業界団体トップに聞く/日本建設機械工業会/先崎正文会長(日立建機社長)/電動建機の普及環境整備/鉄鋼メーカーとの協業欠かせず

業界団体トップに聞く/日本建設機械工業会/先崎正文会長(日立建機社長)/電動建機の普及環境整備/鉄鋼メーカーとの協業欠かせず
 世界の建機需要は底堅さを保つ一方、脱炭素や人手不足への対応、AI(人工知能)・デジタル技術の活用など、業界を取り巻く課題は複雑さを増している。日本の建設機械産業が国際競争力を維持・強化するには、鉄鋼など素材産業との連携や国との制度面での協調は欠かせない。日本建設機械工業会の先崎正文会長(日立建機社長)に業界の展望や今後の同会の役割を聞いた。

 ――足元の建機の事業環境をどうみるか。

 「建機需要は決して悪くない。中長期的には成長産業だ。AIの活用、自動化や環境負荷軽減への対応など、建機に対する社会的な要請は今後も高まっていくだろう。コロナ禍が明けたタイミングで、各国の政府が財政出動をした結果、軽いバブルがあった。現在は少し落ち着きを見せている中で通常の成長の波に乗りつつあるという印象だ。しかし、保護主義の動きや地政学リスクの高まりなどにより、先行きが見えづらい部分はある」

 ――中東情勢悪化や資材費の高騰の現状をどう分析するか。

 「資材費の高騰や原油高などのコスト高は懸念材料だと認識している。昨年の当会の建機出荷額は約3兆5000億円で、そのうち輸出は2兆円以上となっている。国際情勢の変化は物流コストにも一定の影響を及ぼしている。世界的な資源高には、一企業のみが負担するのではなく、世界全体で負担していく必要がある。国内の建機産業が世界をリードするためにも、政策面での後押しも重要になるのではないかと考えている」

 ――国内の高炉メーカーはグリーンスチールの取り組みを進めている。

 「社会的責任として進めるべき取り組みであり、当業界としても向き合う必要がある。グリーンスチールは供給側だけでコストを負担できるものではない。鉄鋼メーカー、鉄を使う建機メーカー、さらに鉄鉱石など素材を供給する鉱山企業まで含め、全体でコストをどう吸収し、どう循環させるかが重要になる。鉄鋼、建機、鉱山の三角形でコスト負担が回る仕組みをつくる必要がある。そのためには企業単独ではなく、国全体で制度設計を考えることが必要だ」

 ――鉄鋼企業など材料産業との連携をどう考えるか。

 「日本企業の強さは、1社で全てを抱え込まず、強い企業同士が組み合わさって価値を生む点にある。建機は鉄の使用比率が高く、軟鋼、鋳鋼、鍛造品、高張力鋼、耐摩耗鋼など多様な鋼材を必要とする。日本の鉄鋼技術の高さやブランド力は建機の品質を支える重要な要素であり、今後も鉄鋼メーカーとの協業は欠かせない」

 ――建設現場では熟練作業者の減少や労働人口減少が課題となっている。

 「日本は少子高齢化や人手不足が先に顕在化する課題先進国であり、安全性、省人化、コスト低減に真摯に取り組むことは、長期的な国際競争力の強化につながる。少ない人員でも安全に作業できる機械やシステムを実現できれば、世界市場でも強みになる」

 ――カーボンニュートラルにどう貢献するか。

 「カーボンニュートラルは世界中で避けて通れない課題であり、建機業界も取り組みを加速させる必要がある。ただし、単にエンジンを電動化し、バッテリーに置き換えるだけが解決策ではない。原動機から油圧ポンプ、各装置にエネルギーを伝える過程で、損失をいかに減らすかもカーボンニュートラルへの貢献につながる。電動化では充電設備や大容量電力、蓄電池などインフラ面の課題は大きい。建機は都市部だけでなく、インフラが十分でない現場でも使われるため、社会全体で電動建機の普及を支える環境整備に取り組む必要がある」

 ――AIやデジタル技術の活用は。

 「AIの活用は不可逆的な流れであり、建機の性能や自律化、安全性を高める上で不可欠になる。どの領域を自社の競争領域にするかは各社の戦略によるが、業界全体で共通化すべきテーマもある。当会として、AIを含めたデータ活用に伴うセキュリティーや経済安全保障上の課題について、具体的に検討する必要があると考えている」

 ――10年後の業界展望と建機工の役割は。

 「建機業界は基本的に成長産業であり、日本発メーカーとして世界でどう競争力を高めるかが重要になる。安全、データセキュリティー、脱炭素、サプライチェーンの高度化など、個社だけでは対応しきれないテーマについて、当会が国と連携しながら議論を深める必要がある。完成品メーカーだけでなく、部品や素材を支えるサプライヤーも含めた産業基盤を強くし、10年後も世界で競争力を持てる環境を整えることがこれからの建機工の役割だ」(玉光 宏)

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