――アルミ製品の需要をどうみる。
「今期(2025年3月期)の自動車向け製品は前期並みを想定しているが、低迷の続く中国、ASEAN市場の影響や、国内不正問題回復がいまだに本格化しない環境下、本格的な回復は、25年度以降を見込む」
「半導体製造装置向け厚板は、上半期に依然低調推移、下期も回復基調はうかがえるものの、実需増は25年春先とみている。液晶製造装置向け厚板も、ユーザーの投資抑制で一部を除き低迷している。海外子会社の韓国KTN、神商精密器材(蘇州)、神商精密器材(揚州)、KTNメタル・ベトナムも苦戦が続く」
――伸銅品の市場環境はどうか。
「車載用端子向けは、上期販売量と同等を見込む。中国市場での日系自動車メーカーの不振に加え、国内も不正認証問題で第1四半期は落ち込んだ」
「半導体向けは本格的な回復にまだ時間がかかりそうだ。リードフレーム関連は回復基調だが、パワー半導体関連は低迷している。需要回復期は25年半ば以降になるだろう。空調向け銅管はユーザーの調整一巡や猛暑効果で年間を通じて堅調に推移するとみる」
――アルミ資源循環の合弁会社を新設する。
「26年度をめどに、資源リサイクルの事業会社を新設する。国内で発生するアルミスクラップを集荷・処理・選別し圧延メーカーなどに納める。海外流出させず、国内での資源循環を促進する」
「自治体の許認可の関連や集荷力強化を目的に、リサイクル業者との合弁も考えている。家電や自動車などコンシューマー側に近づく。新会社にはこれまで培ったアルミ合金選別技術や水平リサイクルを考えている」
――非鉄金属リサイクル事業の注力点とは。
「これまで自動車パネル端材のLIBS設備の導入を協力会社とともに生産技術確立を実行し、アルミサッシのX線分別も25年以降本格的に参画する予定。国内循環率を高めるには、圧延各社の選別・溶解技術の革新が不可欠だ」
「26年に稼働予定のアルミ厚板加工の神商精密(栃木県真岡市)は、加工時に生じる破砕・切削くずの水平リサイクルの取り組みを始める。同社拠点処理量は従来比で増加するほか、自動車パネルくずの水平リサイクルにも取り組んでいく。輸送などの効率を踏まえ、適切な製造拠点に供給する」
――銅や海外でのリサイクル事業について。
「銅リサイクルは集荷などに課題があり、まずはアルミを中心に行う。前中計中には使用済み電線リサイクルの事業化を試みたが、一部かなわなかった」
「海外でのアルミリサイクル事業も中国で検討したが、許認可の問題や再生塊でなくても高値で購入する事情もあり、今中計では予算化していない」
――神商精密設立の狙いを。
「26年度中の稼働を計画している。真岡市内の同拠点には、設備導入を考えており、チャイナリスクと国内顧客を考慮すると、国内に半導体製造装置向けアルミ厚板加工の拠点を持つことの意義は大きい。蘇州、揚州の中国拠点は、材料調達からアッセンブリーも含むスーパーバイジングまで一貫体制を持つ。日本でも体制を整え、日中で確固たる供給網を備える」
――流通の再編について。
「後継者不在や当社グループとの相乗効果を踏まえて検討していく。昨年傘下に入った大阪の稲垣商店は豊富な品目・サイズが強みだ。同社のビジネスモデルを入念に分析し、関東支店設置の可能性などを模索していく」
――現中計のアルミ・銅ユニットの収益力向上のけん引役とは。
「半導体市場の改善や自動車関連の需要増、国内関係子会社の収益増がプラスに寄与するとみる。自動車などのアルミリサイクル事業も売り上げを押し上げる要因になるだろう。資源循環の新会社は26年の設立予定のため、30年以降の収益拡大を見込む」
(欠端優太、新保貴史、増岡武秀)