インドネシアでは機械は出張ベースだが、溶接は駐在員を配置しており、それぞれ補完し合って拡大策を進める。オリジナルサプライチェーンとして新規展開でも両ユニットにエンジニアリング機能を獲得し、機械、溶接の溶接機やロボットと単体販売ばかりでなく、トータルソリューションやシステムも拡販、物売りから"こと売り"にも力を入れていく」
「ベースカーゴでも、ロボットはシステムインテグレーターがシステムを組むケースが多く、これらが取引先ともなるため、メンテを主体にエンジニアリング機能を持たせ、補修部品を拡大したい」
――シナジー効果を高めていくことに。
「従来の5本部が2本部に変わり、入社3年目にはユニットを移動することになっている。徐々に垣根は低くなってきた。当本部では元々、機械のコンプレッサーを溶接の顧客に販売したり、建機部品の顧客に溶材や溶接機を販売することがあり、協業の土台はあった。地方の店舗は名古屋、九州、北陸など相互乗り入れしており、こうしたマルチタスクで両方できる人員を増やし、本部の体制を強くする。海外拠点でもインド、インドネシア、マレーシアのほか、タイ、中国には両ユニットの駐在員がおり、商品、人的に相互乗り入れする。例えば、現行のディーゼル式移動電源車に加え、今後LPG移動電源車の扱いを本格化させるにあたり、当社の溶接ユニットはガス業界に強いことから、これを生かして拡販に当たる。機械、溶接の両方の商品知識を持つ人材を育てていく」
「DXも活用する。機械では半年前に顧客への納入時期やメンテの時期などの情報をデータベース化した。これを共有すべく、溶接でもロボット、周辺機器ですぐに展開できる営業・顧客情報をデータベース化し、互いに見られるようにする」
――本部としての土台づくりに注力していくことに。
「両ユニットとも現場のプロセスにまで深く入り込んでいる。現場で必要とされる機械、素材、材料と商品を拡大しようとするマインドがある。一緒になることにより、強い組織とし、業績を伸ばすための土台づくりを進めているところだ」
――神戸製鋼所との連携は。
「神鋼は溶材でのシェアが高く、これを守る。3年前に日本エア・リキードから溶接関連資機材販売事業の大半を、当社100%子会社のエスシーウエル(SCW)に譲受されており、シェア拡大につなぐ。ロボットもさまざまな製品があり、神鋼との関係も強化していく。機械でも神鋼への出向を継続しており、販売のほか営業、性能、納期、価格などを顧客と十分に話のできるメーカー営業的な機能を強める」
――新中計の取り組みは。
「溶材は国内では需要増が見込みにくい環境にあるが、海外は伸びる余地がある。ロボットも溶接ロボットばかりでなく、協働橋梁ロボットへも展開する。ロボット、周辺機器の単体のほかシステムへ広げ、付加価値を高める。国内の代理店はSCWがあるが、海外はタイ、中国に頼っており、インドなど次の拠点を考えたい。機械ではベースカーゴ拡大をグループの機械専門商社、マツボーや海外法人を含めて取り組みを広げる。機械、溶接を合わせた23年度の経常利益は全社の25%レベルで、これを高めていきたい」
「中計では機械のベースカーゴ拡大をもう一段加速。オリジナルサプライチェーンでは海外調達を増やす。海外調達は中国、インドがメインだが、インドで8月に立ち上げた建機部品製造会社『トラック・デザイン・インディア』を拠点にトルコ、欧州と広げたい。海外現法間のビジネスも伸ばす。銅箔、ガス関連で使用される中国製の整流器(AC―DCコンバーター)が、韓国向けの引き合いが増え、中国から韓国への輸出が伸展している。半導体ガス用に加え、銅箔がリチウム電池に使われるため受注が増加、韓国の銅箔メーカーへの納入を進めている。大きな柱になりつつあり、中国から日本、中国から東南アジアなど海外現法間ビジネスを拡大する」
――インドのトラック・デザイン・インディアが稼働した。
「8月から建機部品の組み立て、出荷に着手した。韓国から材料を供給して生産に当たるが、来年早々にはインドの材料を調達して現地生産を始める。モディ政権が掲げる"メイク・イン・インディア"でインドの建機は拡大が見込まれ、中東、アフリカへの拠点ともしたい。駐在員を増員し、26年ごろには増強を検討する可能性もある」(藤原 直)