業界団体トップに聞く/日本溶接協会/青山和浩会長(東京大学教授)/技術継承方法の確立重要/溶接学会と合併、情報発信強化

業界団体トップに聞く/日本溶接協会/青山和浩会長(東京大学教授)/技術継承方法の確立重要/溶接学会と合併、情報発信強化
 ――溶接という技術が持つ特性や特長、そして魅力をどう考えているか。

 「溶接とは、必要なものをつくるための技術。ものがなくならない限り、溶接はなくならない。空気と同じようなもので、産業の屋台骨とも言える。技術の形は変わろうとも、ものとものを接合する技術として溶接はあり続けるだろう」

 ――この10年で、溶接をなりわいとする人材の数はどのように変化しているのか。

 「当協会で溶接技能者検定を実施している。その集計によると、検定を取得した国内の溶接技能者の認証者数は、22万―23万人を維持している。一見、変化はないように思えるが、内実は外国人労働者の数が右肩上がりに増加している。女性の溶接技能者もこの10年間で3倍に増えている。合計の人数が変わっていないということは、外国人や女性が増え、日本人男性の溶接技能者が減っていることになる」

  ――人材の確保・育成の重要度は日本の溶接の技術を伝えていくため、かつてなく高まっている。

 「そもそも日本の人口は減少傾向にあるので、その中で溶接界の門をたたく人材を増やすのは簡単な話ではない。職人が高齢化し、技術の継承が重要視される中、まずは若い世代に溶接という仕事があることを知ってもらう必要がある。女性に関しても、増えているといっても絶対数としては現在、1200人程度。米国では5000人規模で溶接に従事する女性がいる。日本でもこの規模まで女性従事者を増やしていきたいと思っている」

 ――溶接についての広報活動に積極的に取り組んでいるようだが、どのようなことを。

 「若年者の取り込み・女性活躍の推進・外国人材の育成の3本柱で、溶接界に親しみを感じてもらえるよう、広報活動を行っている。例えば若年者取り込みなら、本年9月に東京ビッグサイトで開催した国際ウエルディングショーで500人以上の高校生をバスツアーに招待した。また、構想段階ではあるが、人材不足に困っている当協会の会員会社への支援として、ビデオ映像などの教材を用意し、現在事務など溶接以外の業務に従事している従業員が溶接も行えるようにする、いわゆる『多能工化』の検討を始めている」

 ――5―10年先の溶接に携わる方々の仕事はどのように変化していると想像するか。

 「現在でもそうだが、一般的に仕事上でのAIの使用がもっと広まっていき、専門性の低い仕事から取って代わられていくだろう。溶接は非常に専門性が高いので、すぐには代替されにくい。米国などではブルーカラービリオネアという言葉が示すように、なり手が減って給与が上がることで専門性の高い現場仕事に新たな立ち位置が生まれるケースがあり、溶接もそのような仕事の一つであると考えている。お金を稼げて専門性の高い仕事として溶接が注目されれば、人をもっと増やすことができる。そのためには、新しく入ってきた人材に技術を継承する方法を確立することが重要だ。現在も、昔ながらのやり方である『職人の背中を見て育つ』という一子相伝スタイルの教育がまだ残っているところがある。人を育てることも一つの技術だ。職人が若手に教えるという方法を整備していくことは、溶接技術の継承のために非常に大事になる。また、それと逆行して、高齢者の人数が人口全体からみて多くの割合を占めるようになるため、高齢者の活用も考えざるを得ないだろう。溶接がいわゆる『3K』ではなく、やってみようと考えたときに踏み出しやすい世界であるよう仕組みを整える必要があるし、そうであることをもっとアピールしていく」

 ――技術面ではどのような変化が起きていくとみているか。

 「AM(積層造形)技術とAIの発展によって、できることがさらに広がるだろう。溶接協会は27年4月に溶接学会との合併を予定しているが、これは大きなチャンスだ。学会は普段から大学の教員や学生と接することができるため、溶接協会としては学生にアプローチできる機会が増えることになる。学会としても、企業など、より広い対象に情報を発信したり、そこからニーズをくみ取ったりすることができるようになる。双方の強みを生かして、さらなる技術の発展につなげていきたい」

 ――溶接の世界に入ってくる方々にメッセージを。

 「以前、当協会主催の溶接技術競技会を見学したが、優勝した高校生の目には涙があふれていた。それだけ溶接に愛着や誇りを持っていたということだろう。溶接は対象が人ではないので、日々勉強、絶え間なく己の技術力と向き合う、まさに職人技のような世界であるところが大きな魅力だ。自分と戦い続け、一生ものの技術を身に着け、伸ばしていきたいと考えている人にはぴったりな職業だ。多くの方々にぜひ一度、溶接に触れてみていただきたい」(大島 まい)

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