鉄鋼新経営 厳しさ増す市場に対応/日本金属社長/下川 康志氏/「ファインエコメタル」拡販/需要環境変化 10カ年計画見直す

鉄鋼新経営 厳しさ増す市場に対応/日本金属社長/下川 康志氏/「ファインエコメタル」拡販/需要環境変化 10カ年計画見直す
――足元の経営環境から。

「好調な生成AI関連がけん引し、本年度は前年度並みの受注が続くと見ている。半導体製造設備向けのIバー『リプルス』や、データセンター向けハードディスク用の薄板が好調で、送電設備向け極薄電磁鋼帯、リアクトルなども底堅い。主力の自動車向けは精密異形鋼の受注終了に加え、ステンレスモール材で中国メーカーとの競争激化と需要減で低迷している。中東情勢の影響で、原油やエネルギーの供給懸念と価格急騰のほか、資材調達にも支障が出る可能性がある。取引先やお客さまへの影響を引き続き注視する」

――中長期の経営環境の認識を。

「内需は人口減で減少し、海外市場は米欧印をはじめとする各種輸入規制などで先行きは読めない。海外市場は中国メーカーをはじめとする価格競争が激しさを増す。一方、需要が変化する中で素材に対する軽量化や高い強度、高機能化の要求は高度で複雑化する。多彩な製品を擁する強みを生かし、差別化できるチャンスと認識している」

――前期(26年3月期)を振り返って。

「販売数量の減で減収となったものの、コスト改善や価格改定など収益改善の徹底と、リプルス、黒加飾ステンレスのファインブラック、医療向け内面高精度管など高収益品の受注が伸びたことで3期ぶりの黒字に転換した。拠点別でみると、板橋工場のステンレスは黒字化し、加工品事業を手がける福島工場と岐阜工場は自動車向けの減少影響を大きく受けた」

――異形鋼などを製造する福島工場の取り組みを。

「新しい分野として棒線と銅・アルミ板の異形圧延のトライアルを始めている。福島はプレス機やフォーミング設備もある。圧延と加工を組み合わせた『ハイブリッド加工』を強みに、新たな加工領域にチャレンジしたい」

――ステンレス冷延鋼板は高水準の入着が続く。

「日本材は優れた歩留まりなどのコストメリットがあるものの、海外材は歩留まり分を差し引いても安価で、国内外の価格競争が激化している。当社は今後の汎用材以外の国内市場への流入を懸念しアンチダンピング提訴に参画した。調査対象外のクロム系冷延鋼板についても入着増を懸念している」

――需要構造の変化への対応策

「市場環境に応じた生産能力としながら、高い品質や薄手化に対応するための設備集約や投資を進める。設備投資は成長分野向けの能力増強や自動化と省人化、高精度・高品質化、生産性向上を主体とした設備の新設や改造を進めている。前期までに縦型光輝焼鈍(BA)ラインと冷間圧延機1基、生産を終了したベイナイト鋼帯製造用の生産設備を休止した。今期以降、焼鈍酸洗(AP)ラインと特殊鋼・電磁鋼帯圧延機の改造を予定している。今後はステンレス箔の焼鈍と切断ラインの能力増強、表面処理品の量産設備導入を検討する」

――成長戦略を。

「次世代電池やエネルギー、半導体、電子機器、医療機器分野をターゲットとし、鋼帯ではステンレス箔や電気特性を改善したステンレス特殊処理材と極薄電磁鋼帯、加工品はファインプロファイル(精密異形鋼)と内面高精度管を主体に拡販する。ステンレス特殊処理材は電気特性を改善し高い導電性を有する『L・Core(ル・コア)』と優れた絶縁仕上げ『FI(エフアイ)』の2つが、需要家の工程省略やコストダウンに貢献できる。内面高精度管は医療や計測器などの需要を捕捉する。これらに加えて、マグネシウム合金の拡販を一段と進める。当社は長年研究を続け常温での加工可能な合金などを開発してきた。一方で高いコストがネックとなっている。中国から母材を調達しコストを抑えたマグネシウム合金の試作に着手している」

――売り上げ目標を月間1億円とした受託加工事業について。

「昨年発足したプロダクションプロセスサポート(PPS)部の発足や新規の引き合い増で、月間売り上げ規模は前年比1000万円増の3000万円に増えた。目標数値は実現可能と見ており、受託加工の拡大で月間1億円の早期達成を目指す。今期から、三機工業の水処理設備部品の加工受託が始まった」

――PPSの発足と試作委託加工サポートの開始から1年が経過した。

「試作委託加工サポート受付はホームページや商社・流通経由で受け付け、100件以上の案件を継続して対応している。海外からの問い合わせも多い。多言語通訳ツールを導入し、海外とのウェブ会議も積極的に取り組んでいる」

――今期の取り組みを。

「昨年実施した顧客へのアンケートを基に、今期の重点課題として『スピード』『バリュー』『CO-CREATION(コ・クリエーション)』3つのキーワードとした。問い合わせに対する回答の期間、試作、サンプル、見積もりの回答などすべての意思決定と行動を加速する『スピード』の向上と、顧客の潜在ニーズを掘り起こし真に価値ある製品づくりで『バリュー』を創出し、社内外の壁を越えてともに価値を創る『コ・クリエーション』な組織を目指す」

――組織改革について。

「前期は製販一体化を目的とした製販本部が発足し、本年4月から開発部門を営業部門に統合し、営業と開発が一体の組織となることで、スピード感を高めて価値ある製品を提供していく」

――海外戦略を。

「高収益品や差別化製品主体に市場を開拓する。中国と東南アジアは重要な拠点であることは間違いない。これに加えインド欧州も輸出を拡大したい。インドは注射針用のステンレスなど昔から輸出実績を有するが、最近では自動車向けのモール材などこれまでなかった分野の需要も見込んでいる。欧州は極薄電磁鋼帯や、マグネシウム、内面高精度管などのパイプを視野に拡販していきたい」

――現地法人を置く東南アジアは。

「タイは堅調で、現地に進出する企業など競合が見込まれる分野について対策を講じている。鋼帯は底堅いが、加工品は低調だ。改めて拡販を徹底しており、タイを中心に日系企業を網羅的に調査するなど拡販強化の活動を進める」

――2020年から続けてきた十カ年計画「第11次経営計画」について。

「差別化や高収益化といった事業構造改革は進展している一方、想定以上の需要減と期待分野の遅れを受け見直すこととした。主力製品の自動車ステンレスモール材や自動車用精密異形鋼の需要が急減し、期待製品のステンレス箔は取り巻く環境の変化により、需要増まで想定以上の時間を要する。当初計画と売上高や利益、設備投資計画など差異が生じたため、30年3月期まで残り3年分の計画を見直す」

――独自の環境負荷低減に貢献する「エコプロダクト」は対象を拡大している。

「売り上げに占める比率は現状およそ3割だが、省資源や顧客の工程省略、コスト削減、サスティナブル社会に貢献できる製品としてさらなる拡大を目指す。エコプロダクトは2月に、『ファインエコメタル』と名称を変更し、同月商標登録を取得した」(北村康平)

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