2023年10月2日

鉄鋼業界で働く/女性現業職編 インタビュー/女性も働けると知って

日本製鉄の東日本製鉄所厚板部君津厚板工場厚板課で、大庭菊菜子(おおば・ひなこ)さんが検査業務に日々励んでいる。かつて父、祖父も製鉄所に勤務しており、幼いころから鉄の世界を何となく身近に感じていた。大庭さんに就職活動や業務内容、ライフイベント、今後の目標などについて聞いた。

――商業高校出身。

「福岡県北九州市出身で、商業高校卒業後の2018年に入社しました。北九州市は工業地帯で、八幡製鉄所に父が勤務していました。詳しいことは分からないのですが、祖父も同様に八幡で働いていたと聞いています。私も身体を動かす仕事がしたい、ものづくりの技術が高い日本製鉄で働きたいと思っていました。父の影響を多少は受けていると思います」

――父も元現業職。

「子供のころに聞いた細かな仕事内容は覚えていないのですが、3交代制勤務だったのが印象的でした。就職するにあたり父に相談しましたが、最初はあまり良い反応ではなかったです。3交代制勤務や、君津が福岡から遠いのが心配だったようで。でも『行くから』と自分の意思で応募を決めてからは認めてくれるようになりました。働き出してからは、職場を熟知していることもあり、応援しつつ小言を言われるまでになりましたね(笑)」

――入社後は。

「君津地区の同期は約170人で、うち約20人が女性でした。研修で厚板工場を見に来た時、熱い鉄が流れてくるのを見て、大きな設備を操作して鉄を作る仕事ってかっこいい! と感じましたね。ここで働きたいと思い、希望がかなって配属されました。配属時の厚板工場は約100人で、そのうち女性は私と同期を含めて8人。入社時から3交代制で勤務しています」

――業務内容を。

「検査担当で、ラインに流れてくる鉄を平たん度、寸度、外観の計3つの基準に沿って目視で検査しています。板が合格か不合格か、追加工程へ回すかを判断。鋼板に印字する設備も取り扱っています。検査は1時間ごとに表面、裏面、サイドと3カ所をローテーションで交代していますね」

――大変なことを。

「板の傷を見つけた際、最初はどの工程で付いたのものか分からなくて困りました。厚板工場内の検査以外の設備も覚えないと原因が分からないので大変でしたね……。また、傷がランダムであちこちに出たり、同じ位置に出続けたりするので、目も頭もすごく使います」

――やりがいは。

「傷が板の同じ位置に出続けているときは、検査に来るまでのどこかの工程で傷が付いているはずなので、前工程の部署にフィードバックし対処してもらいます。勉強しないとどこでなぜ付くのか分からないので、自分の知識をもとに伝えて解決できた時うれしく思いますね。勉強した知識が生かされているなと。そういえば、1年目の時に初めて自分で傷を見つけた時も忘れられないです。模様や基準内の傷もある中で見分けられたのがうれしかったですね」

――ギャップを。

「鉄を作っている会社なので、暑い場所で作業し、汚いところで"男の仕事"みたいなことをするイメージがありましたが、私たちの職場はそんなことなくて。力作業もそこまで必要じゃなかったです」

――友人らの反応は。

「成人式で帰省した際、高校時代の同級生に『鉄ってどうやって作っているの』『工場で何をしているの』と聞かれました。女友達は事務や銀行員など机上業務の子ばかり。作業着にヘルメットをかぶって工場で働くというイメージがつかみにくいんだと思います。電卓やパソコンを使う仕事をしている子たちとは別世界なんだなと。仕事において話が合わないと感じる部分がありました」

――ライフイベントについて。

「いつか結婚しても仕事を続けたいです。日本製鉄で、家庭や子育てと両立できる業務で働きたいですね」

――先輩は育休中。

「現在の厚板工場には7人の女性がおり、2人は育休中です。ともに第2子を出産されました。日本製鉄では事情がある場合は子供が3歳まで育休を取ることができます。職場復帰されたら仕事と子育ての両立について話を聞いてみたいですね」

――業界にどう変わってほしいか。

「工場は環境が悪い印象を持たれがちだと思うので、全然そうじゃないよと言うことをもっと伝えていけたら業界のイメージが良くなるのではないでしょうか。会社にもよると思いますが、福利厚生もしっかりしていますし寮もきれい。休みの融通も利きやすく、調整すれば長期で取ることも可能です。もっと良い部分を広く知ってもらいたいですね」

――女性に増えてほしいか。

「増えてほしいです。男性が多い業界だとは思いますが、女性がたくさん入ることで、女性も働ける、活躍できる職場だということをさらに認知してもらえるのではと思います」

――今後の目標を。

「私はまだまだ職場で未熟な立場なので、職場で生かせる知識を増やしたいです。鋼板の製造過程を奥深くまで知りたいですし、私の検査を通った後どのようなルートをたどっているのかも今後学びたいです」(芦田 彩)





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